クルマが登場する時に過去のモデルの再来と騒がれることがある。再来と言われるモデルの場合、メーカーが明言しているケースもあれば、デビュー前のスクープ段階などで乱イメージが固まったりと、周りが勝手に騒ぐという2つのケースがある。
どちらのケースにしても過去のモデルの再来、と言われるのは基本的に同一メーカーの過去の名車をオマージュしたもの、コンセプトが同じものに使われる。そして、再来と使われるモデルに共通しているのは大きな期待感だ。
本企画では、過去のモデルの再来と話題になった日本車は期待ハズレ!? 期待どおり!! それとも期待以上!!! そのあたりを考察していく。
文:ベストカーWeb編集部/写真:HONDA、TOYOTA、MAZDA、平野学
【画像ギャラリー】再来の王道!! 車名が復活した現行国産車
ホンダCR-Z
ホンダCR-Xの再来
販売期間:2010~2017年
CR-Xがハイブリッドスポーツカーとして復活!! と大きな期待感を持って迎えられたCR-Zは、気持ちのいい走りと燃費を高い次元で両立していた
CR-Zコンセプト→CR-Z CONCEPT2009と進化させ、日本では2010年2月にデビューしたハイブリッドスポーツのCR-Zは、スパッと切り落としたリアエンド、2+2のライトウェイトスポーツというキャラクターから、デビュー前からCR-Xの再来と騒がれた。
実質初のスポーツタイプハイブリッドとしてデビューしたCR-Zの注目度、期待度は絶大で、デビュー後1カ月の受注が月販目標の1000台の10倍となる1万台を超えたことでもそれは証明されている。
1.5Lのi-VTECエンジンに当時のホンダのハイブリッドシステムのIMAとを組み合わせ、気持ちのいい走りとスポーツカーとしては別格の25.0km/Lの好燃費を両立していた。
しかし、人気は長続きせずデビュー1年後くらいから販売が減少。CR-Xが現役時代は、若者が熱狂する環境があったが、その点CR-Zはその逆だった。
クルマ好きの若者を熱狂させたCR-Xはショーとホイールベースのキビキビしたハンドリングが人気だった。小さいが存在感抜群のエクステリアも大好評
パーソナルカーではなく1台で何でもこなすことを求める風潮は、リアシートが狭くほとんど2シーターのCR-Zにとって大きな逆風となった。
ただCR-Zは7年間販売され、累計約4万台を販売。ラスト1年が月販100台未満と苦戦していたものの、スポーツカー受難時代にあって大健闘した。
ホンダにとってはもっと売りたかっただろうから期待ハズレかもしれないが、期待に応えてくれた、と言っていいと思う。
CR-Xがライトウェイトスポーツに新風を吹き込んだ存在だったのに対し、CR-Zはエコ時代のスポーツカーとしてしっかりと爪痕を残した。
このアングルからが最もサイバースポーツCR-Xを彷彿とさせる。ほぼほぼ2シーターという使い勝手の悪さが販売の足かせになった
ホンダN-ONE
ホンダN360の再来
販売期間:2012年~
丸2灯ヘッドランプをブラックアウトしたグリルでつなぐというキュートなエクステリアデザインは、デビューから7年が経過しても色あせない
ホンダは2011年にデビューしたN-BOXを皮切りにNシリーズを展開し、その第3弾として登場したのがN-ONEだ。
N-ONEがホンダ軽自動車の名車、N360の再来と言われたのは、N360をオマージュしたエクステリアデザインが与えられていたから。ワゴンR、ムーヴが独占するハイトワゴンに風穴を開けるべく新規投入された。
愛くるしいエクステリアデザインは大ヒット確実と騒がれ、フル販売最初の2013年には10万7583台を販売し、予想どおり人気モデルとなった。
軽自動車の革命児として日本のクルマ史に残るN360は1967年にデビューすると瞬く間に超の付く人気モデルとなった。軽のパワーウォーズの火付け役でもあった
しかし2014年に販売が3分の1の3万4858台に激減。N-ONEはデビューしてから2019年11月までに累計24万4411台を販売しているが、約半数が2013年で、2015年以降は年間平均1万5000台と低迷している。
最大の理由は、同門のN-BOXに代表されるスーパーハイトワゴン軽自動車が大人気で、ハイトワゴン系は軒並み販売面で苦戦していて、N-ONEも例外ではない。
走りを重視したローダウン仕様なども追加したが奏功せず。
現行N-ONEはN360のようなセンセーショナルは巻き起こせず期待ハズレ感は否めないが、2020年秋に登場が噂されている次期型に期待したいところ。
トヨタ86
トヨタカローラレビン/トレノ(AE86)の再来
販売期間:2012年~
コンパクトFRスポーツ待望論は長きにわたりあったが、トヨタが出した回答が86。AE86とはキャラクターは少し違うが、クルマ好きからは歓迎された
スバルとの共同開発によって誕生した86は車名からもわかるとおりカローラレビン/トレノ(以下AE86)をオマージュしてクルマだ。現代の技術でコンパクトFRスポーツであるAE86をよみがえらせたのは事実だ。トヨタ自身が相当意識し、鼻息も荒かった。
AE86が5ナンバーサイズに1.6Lエンジンというのに対し、86は3ナンバーサイズに2Lエンジンという違いはあるが、クルマが大型化する現代で全幅1775mmは許容範囲のレベルだ。
AE86はコンパクトFRという存在価値は高いものの、走りの性能としては高くなかった。いやむしろ、当時全盛を誇ったFFスポーツよりも劣っていた。
86もデビュー時には欠点なども指摘されていが、細かく手を入れて丁寧に育ててきてFRスポーツとして熟成が進んでいるのが凄いところ。
86のイベントには多くのAE86オーナーも参加している。86はAE86ほどではないが、コンパクトFRスポーツを比較的手軽に手に入れることができるのが魅力。写真は86がデビューした2012年に富士スピードウェイで開催された86STYLEで撮影したもの
さらに、86の登場によってチューニング業界が活性化、ワンメイクレースの展開によりさまざまなパーツが開発されるなど、クルマ界を大きく盛り上げた功績は大きい。
AE86の再来ではあるが、功績としてはAE86を大きく凌駕して期待以上だ。
次期モデルが開発中であることはすでにアナウンスされている。さらなる進化に期待がかかるが、本格的になりすぎて高額になるようでは、手に入れられる人が限定されてしまう。そうならないことを願う。
86はデビュー時からは別グルマと言っていいほどの進化を遂げている。限定販売されたGRMNもあっという間に完売。デビュー時ほどの勢いはないが人気は根強い
トヨタアルテッツァ
トヨタカローラレビン/トレノ(AE86)の再来
販売期間:1998~2005年
アルテッツァは全長4400×全幅1720×全高1410mmというほぼ5ナンバーサイズのFRスポーツセダンで期待度MAXだったが、人気を得ることはできず
AE86の再来と騒がれたクルマは86登場以前にもう1台存在する。トヨタが1998年にデビューさせたアルテッツァだ。
AE86が2ドアクーペ&3ドアハッチバックだったのに対し、アルテッツァは4ドアセダンとボディ形態は違うように、トヨタはアルテッツァに対し、AE86の再来をイメージさせるようなコメントは出していないし、演出もしていない。
コンパクトなボディのFRということで外野が勝手にAE86の再来と騒ぎ立ててアルテッツァ=AE86の再来というイメージを作り上げた。
アルテッツァは220psの2L、直4(3S-G)と160psの2L、直6(1G-FE)の2種類のエンジンをラインナップし、ハイパワーの直4モデルがスポーツモデルという位置づけでデビュー時には直4にしか6MTは組み合わされていなかった(後に直6にも追加)。
セダンのアルテッツァに対しAE86は2ドアクーペ&3ドアハッチバックだったが、小型FRスポーツへの期待感がAE86の再来というイメージを固めた
改良された3S-Gは最高出力こそ220psのハイパワーを誇ったが、低中速トルクが細く、加速感に欠けた。街中での運転でギクシャクすることが多く不評だった。1340kgの車重は220ps、160psのNAエンジンにとっては重すぎた。
さらに前後のオーバーハングを切り詰めてスポーティに仕上げようという狙いはわかるが、肝心のエクステリアデザインがごく普通のセダンの域を脱することができなかったのも販売面で苦戦した要因だと思われる。
アルテッツァは初代レクサスISで、ISはその後進化を続けているが、トヨタブランドのアルテッツァは2005年に販売終了となったとおり期待ハズレだった。
ショートデッキのリアデザインはスポーティだったが、エンジンの低中速トルク不足、それを補わなかったギア比により万人受けするクルマではなかった
4代目マツダロードスター(ND型)
初代ユーノスロードスター(NA型)の再来
販売期間:2015年~
初代ユーノスロードスターとほぼ同じスペックで登場して、果たして走りは進化しているのか疑問視されていたNDロードスターだが、すばらしい仕上げで乗った人は絶賛
2019年9月にロードスターは初代ユーノスロードスター誕生から30周年を迎えたが、世界的な大ヒットモデルとなった初代の後は紆余曲折が続いた。
当然モデルを経るごとに性能アップしたが、初代ほどのインパクトを残せずにいた。
ロードスターの開発にあたり原点回帰、この言葉はたびたび使われてきて、2005~2015年に販売された3代目のNCは初代のユーノスロードスターをオマージュしたデザインで登場した。
排気量を2Lにアップしたエンジンは170ps/19.3kgm(6MT車)はロードスター史上最もパワフルで、動力性能は大きく進化し、加速、スタビリティとも高くなっていた。
しかしエクステリアの評判はよかったが、低い速度でもFRの挙動が楽しめ、誰もが気軽に操れるというロードスター本来の魅力が失われてしまった。何よりも重かった。
初代をオマージュしたエクステリアが与えられた3代目のNDロードスターだったが、パワフルな2Lエンジン、1000kgを超える車重が足かせとなってしまった
そのNCを受けて登場したのが現行の4代目となるNDロードスターだ。
重くパワフルになったNCに対し、NDは原点回帰を謳い、1000kgを切る車重、エンジンは1.5Lに排気量ダウン、スペックは131ps/15.3kgm(デビュー時)で登場。
これは初代の後期(1.8L)の130ps/16.0kgmと同じかむしろ劣っているくらい。
初代とほぼ同じスペックで登場したNDロードスターは大丈夫か? という危惧もあったが、それが杞憂に終わるほどの走りの質の高さを実現していたのはさすがだ。
初代ロードスターは1989~1997年まで販売されたが、総生産台数は約43万台と驚異的。デビュー時にベースグレードは170万円というのも魅力だった
現行ロードスターは初代のようにどの速度域でも楽しめ、その気になれば本格的な走りにも応えてくれる懐の深さを持っている。
初代がデビューした時にベースグレードは170万円だったが、2019年12月の時点で最も安いSで260万1500円。価格は高くなってしまったが、見事原点回帰に成功し、期待以上のワクワク感を与えてくれる。
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みんなのコメント
実車に触れて3シリモドキの外観や内装の質感の悪さで止めたなぁ
アルテッツァ・・・