東京都主催の電動バイクだけのイベント「EVバイクコレクション in TOKYO 2021」
世界的な環境NGOグループから温暖化対策に消極的な国だと「化石賞」を授けられてしまうほどの日本。そのワケである火力発電所への電力依存度はいまだ高いままですが、モビリティの急速なEV化への流れは各所で明確になっています。クルマに比べて遅れていた電動バイクの機種も徐々にその登場を知らせるニュースが増えてきました。
【画像23点】ホンダ、ヤマハ、BMWの「今買える電動バイク」を写真で解説
2020年、東京都が表明した2035年までにガソリンエンジンだけで走るバイクの新車販売終了という目標は二輪業界に衝撃を与えましたが、期限まで14年の2021年末に行なわれた電動バイク普及イベントを見て感じたのは、それに間に合うのだろうかという機種の少なさや、脱炭素に向けEV一辺倒になっている行政への疑問でした──。
その電動バイク普及イベントとは、2021年12月4日~5日に東京・千代田区の東京国際フォーラムで行われた東京都主催の「EVバイクコレクション in TOKYO 2021」。初日の4日には小池百合子都知事が来場し、出展ブースの視察を行ったほか、トークショーに登壇しました。
都知事の来場は告知期間が短かったにもかかわらず、約400ほどのトークショー観覧席は満席に。その注目度を改めて感じさせるものでした。
小池都知事はホンダ、ヤマハ、カワサキの各ブースを短時間ながらも視察し、それぞれの出展車について簡単な説明を受けたほか、カワサキブースでは車両にまたがり、ヘルメット姿を見せるなど、集まった報道陣へサービスカットも披露。
その後のトークショーではYouTuber芸人のフワちゃんとともにあらためて気候変動対策が急務であることと、それについての東京都の取り組みをアピール。走行時の排出ガスゼロという電動バイクの利点も来場者に訴えました。
小池都知事自らトークショーで「ガソリンエンジンだけで走るバイクの新車販売をゼロに」と改めて強調
トークショーでは「2030年までにガソリンエンジンだけで走るクルマの新車販売をゼロに。2035年までにガソリンエンジンだけで走るバイクの新車販売をゼロに」という東京都の目標を聴衆の前で改めて説明したわけですが、同様の目標を2030年代半ばまでで立てようとしている経済産業省に対して、東京都は5年前倒しで目指すことになります。
経済産業省がいまのところ明確にしていないバイクについても、2035年という明確な目標時期を東京都は設けています。
2019年5月に東京都は「ゼロエミッション東京戦略」という、2050年にCO2排出実質ゼロに貢献するという宣言をしています。その後、2021年に小池都知事は2030年までに温室効果ガスを2000年に比較して50%削減、再エネルギー電力の利用割合を50%まで高めていくことを表明し、これを「カーボンハーフ」として呼びかけています。
そうした東京戦略の大きな柱のひとつが「ZEV普及プログラム」で、「EVバイクコレクション in TOKYO 2021」もその一環として、電動バイクの普及、啓発を目的としたものです。
ちなみにこの東京戦略では電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)をゼロエミッションビークル(ZEV)として定義し、電動バイク(EVバイク)、燃料電池バイク(FCバイク)はゼロエミッショバイク(ゼロエミバイク)と呼んでいます。
少しややこしいのですが、2035年に新車販売ゼロを目指しているのは「ガソリンエンジンだけで走るバイク」。ハイブリッドのバイクはゼロエミバイクではないのですが、2035年でも買うことはできるようです。
加えて中古車(新古車)の販売については言及していませんし、東京都以外での新車販売も同様です。そうは言っても今後各メーカーは純ガソリンエンジン車以外の開発が一層加速してゆくことは間違いないでしょう。
とはいえ、「EVバイクコレクション in TOKYO 2021」で展示された車両台数は決して多くないうえに、ホンダのジャイロeシリーズは法人向けのリース販売車ですし、KTMグループが展示したのはコンペティションモデル。トヨタ車体のコムスはミニカー登録のクルマです。一般ユーザーが普通に買えるのはヤマハ eビーノやプロト GEV600、アイデア AAカーゴ、BMW Cエボリューションくらい。ここからコミューターを除くと……BMWしかありません。
会場では車両を見て回るのもほんの数分で済んでしまっていたのが現状です。
東京都は普及促進事業として個人や事業者向けに、電動バイク購入に対する補助金や、電動バイクの貸し出し&各所に設置したスポットで充電済みバッテリーを交換できるシェアリング実証事業など数々の施策を打ち出しています。
購入時の補助金は国(経済産業省)でも用意がありますが、東京都は以前よりも金額を増やし、最大48万円(車種により異なります)というかなり太っ腹なものです。太陽光発電の電力買取価格初期を思い出す大盤振る舞いですが、それだけ東京都はゼロエミッション東京の実現に真剣なんだということが伝わってきます。
2021年5月に小池都知事は二輪車委員会との連携ミーティングを行なっています。このときにヤマハの日髙祥博社長はカーボンニュートラルの実現に向けて各メーカーは全力で取り組むことを前置きしたうえで、構造上の制約もあり「すべてのバイクの非ガソリン化は難易度が高い」と現状を小池都知事に説明して理解を求めています。
さらにバイクのCO2排出量は国内輸送部門全体のわずか0.4%であることから「環境優位性が高いガソリン二輪車への新たな規制導入はさまざまなコスト上昇につながることが避けられず、ユーザー便益の棄損を生じてしまう」とも指摘しました。
また2021年9月の日本自動車工業会の会見で会長の豊田章男氏は「カーボンニュートラルにおいて敵は炭素であり、内燃機関ではありません。炭素を減らすためには、その国や地域の事情に見合った実用的でサスティナブル(持続可能)な取り組みが必要だと思います」という発言を残しています。
世界的な電動化への急速な流れに少し慎重であるようにも感じられるものでした。
ヤマハは2021年7月のプレスリリースにおいて、2050年までにバイクの9割を電動化することを表明しましたが、1割はそれ以外であることを明確にしています。
それを受けるかのように2021年11月にはホンダ、スズキ、カワサキとともに水素エンジンの共同開発について検討を開始することも発表しています。脱炭素に向けて電動化以外の道筋が見えてきたようにも思えます。
BMWブースは2022年夏発売予定の「CE04」を展示
BMWはCE04とCエボリューションの2台を展示しました。
BMWは2021年9月にミニバイクのようなCE02を発表していますが、あちらがバイク未体験ゾーンに向けた都市型コミューターとするなら、CE04はもう少し長いレンジに対応する電動バイクです。
CE04は2020年に「Definition CE04」としてコンセプトモデルが初公開され、2021年7月にドイツ・ミュンヘンで市販型が初公開されました。10.25インチの大型ディスプレイは速度など各種車体情報のほか、ナビゲーション画面、バッテリー状態が表示され、シート下にはヘルメット収納スペースも設けられています。
バッテリー容量は60.6Ah(8.9kWh)で、航続距離は約130km、完全放電からの充電時間は4時間20分で、急速充電器を使えば1時間40分ほどで満充電になるそうです。2022年夏ごろに市販開始予定とされています。
ホンダはビジネス用主体の電動版ジャイロとベンリィを展示
ホンダの展示はジャイロe:、ジャイロキャノピーe:、ベンリィe:のほか、モバイルパワーパックe:を展示。ホンダは各メーカーともにコンソーシアムを作り、モバイルパワーパックを交換式バッテリー技術の標準規格にするために取り組んでいます。
モバイルパワーパックはバイクだけでなく、電動マイクロショベルといった建設機械への使用や、インドでは政府と協力しリキシャ(3輪タクシー)の電動化にも使われています。また2021年4月の三部社敏宏長就任会見時のスピーチでは2024年までに原付一種、二種クラスに3機種の電動バイクを、さらにスポーツクラスにおいても電動バイクの投入を発表しています。
ヤマハは電動トライアル車、原付スクーター、電動アシストマウンテンバイクを展示
ヤマハは電動トライアル車のTY-E、2015年から販売しているE-ビーノ、そして自転車ではありますが、電動アシストマウンテンバイクのフラッグシップモデル、YPJ-MT Proを展示していました。TY-Eはすでにプロジェクトは完了しているそうで、培った制御系ノウハウをほかの機種へと転用する段階にあるそうです。
ちなみに開発時にライダーから言われたのはスロットルのピックアップに関する細かいオーダーだったとのこと。
前述したようにヤマハは2050年までにバイクの9割を電動化、さらに他社とともに水素エンジンの共同開発にも乗り出しています。また2022年に原付二種相当するモデルのリース販売を計画しています。
カワサキのテスト車は4速ミッションでクラッチレバー付き
カワサキブースには2019年のイタリア・ミラノショーで初公開した4速ミッション搭載のテスト車が展示されていました。カワサキは2025年までに10機種以上の電動バイク、エンジンだけ、モーターだけ、エンジン+モーターの3つのモードが切り替え可能なハイブリッドバイクの導入を宣言していて、さらに水素エンジンの開発にも取り組むことを表明。
ゼロエミッションな内燃機関の未来を模索しています。
KTM、ハスクバーナ、ガスガスはキッズ用電動モトクロッサーを展示
KTMグループは2018年から販売しているキッズ向け電動モトクロッサー「KTM SX-E 5」を展示。また同じコンポーネントを使って、KTMグループのハスクバーナ、ガスガスの各ブランド版「ハスクバーナ EE 5」「ガスガス MC-E 5」もあわせて展示しました。
日本には電動専用クラスがまだありませんが、ガソリン車と混走という形で参戦できるそうです。展示車以外にもKTMは電動オフロードモデル「フリーライドE」を2014年から販売しており、着々と実績と検証データを積み上げています。またガスガスはFIMトライアル世界選手権電動クラスに6段変速機+クラッチ付きのTXEで参戦しチャンピオンを獲得。台数限定(約160万円)ながらすでに市販も行なっています。
アイディアはデリバリー業務に特化した「バンクする4輪電動車」を世界初公開
電動バイクブランド「アイディア」ブースには、デリバリー業務に特化した3輪電動バイク「AAカーゴ」のほか、この日が世界初披露という4輪電動車の「AA-I」が展示されていました。
「AA-I」はミニカー登録のため普通自動車免許で乗れ、コーナリング時は電子制御によってバンク角が制御され傾斜するそうです。フロントが2輪で安定性に優れる反面、3輪のAAカーゴに比べると小回りは少し苦手ということでした。電池容量は7.7kWh、充電時間は100Vで12時間、200Vで6時間。航続距離は123km(30km/h定地走行値)、73km(60km/h定地走行値)です。
バイク用品でおなじみのプロトは、イタリア製の低価格・軽量車を展示
プロトは輸入・販売を手掛けているイタリア製の電動スクーター、ゴッチア「GEV600」を展示しました。リヤハブモーターを使いシンプルな構成に仕上げられた車体は重さ56kg、満充電で70km(30km/h定地走行値)走行可能でシティコミューターとして幅広く受け入れられることでしょう。
全国約1万店の販売ネットワーク、16万2800円という価格も注目ポイントです。
警視庁と東京消防庁の「働く電動バイク」
記念写真エリアのフォトスポットに警視庁が導入している電動スクーター「Eウイング」のほか、ホンダ PCXハイブリッドが東京消防庁カラーで置かれていました。「Eウイング」は各種マラソンなどの先導で既に活躍している姿を見たことがあるという人もいるかもしれません。
ホンダ PCXハイブリッドの方は、担当の方によると具体的に何用にという性格の車両でなく、脱炭素社会に向け今後を見据えて導入したというもの。とはいえリヤボックスはAEDが入るので屋外イベントのときなどに配置され活用されているそうです。
レポート&写真●飯田康博 編集●上野茂岐
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みんなのコメント
使える原発止めてこれだけ化石燃料燃やしていれば、化石と言われるけど、世界のco2の30%は中国が出しているぞ!
そこが問題だろう!