【工場見学】鍛造ホイールメーカー「BBSジャパン」高岡工場へ潜入レポート（前編）

「BBS製」鍛造ホイールができるまで【前編】

NBRチャレンジマシンやスーパーGT BRZに装着されるBBS製ホイール。市販車では「STIコンプリートカー」の多くに標準採用されるなど、「スバル」と「BBS」の関係はとても深い。 今回、マリオ高野がBBSジャパンの高岡工場に初潜入。高品質な鍛造ホイールができるまでをリポートする。

『BBS』は元々ドイツのホイールブランドで、30数年前にドイツの「BBS社」が日本の高品質な鍛造アルミ製品製造技術に目をつけ、鍛造アルミ製品の製造が盛んな富山県でも随一の技術を誇った「ワシマイヤー株式会社」と提携。 1983年に「日本BBS」が誕生し、市販の乗用車向けからF1やル・マン24時間、WRCなど世界のトップカテゴリーのサプライヤーとしても輝かしい名声をほしいままとしています。 BBSホイールは軽くて強いことで定評がありますが、ただ軽くて強いだけでは自動車レースのトップカテゴリーでは勝てません。過酷な競技の極限領域で”しなやかにたわむ”というBBSホイールならではの性能を発揮することでマシンを支えて安全性を確保し、トップチームから絶大な信頼を受けているのです。

というわけで、工場内へ潜入。意外と騒音は少なく暑さも想定内。これならば、工場勤務経験を持つマリオ的には働きやすそうに思えた。 今回の案内人は、「BBSジャパン」高岡工場長・澤田雅人さん。お話は非常に面白く、製品への愛と誇りに溢れていた。



鍛造ホイールができるまで（前編）

「BBSのアルミ鍛造技術を見れば高価格にも納得」 BBSホイールは「モノが良いのはわかるけど高い……」と思っている人は多いことでしょう。 かくいう私もそのひとりでした。しかし、今回の高岡工場取材で製造工程を目の当たりにし、驚愕の最先端技術と壮絶な手間ひまを知ってからは、一転して「BBSホイールは全然高くない」と思うようになりました。

なお、工程の流れは、「1.鍛造　2.スピニング加工　3.旋盤　4.中間仕上げ　5.完成」。 今回は、1.鍛造　2.スピニング加工をリポート。手間を惜しまないこだわりの製法をご覧いただきましょう。

「スーパーGT300クラスで戦う山内選手も同行」

愛車のレヴォーグに装着するBBS RI-A、またNBR24チャレンジやスーパーGTで戦うマシンにも装着するホイールが作られる工場とあって、まるで決勝前を思い出させる真剣な眼差しで各工程に見入っていた山内選手。 公私ともに命を預けているパーツが世界最先端の高度な技術によって鍛造されるが、意外と地味な手作業が多いことにも注目してほしいです。 チームのメカニックたちがレースマシンを製作する姿と重なるものを感じたようで、「BBSの工場で働く方々も我がチームの一員です。皆さんのためにも良い結果を出さねば」と決意を新たにしていました。

【工程1：鍛造】

まず、1次鍛造ではビレットと呼ばれるアルミ合金の塊に最大9000tの圧力でゆっくりと加圧。その後金型を換えてホイールデザインの原型を形どりながら3次鍛造まで繰り返します。 金型の隙間に加圧されたアルミ合金がところ天のように押し上げられるのですが、20インチ前後のデザインが複雑なものは表面積が広いため9000t級の高圧が必要だそうです。

9000tのプレス機がアルミの塊であるビレットに高圧をかける様子は圧巻のひと言。 軽自動車用の15インチから高級輸入車の純正装着用22インチ、さらにはF1用まで基本的には同じ工程で作られるんですね。

プレス機の近くにはさまざまなサイズ、デザインの金型を配置。硬質な特殊金属製で、金型への加熱は素材より温度が低い。

「金型を交換しながらプレスを行い鍛造ホイールの形が出来上がる」

6500～9000tもの圧力で3度にもわたりプレスしてホイールの形状を成型。 基本的にはロボットによる全自動工程だが、アルミ合金の材料が常に金型の中心に置かれるようレーザーで距離を計測し、1mmでもズレると機械が止まるようになっています。1～3次鍛造は、いずれもゆっくりと加圧。上の写真左からビレット、１次鍛造、2次鍛造、3次鍛造と進みながらホイールが仕上がっていくんですね。

【工程２：スピニング加工】

次のスピニング加工という工程では陶器を作る時のロクロを逆さにしたような感じで回転させ、上の金型で挟むようにして回してリム幅を広げます。スピニング加工が完了したら熱処理や機械加工などを経て、ようやく塗装前までの工程が完了。 続きの塗装・仕上げは「後編」にて紹介します。

鍛造が完了した素材は柔軟に伸ばすことができるので、ロクロを逆さにしたような状態で1分間に約400回転も回しながらインナーリムを成型。 通常のアルミはホイールは常温、超超ジュラルミンは熱間加工しているんです。

【後編は旋盤から完成までを紹介していきます！】