■15代目クラウンと16代目クラウン…姿かたち違っても「やっぱりクラウンだね」
2022年9月1日にトヨタ新型「クラウンクロスオーバー」の一部グレードが発売となりました。
そして、同月中旬から月末にかけて実際のユーザーに納車が始まっていますが、先代となる15代目と生まれ変わった16代目ではどのような違いがあるのでしょうか。
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2022年7月15日に世界初公開された新型クラウンは、前述の新型クラウンクロスオーバーを皮切りに、2023年にスポーツSUV「クラウンスポーツ」、ラージSUV「クラウンエステート」、そして4ドアセダン「クラウンセダン」を順次発売していく予定です。
生まれ変わったクラウンですが、その歴史は1955年に誕生した初代まで遡ります。15代目までは基本的には4ドアセダンを基調としたラインナップとして展開され、途中ではバンやワゴン、2ドアハードトップといった派生仕様も存在しました。
また、これまでのクラウンは基本的に日本市場を意識したさまざまな制限が設けられていましたが、16代目となった新型では世界40の国と地域での販売を目指すグローバルモデルへと舵を切っています。
そうしたなかで先代となる15代目は、2018年6月にフルモデルチェンジ。特徴としてコネクティッド機能の拡充や走行性能の磨き上げなど若年層をターゲットとした新たな高級セダン像を提案しました。
15代目のボディサイズは全長4910mm×全幅1800mm×全高1455mm、ホイールベース2920mm、最低地上高135mmです。
対して16代目の新型クラウンクロスオーバーは全長4930mm×全幅1840mm×全高1540mm、ホイールベース2850mm、最低地上高145mmとなり、これまで日本の道路事情に合わせていた全幅をグローバル化することで打破しました。
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エクステリアデザインでは、15代目がロングノーズのFRらしいプロポーションをベースに、6ライトウィンドウの採用によるルーフからラゲージにかけての伸びやかで流麗なサイドシルエットを実現することで、スポーティセダンらしさを演出しています。
また、ボディを凝縮してタイヤの張り出しを強調した低重心でスポーティな骨格を表現するほか、流れるように点灯するLEDシーケンシャルターンランプ(フロント・リヤ)を設定したほか、メッシュタイプのフロントグリル、より低重心でワイドに見せるフロント下部のメッキモールや4本出しエキゾーストテールパイプなどを採用することでもスポーティ感をさらに強調しました。
対して、16代目の新型クラウンクロスオーバーのエクステリアは、「セダン+SUV」という新たな概念を盛り込んでおり、スタイリッシュなクーペライクシルエットと、力強さを感じさせるリフトアップスタイルを組み合わせ、流麗さとダイナミックさを両立させた、新時代のフラッグシップの姿を表現しています。
左右に一直線につながるヘッドランプ&テールランプやボディ構造の工夫により、ボディ側面近くまで外側に張り出した足回りとセダンの常識を打ち破る大径タイヤの採用など、セダンでもSUVでもない、新たなクラウンとなりました。
実際に15代目と16代目を並べると車格が異なるのが一目瞭然です。
フロントフェイスでは、15代目が中央に集まったメッシュグリルに合わせてスポーティなバンパー形状が採用されている一方で、16代目の新型クラウンクロスオーバーは横一文字につながるLEDやメッシュグリルがワイド感を強調。
リアにおいても、横一文字につながるテールランプに加えて中央部に付けられた「CROWN」のエンブレムが後続車に対して主張しています。
※ ※ ※
それぞれのインテリアでは、15代目は前席が適度に包み込むようなインパネなどの造形により、運転すると低重心のアイポイントに加えて集中できるドライビングポジションにより、余裕のある運転が楽しめます。
後席は、フロントシート下の足入れスペースを拡大し足元の心地よさを向上したほか、シートは日本人の体型に合わせた座面形状の最適化によりフィット性を向上させ、長時間着座時の疲労低減に寄与するなど、後席需要を意識したパッケージとなっていました。
対する16代目のインテリアでは、15代目ほど包み込まれる造形ではなく、クロスオーバーとなったことでアイポイントが高くなったこともあり、むしろ開放感のある空間となっています。
実車に触れた体感として、インテリアのデザインや質感は15代目と比較しても好みが分かれるところですが、前席が前方向に移動するパッケージとなったことで後席の居住性は先代比+50mmとなり、より余裕のあるくつろげる空間となりました。
また、15代目の王道セダンから16代目のクロスオーバーになったことでヒップポイントは前席(先代比+85mm)、後席(+70mm)と上昇したことで乗り降りがしやすくなっています。
このようにボディサイズやデザインなどが大きく変わった新型クラウンクロスオーバーですが、ユーザーに対する「おもてなしの心」は日本が誇る高級セダンという伝統が継承されているように感じました。
■15代目王道セダンから16代目新型クロスオーバーで乗り味はどう変わった?
15代目から16代目で変わったのは見える部分だけではありません。
パワートレインにおいて15代目は2リッターターボや2.5リッターハイブリッド、3.5リッター ハイブリッドを設定、仕様によって2WDと4WDをラインナップしていました。
あらためて先代の15代目クラウンを試乗した印象では、ドイツのニュルブルクリンクで鍛えたこともあり、意のままに操れる様子は体感でき、市街地から高速道路など低速域から高速域でもフラットな乗り心地です。
また15代目は、車両骨格構造の適正化、防音材の適切な配置に加えて、アクティブノイズコントロールを採用することで静粛性を向上させており、速度域の高い場面でも前席と後席で声を張ること無く会話が出来ます。
そのため新しい16代目を試乗するまでは、15代目でも何不自由ない余裕のある運転が味わえました。
その一方で16代目の新型クラウンクロスオーバーは「2.4リッターデュアルブーストハイブリッドシステム」と「2.5リッターシリーズパラレルハイブリッドシステム」を搭載し、全車に「E-Four/E-Four Advanced」を組み合わせます。
この2.4リッターデュアルブーストハイブリッドシステムは、低回転から力強いトルクを生み出す直列4気筒ターボエンジンと電動パワートレイン「eAxle」、さらに新開発のバイポーラ型ニッケル水素電池を組み合わせることで、アクセル操作に応じてどこまでも加速する感覚を味わえるといいます。
一方で、2.5リッターリーズパラレルハイブリッドシステムは、これまでトヨタが鍛え上げてきた「THS(トヨタハイブリッドシステム)」をクロスオーバーに最適化。
新開発のバイポーラ型ニッケル水素電池を搭載したクラウンならではの上質で落ち着いた滑らかな走りを、より感じることのできるものとなっています。
今回の実車では、2.5リッターハイブリッド車を試乗。街中の低速域では「クラウンらしい」なめらかなで静粛性の高い走りとなっています。
少し速度を上げていくとスポーティではないものの、ハンドル操作に応じた気持ちの良い「走る・止まる・曲がる」を体感でき、これはトヨタブランド初採用の車速に応じてリアタイヤを操舵出来る「DRS(ダイナミックリアステアリング)」による恩恵かもしれません。
気になる点は少しアクセルを強めに踏み込んだときに、THS車ならではのエンジン音が唸る感じがこれまでと変わらず耳障りな印象で、これはほかの騒音が気にならないほど静かなゆえに目立っているのかもしれませんが、生まれ変わった新型クラウンだからこそ改善出来ていれば満点でした。
高速道路の速度域の高い場面では、これまでのTHS車よりもなめらかに加速する様子はまさにクラウンといえます。
また、とくに感動的なのはサスペンションの動きで、高速道路における路面の継ぎ目や凹凸では縦方向に違和感のない動きでショックを吸収しているように感じられ、あと揺れの違和感は覚えませんでした。
※ ※ ※
今回、実際に15代目王道セダンと16代目クロスオーバーを乗り比べると、同じクラウンながらまったくの別物ということを改めて実感しました。
しかしながら、随所に散りばめられた「クラウンらしさ」は健在で、見た目で「こんなのクラウンじゃない」と判断している人には一度「触れる・運転してみる」といったことをおすすめします。
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