タッチモニターを獲得したDB12
アストン マーティンDBX707のダッシュボードには、現代的なモデルらしく大きめのモニターが据えられている。メディア向け発表会で、豪奢なインテリアへ心を打ちつつタップしようと指を伸ばすと、意外にもタッチモニターではなかった。
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素晴らしいスタイリングで、聴き応えあるサウンドで、胸のすくようなパフォーマンスを披露するとしても、ハイブランドの最新モデルでありながらタッチモニターではない、という事実はなんとも寂しい。しかし、このDB12にはしっかり搭載されている。
インフォテインメント・システムに表示されるメニューの文字が小さく、まだソフトウエアの動作にはぎこちない部分が残っていた。数週間後に迫った量産開始までに、エンジニアは完璧を目指すという。
そのソフトウエアがメルセデス・ベンツからの流用ではなく、アストン マーティン独自開発だということは、特筆に値する。最終的な仕上がりへ期待したいところだ。画面のサイズは、少し小ぶりかもしれないが。
DBシリーズのような世界を代表するグランドツアラーで、新世代の試乗レポートがタッチモニターの話題で始まる、というのは最適ではないかもしれない。恐らく、かつてのDB5の記事も、ダッシュボードのスイッチ類から綴られてはいないはず。
しかし、先代が抱えていた小さくない課題を克服したといえる。アストン マーティンというブランド・イメージにも、影響を与えていた事実だったと思う。
エンジンは増強されたAMG由来の4.0L V8
今回の世代交代で、モデル名はDB11からDB12へ数字が1つ増えている。しかし、DB9からDB11へモデルチェンジした時のように、まったくの新設計へ生まれ変わったわけではない。
それでも、フェイスリフトやマイナーチェンジと表現する以上の進化は得ている。特にスタイリングやインテリアは刷新されており、新しいモデル名が与えられたことへ疑問を抱く必要はないだろう。
アストン マーティンによれば、DB12のハードウエアの80%は新しいとのこと。制御ソフトウェアは、100%書き換えられたそうだ。
スタイリングを観察してみると、角度によってはDB11の面影がある。斜め後方や、真横のフォルムは特に。しかし、フロントマスクや全体的なプロポーションは明確に新しい。先代と混同してしまう、ということはないはず。
全幅が広げられたことで低くワイドに見え、走りに対して意欲的に感じられる。アストン マーティンは、DB12をグランドツアラーではなくスーパーツアラーだと呼ぶ。グランドツアラーでは、充分に特性を表現しきれないと考えているのだろう。
メカニズムのアップデートは、かなり広範囲に及んでいる。エンジンは、V型8気筒ツインターボ・ガソリンのみで、V型12気筒は設定されない。
先代と同じくメルセデスAMG由来のユニットとなり、排気量は4.0L。従来よりターボチャージャーが大径化され、冷却効率が高められ、圧縮比に調整を受け、カムの設計も新しい。その結果、大幅なパワーアップを果たしている。
DB11よりすべての領域で高速化された
最高出力は、先代から170ps増しとなる680ps。最大トルクも、70.7kg-mから81.4kg-mへ1割以上増えている。0-100km/h加速は約0.5秒短縮し、3.6秒を達成。最高速度は325km/hに届くという。
トランスミッションは、ZF社製の8速オートマティックで、これはDB11からのキャリーオーバー。電子制御のリミテッドスリップ・デフ、eデフは、スタビリティ・コントロールとネットワーク化されている。
このeデフは、身のこなしをシャープにするため瞬間的に制御される。完全なオープン状態からロック状態まで、ミリ秒単位という短時間に切り替わるそうだ。
サスペンションには、従来品から500%も可変率の幅を拡大した、新しいアダプティブダンパーが組まれた。ボディシェルはアルミニウム製で、剛性はDB11から7%強化された。車重は1685kgとなる。
確認はこのくらいにして、DB12を実際に走らせてみよう。ところが、大幅にアップデートされたハードウエアが故に、当初は若干のぎこちなさを感じてしまった。
コーナーへの侵入時は、予想よりブレーキペダルを強く踏む必要性があり、脱出時はアクセルペダルの操作以上にリアアクスルが前へ進もうとする。その理由は、DB11よりすべての領域で高速化されているためだ。
筆者の脳みそが先代とは異なるアストン マーティンだと理解し、手や足の操作を調整するまでに、多少の時間が必要だった。DB12の速度域は、確実に高いのだ。
この続きは後編にて。
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