21世紀のスーパーカーはどんなふうに進化しているのか?? 自動車評論家の石川真禧照氏がじっくりしっかり動画付でお届けする当連載。今回は、国産ハイエンドミニバンとして圧倒的な人気を誇るアルファードの最上級グレード"エグゼクティブラウンジ"をご紹介する!
●やっぱり「スーパーカー」が好き!! 自動車生活探検家・石川真禧照のスーパーカーワールド一覧
新型の高級感はどうなっちゃうの!?? モデル末期の試乗で分かった「アルファード」の魅力【石川真禧照のスーパーカーワールド】
文/石川真禧照、写真/萩原文博、動画/吉田海夕、コペル
■デビューから8年目も圧倒的な存在感を放つ現行型アルファード
トヨタのラージサイズミニバンが「アルファード」「ヴェルファイア」。しかし、最新のカタログを見ると、ヴェルファイアは、ハイブリッド車、ガソリン車ともに1グレードしか載っていない。
最新のトヨタラージミニバンは、アルファードに統一されたといってもよい。
そのアルファードのなかでも、頂点にあるのが「エグゼクティブラウンジ」。
2015年に登場した現行型アルファード。2017年のマイナーチェンジでド派手なフロントマスクに。今回試乗した最上級グレードのエグゼクティブラウンジの価格は759万9000円
2015年の現行3代目になったときに誕生したモデルだ。3代目アルファードの人気はデビューから8年を経過したいまでも高い。2022年の新車販売台数でも、次々と登場する新型車に混じって、なんとベスト8に入っているのだ。その人気の秘密は、圧倒的な存在感だ。
全長4945mm、全幅1850mm、全高1950mm、ホイールベース3000mmという数値は、国産車では、グランエースに次ぐサイズ。輸入車とくらべてもメルセデスやBMWのSUVに対抗できるサイズだ。
試乗車のパワーユニットは152ps/206Nmを発生する2.5Lの直4エンジンに加え、フロントに143ps/270Nm、リアに68ps/139Nmを発生するモーターを搭載
パワーユニットはハイブリッドが直4、2.5L、152psのガソリンエンジンと、フロントに143ps、リアに68psのモーターを搭載している。ガソリン車はV6、3.5L、301psをフロントに搭載している。ハイブリッド車は電気式無段変速、ガソリン車は8速ATが組み合わされている。
車両重量は2240kg。アルファードは全グレードで2000kg=2トンを超えているという重量級のミニバンだ。
試乗はエグゼクティブラウンジの7人乗り、ハイブリッド車、メーカー希望小売価格は759万9000円になる。
■エグゼクティブラウンジの主役は2列目! 快適すぎる居住性をチェック
エグゼクティブラウンジ最大の長所である2列目。ゆとりあるプレミアムナッパレザーのシートのほか、オットマンや大型のアームレストが備わり快適性は抜群
試乗は普通、ハンドルを握ってみるところからだ。でも、このクルマはやっぱりエグゼクタィブさを味わうという意味もあり、2列目に座って、乗り心地からチェックだろう。
ということで、2列目のセパレートシートに座ってみる。シートは左右に床から肘かけまで一体になっているアームレストがあり、サイズもゆったりとしている。床がフラットなので左側のスライドドアから乗りこんで、奥のシートに行くこともラクにできる。アームレストのひじ掛けカバーを開けると、シートを調整するいろいろなスイッチが並んでいる。
エグゼクティブパワーシートの試乗車の場合、前後スライド500mm(手動)で、オットマンも備わる。アームレストからは左右それぞれテーブルも取り出すことができる。
エグゼクティブパワーシート装備車のほかに簡素なアームレストのみの仕様もある。こちらは左右シートを中央に寄せることで、スライド量が830mmにもなる。これだと3列目への乗りこみはラクなので、常に多人数が乗車するユーザーには、こちらの仕様が便利かもしれない。
エグゼクティブパワーシート仕様の場合、3列目への乗りこみは、2列目をスライド/前倒させなければならない。この調整は電動で行なえるがちょっと時間がかかる。
3列目シートも足元は広く、座り心地もよいため実用的に使うことができる
3列目も、エグゼクティブラウンジになると、十分に使える広さと装備を備えている。レッグスペースは2列目をうしろにしても、狭さは感じない。シートそのものも座面は広く、ヘッドレストも実用的だ。着座位置も低くはなく、長距離移動でも苦にはならない。
チェックしたかったのは乗り心地だ。3代目がデビューした直後の試乗では、2列目でも細かい振動がシートをとおして伝わるシーンがあった。最新モデルは細かい振動は抑えられ、高速走行でも落ち着いた乗り心地だった。硬さも感じられなかった。ちなみに試乗車はヨコハマブルーアースE51、225/60R17タイヤを装着していた。
シートアレンジに関しては、2、3列目をフルフラットにするモードや1、2列目をフラットにするモードも備えている。旅客機のビジネスクラスよりも快適かもしれない。
さらに3列目は折り畳んで左右にハネ上げるトヨタ方式のシートアレンジも採用されている。4人ででかけるゴルフなどには重宝する仕掛けだ。
エグゼクティブラウンジというクルマの性格上、どうしても2、3列目の居住性能が中心になってしまう。2列目シートでリラックスしていたのだが、やはり、ハンドルを握らないことには、インプレとしての体裁が整わない。
■熟成が進み高級車にふさわしい静粛性と安定感を実現!
木目調パネルやメッキパーツで重厚感と高級感を感じる運転席まわり
渋々(?)運転席に移動し、試乗を再開する。
2.5Lガソリンエンジン+フロント+リアモーターの組み合わせは、スタートからトルクがあり、音も静か。Dレンジでスムーズに走り出す。EVモードを使用しなくても十分に静かだ。
走行中、エンジンがかかった。このときも昼間の街中では周囲の音のほうが大きく、エンジン音は室内に入ってこない。振動も抑えられている。
話しはまたデビュー当初のことになるが、このときはエンジンがかかると、音と振動はかなり室内に侵入し、高級感に欠けていた。
さすがに2015年のデビュー以来、毎年のように改良を重ねているので、その成果は実感できた。おそらく、デビューから8年を経過し、モデル末期であることは間違いない。しかし、ドイツ車を例に出すまでもなく、いまのアルファードはもっとも熟成が進んでいるモデルといえるだろう。
街中での走りから、高速道路に入ると、好印象はさらに高まった。
フロントにストラット、リアはダブルウィッシュボーンを組み合わせたサスペンションとe-Fourのバランスがよいのだ。とくに直進性の安定感は、法さえ許せば100~120km/hで走り続けても、ドライバーだけでなく、パッセンジャーもまったく疲れない高速ドライブが可能だ。この安定感の高さも、以前のアルファードには感じされない性能だ。
ハイブリッドモデルの燃費も、大人4名+高速走行が多かったが、実走燃費で12.0km/Lを記録した。カタログ上の燃費は14.8km/L(WLTCモード)なので、今回の使い方を振りかえれば、そう悪い値ではないハズ。
1ボックス系ミニバンでありながら、高級車という新しいジャンルを切り開いたアルファードは、デビュー8年を経過しても、まだまだ十分に魅力的といえる。
◆ ◆ ◆
※残念ながら現行型アルファードはいま注文しても次期型が発売されるまで納車が難しいため、全国のトヨタディーラーでは受注を停止しております(2023年3月上旬時点)。欲しい方は中古で狙うか、次期型(2023年5~6月登場予定)を狙いましょう。
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