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優雅でワイルドな1台──新型ディフェンダーV8試乗記

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優雅でワイルドな1台──新型ディフェンダーV8試乗記

イギリスのオフローダー「ディフェンダー」に追加されたV8モデルに小川フミオが試乗した。最上級モデルの魅力はいかに?

V8らしい余裕の走り

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英国うまれのプレミアムオフローダーがディフェンダーだ。プレスティジャスな雰囲気とデザイン性の高さとオンロードとオフロードともにこなす機能性の高さとで、世界的に人気が高い。

2023年4月、日本市場でファンが圧倒的に多いディフェンダー110(ワンテン)にV8エンジンモデルが追加された。そのV8モデルに、2023年11月の後半、日本で乗った。

私がディフェンダー110 P525(V8)に乗ったのは、小雨まじりの空の下、木曽の山道。トルクたっぷりの気持ちよい走りで、期待以上に気持ちのよいドライブ感覚を味わった。

中津川駅前の駐車場で車両を受け取り、そこから木曽の渓谷へと入った。紅葉にぎりぎり間に合った季節だったので、ウインドシールド越しの景色は美しいものの、山中ゆえ道幅はクルマ1台ぶん。対向車きたらどこによけようか……と、そればかり考えて走った。

道の印象として、登り勾配がきつかったとか、そういうことを記すべきなのだろうが、じつは、ほとんど意識しなかった。なぜかというと、625Nmもの大トルクを2500rpmから発生する4999ccV型8気筒スーパージャージャーエンジンの力強さゆえだ。8段オートマチック変速機はギヤの選択も適切で、登りも下りも、アクセルペダルの踏みしろを軽く調整するだけで、スイスイと不満も不安もなく走っていける。

サスペンションシステムの設定は、期待以上にしっかりしていて、ステアリングは正確。多少速度を高めに、小さなコーナーを抜けていくのも、また楽しい。

ちなみに、そのあと自動車専用道で、しっかりした足まわりを体験し、ロングツアラーとしても機能が高そうだなあと、私は感心した。

ガードレールもなく片側は崖のような道も多く、あまりそちらを意識すぎると冷や汗が出てくるけれど、路肩の状況は左右とも、リアルタイムのカメラ映像(「クリアサイト・グラウンドビュー」)で確認できるし、オフロードも安心して楽しめる仕様だ。

そもそも、ちょっと荒れたぐらいの道など、ディフェンダーは役不足。そこに道があれば路面状況など関係なく、軽々と走破していってしまう。オフロードでもブレーキはしっかり、ハンドルは確か、微妙な速度の加減速も出来て、ドライブしている私との一体感が強い。

もっともぜいたくな乗り方とは私は、雨降る林のなかのワインディングロードを走った。そうすると、人間がかつて大自然を克服すべくオフロード車を開発したという、クルマの発達物語を思い出したりした。

あらゆる用途に使えるオールマイティな機能を、現代の高い技術力で実現したのが、ディフェンダーの魅力なのだ。

それに、都会でも存在感の大きなデザインは、自然のなかでもとてもよくなじむ。初代の特徴を現代に活かしたデザインコンセプトは、プロポーションという大きなところから、ヘッドランプのような細部まで、よく煮詰められていて、それもクオリティに貢献している。

もうひとつ、インテリアデザインも大きな魅力だ。たいていの機能はそなわっているが、ダッシュボードのインターフェイスはシンプル。デザイナーは、やはり初代のダッシュボードとデザインの共通性を強調する。そこもいいし、もうひとつ初代と違うのは、高い快適性だ。

シートの出来はいいし、空調はばっちり効くし、静かだし、700Wの14スピーカー+サブウーファーを組み合わせた「メリディアン」のオーディオは力強く、いまの音源の再生にぴったりだ。メリディアンって繊細(すぎる)と感じていたけれど、いい音でドライブがいっそう楽しくなる。

木曽ではせっかく木曽川があるというので、午前中いっぱい2人乗りカヤックで川下りを楽しんだ。奥多摩などでカヤックスクール「グラビティ」を主催する安藤太郎が同乗し、舵取りを担当してくれた。

私が乗った前の日は大雨、次の日は雪だったので、多少の雨だったが、それでも幸運というべきだろうか。というか、どうせドライスーツを着込んでのカヤッキングである。ときどきパドルを持つ手を休めて、川面に降り注ぐ雨の音に耳を澄ますのも、得がたい体験になった。

最近は「鈍考(どんこう)」なんて考えがいいのでは? と、ブックディレクターの幅允孝(はば・よしたか)が唱えて、それに賛同するひとが増えているとか。

オフロード装備の充実しているディフェンダーのおかげで、木曽川の河原まで降りていき、そこからカヤックに乗りこんだ。オプションで、濡れたままとか汚れたままとか、抜け毛の季節の愛犬を乗せるためのシートカバーがあるのも、さすがディフェンダーである。

安くはないモデルだけれど、こうして使い倒すのがもっともクールだとつくづく。海外だと泥だらけで走っている姿を見かけるが、もっともぜいたくな乗り方かもしれない。

今回、ラインナップに追加された5.0リッターV8モデルは、特別仕様車を除いてモノグレードの展開。110のパワートレインはほかに、2.0リッター4気筒ガソリン「P300」と、最大トルクが650Nmもある3.0リッター6気筒ディーゼル(マイルドハイブリッド)「D300」がある。

どのパワートレインもパワー不足感がないというのはすごいは、V8のぶっといトルクに乗って走る感覚は、この余裕あるサイズのオフローダーによく合っていると思う。

文・小川フミオ 写真・ジャガー ランドローバー ジャパン 編集・稲垣邦康(GQ)

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