日産のクーペとして今も高い人気を誇る「シルビア」ですが、その歴史は古く、初代シルビアは1965年に登場しました。
その後も、モデルチェンジを重ねるごとにクーペならではの美しいデザインを踏襲し、1988年に登場した5代目は、歴代シルビアのなかで、もっとも多く販売されたモデルとなりました。
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5代目は「S13型」と呼ばれることもあり、続く6代目の「S14」、最終モデルとなる7代目「S15」の3兄弟は、国内や海外のドリフト競技で今なお活躍し続けています。しかし、S14は、S13よりも人気がないと評価されることもありますが、その原因はどこにあるのでしょうか。
S13が登場した1988年は、1986年から始まったバブル景気の真っ只中でした。当時の若者にとって、クルマはデートに無くてはならない存在とされ、無理をして購入した人も少なくないといわれています。
なかでも当時人気だったのは「デートカー」と呼ばれるクーペで、トヨタ「ソアラ」や、ホンダ「プレリュード」、そしてS13型のシルビアでした。シルビアはライバルのデートカーよりも後に登場した最新モデルだったことや、グッドデザイン賞を受賞した未来的なデザインから人気を集めました。
車体価格も手が届きやすく、もっとも安いグレードの「J’s」では150万円台から、「Q’s」が180万円台から、もっとも高いグレードの「K’s」でも190万円台からとなっていました。
現在トヨタから販売されている「86」もクーペですが、最低価格は260万円台からとなっており、当時の若者にとってシルビアが価格面でも魅力的なクルマであったことがわかります。
しかし、6代目となるS14が登場した1993年には、既にバブルが崩壊し、景気が低迷するなど、クルマを取り巻く環境は大きく変わっていきます。
当時はトヨタ「ハイラックスサーフ」、日産「テラノ」、三菱「パジェロ」など、クーペやセダンから大きなRVへとトレンドが移り変わっている時代でした。
さらに、同時期にはミニバンブームのきっかけともいえるトヨタ「エスティマ(1990年)」やホンダ「オデッセイ(1994年)」が発売され、デートカーの特徴ともいえるクーペボディのクルマは次第に勢いを失っていくのです。
シルビアは、S14で大きくイメージチェンジを果たし、5ナンバーから3ナンバーサイズにボディを拡大させて室内空間を広くし、日常的な使い勝手を向上させました。
しかし、クーペ人気低迷と、SUVやミニバンの登場によって、先代のS13ほどの大ヒットとはなりませんでした。また、S13よりも大きくなったボディサイズは、当時あまり評価を得られなかったともいわれています。
こうしたいくつもの理由から、S14は不人気車種と呼ばれるようになってしまったようです。
■中古になってから人気急上昇の謎
S13、S14、S15は、それぞれ新車販売時には人気に浮き沈みがありました。しかし、生産終了後には軒並み人気が復活するとともに、中古車の相場価格も上昇しているのです。
そのきっかけは、日本国内で最高峰のモータースポーツと称される「スーパーGT」の前身でもあるJGTCに歴代シルビアをベースとしたレーシングカーが出場していた実績や、その後世界中を巻き込んでシルビア人気を押し上げたのがドリフト競技での活躍でした。
その人気は国内外を問わず、海外ではアメリカやオーストラリア、ニュージーランドで、日本から輸出されたS13/S14/S14が活躍しています。
さらに、ドリフト競技における人気から海外の自動車パーツメーカーがシルビア専用の部品を開発・販売しており、枯渇した純正部品に代わって海外メーカーの部品を輸入して使用するユーザーもいます。
ドリフト系のチューニングを得意とするカスタムショップは、次のように話します。
「シルビアは、車高調とLSDを組めばすぐにでもドリフトすることができるほどの素性の良さがあり、いまでもミニサーキットなどで実施されているドリフト系走行会では、8割以上がシルビア(S13/S14/S15)を使用しています」
※ ※ ※
また、別の中古車販売店のスタッフによれば、「大切に乗られた状態の良いS14は、すぐに買い手が見つかり売り切れてしまう」というほどの人気だといいます。
このように、かつてS13はデートカーとして一世風靡し、現在ではドリフトマシンとして世界を虜にしているのです。
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