ビッグマイナーチェンジを受けたスバルの新型「フォレスター」のターボエンジン搭載モデルに田中誠司が試乗した。
新型の特徴
初代“ハチロク”の魅力とはなにか? Vol.2 モータージャーナリスト・山田弘樹編
先日、自分のクルマのユーザー車検を受けてきた。最近は陸運局もずいぶん融通が利いて、本来の予約枠より早い時間に着いてもすぐ検査を受けさせてくれたので、家の玄関を出て、テスター屋で予備検査を受けて、車検を通してまた帰宅するまで、ちょうど2時間で済んでしまった。
そのときおどろいたのは、自賠責保険が年を追うごとに安くなっている点だ。2年分の保険料は、そのクルマを入手した2013年と次の2015年が2万7840円、2017年が2万5830円、2019年が2万1550円、2021年は2万10円だった。
自賠責保険は対人賠償に限られる。保険料の支払いが減っているのは、受動安全・能動安全の双方で、自動車メーカーの努力が実を結び、怪我をして苦しむ人が減っているということだ。
こうした傾向に、スバルの「アイサイト」シリーズを含む各社の予防安全・運転支援システムの普及が効果を発揮しているのは疑いのないところだろう。詳細は省くが、スバルが公表した公益財団法人交通事故総合分析センターのデータによると、「アイサイトVer.3」装着車において、追突事故の1台あたりの件数は10分の1近くに減っているという。
フォレスターは、2018年度JNCAP衝突安全性能評価・大賞、2019年ユーロNCAPベスト・イン・クラス賞受賞など、国際的に安全性評価が高いモデルである。今回試乗した、メーカーいうところの“大幅改良モデル”は、現行「レヴォーグ」と同様、従来型の「アイサイトVer.3」をアップデートした「新世代アイサイト」を導入。より広角を捉える新型ステレオカメラ採用とソフトウェアの改良、ミリ波レーダーの追加により、危険を感知し、警告や回避をおこなう機能が改善されている。
一方、レヴォーグの一部グレードに搭載される高精度GPSと3D高精度地図データを採用して、渋滞時などに運転操作をクルマに任せられる「アイサイトX」の導入は見送られた。スバルによれば、フォレスターのターゲットを考慮し、価格帯の維持を優先したことが理由という。
このほか、新型ではフロントマスクを中心にエクステリアが刷新され、サスペンション設計の見直しで乗り心地と操縦性を改善したという。今回試乗した「SPORT」は、2020年10月に追加されたばかりのグレードで、1.8リッター直噴ガソリンターボエンジン「DIT」を搭載、専用開発のダンパーとスプリングを備えた足まわりを身に着けている。
仕立ての良いインテリア
新型フォレスターのエクステリアは、尖った形状のヘッドライトと、さらに立体感を増した6角形のフロントグリルにより押し出し感が強まっている。左右の端が盛り上がった特徴的なフロントフードの起伏がさらに際立つデザインだ。Aピラーの根元、バルクヘッドの位置は高めで、水平対向エンジンの搭載位置は低い、レイアウトの独自性を反映している。
運転席に座ってみると、このボンネット形状の影響もあって左前方が遠いような印象を受け、ちょっと街中では運転しにくいかな? と、心配させる。しかし外観からは起伏に富んでいるように見えるボディが、実はボクシーな形状であること、フロントドアパネルの上端が低くされていて大きなドアミラーを視認しやすいこと、最小回転半径が5.4mに抑えられていることなどにより、実際にはサイズのわりにタウンユースでも扱いやすい設計といえる。
都心の市街地を起点に始動したフラット4ユニットは、フォレスターというモデルのポジショニングやSPORTグレードという設定から想像するより、ずっと穏やかに加減速する。エンジンルームにふたをするフロントフードを観察すると、かなり重さと厚みがあり、消音に配慮しているのが明らかだ。
乗り心地もまた、想像以上にどっしりして重厚感がある。225/55R18サイズのタイヤとホイールはかなりの質量であるが、ある程度の上下動は伝えてくるとはいえ、極端に気になるほどではない。ロードノイズもシーンにかかわらず低めだ。オフロード走行にも配慮したタイヤはマッド&スノー仕様で(ファルケン・ジークス ZE001 A/S M+S)、非対称トレッドの内側は角張ったブロックであるが、外側は高級セダン用のような細いサイプが刻んである。
インテリアの仕立てからも、精度の高さが感じられる。シート表皮はこのグレード専用の人工皮革の「ウルトラスエード」と本革を組み合わせたもので、ダッシュボードやセンターコンソールも同一の素材で統一され、ピアノブラックのパネルと組み合わせられる。
ビルトイン・ナビゲーション・システムはディーラーオプションであるが、デザインも機能もうまく車両と連携が取れていて好ましい。
精度の高まったアイサイト
アイサイトを搭載するクルマを試すのは、先代レヴォーグ以来ちょうど3年ぶりであるが、この分野における進歩は本当に早いことに感心させられた。
前に試した「アイサイトVer.3」では、前走車に追従して車間距離を保つことはすでに得意としていた。あたらしいフォレスターの「新世代アイサイト」は、首都高速の車線をほとんど完璧に認識して走行できていた。
車線が削れて少し見にくい状況でも、無駄な操舵なく目指すべき方向へ進んでいく。それだけステレオカメラによる認識と情報処理の精度が高まったということだろう。
前方に停止車両がいる場合の速度警告など、ドライバーに対する情報伝達がよりタイムリーで、音量や画面表示のマナーが適切になったことからも進化が感じられる。前方の信号が青になったことを伝えるサウンドも、邪魔にならず上品だ。
きらりと光る“好バランス”
前の道が開けたシーンでは、DITユニットに少しばかり鞭を入れてみた。
無段変速機であるリニアトロニックと組み合わせられた4気筒ターボユニットは、音量控えめながらスムーズな回転の伸びを披露する。
スロットル全開時においては、5500rpmあたりからフッと軽くなるような加速感を生じ、6200rpmのレブリミット直前で瞬時に“シフトアップ”。5000rpmからトップエンドまでのいちばん美味しいところを、ドライバーに繰り返し味わわせようとする。
全長4640×全幅1815×全高1715mmと、それなりにボリュームのある体格ゆえ、動力性能にはあまり期待していなかったが、車検証によれば車両重量は1590kgに抑えられており、このエンジンの130kW(177ps)/300Nmという出力をちょうど使い切れる好バランスだった。
車重が抑えられていることは、当然ハンドリングにもよい影響をもたらす。高速コーナーの連続する道においても、車高の高さをロールの増加として意識させることが少なく、専用の足まわりを備えるスポーツ・グレードに相応しいコーナリングを楽しめた。この車重に収めつつ、前述したとおり乗り心地や静粛性の面でも高い水準を実現できたことは、新型フォレスターの大きなアドバンテージである。
ハンドリングの面で特徴をあげるとすれば、相対的にホイールベースが短く、前後重量配分が4WD車としては前寄り(車検証記載で前59:後41)なため、ロールに比べるとピッチング方向の動きをある程度意識する機会が多いことだ。水平対向エンジンを縦置きする場合、シリンダーヘッドはホイール中央より前に置かなければ収まらないので、フロントノーズがある程度長くなり、重量も前方に集中することは避けられない。
最後にSUVとしての使い勝手について記す。後席空間は、身長172cmのドライバーが運転席に座って適切な姿勢を選びその背後に移った場合、頭上に7cm、ひざ前には23cmの空間が残る。センタートンネルも低く抑えられているので、後席に3人乗った移動でも窮屈ではなさそうだ。リアシートにはヒーターとUSB端子も標準で備わっている。
トランクの幅は最も広い部分で156cm、狭いところでも110cmある。奥行きは最も深いところが91cm、電動開閉機能が備わるテールゲートの高さは80cmであった(数値は筆者による実測)。
新型フォレスターSPORTは予想以上に快適性、操縦性、動力性能をバランスよく備えているのを、今回の試乗を通じて確かめることができた。予防安全・運転支援システムを含め、現代的で多機能なマルチパーパス・ヴィークルを、リーズナブルな価格で手に入れたい人にとっては好ましい選択肢なのではないだろうか?
ただし、ある程度パワフルなガソリンターボ車のエンジンを遠慮なくまわすと、燃費がカタログ上のデータに遠くおよばず、燃料をけっこう消費するかもしれない点には、留意されたい。
文・田中誠司 写真・安井宏充(Weekend.)
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