メルセデス・ベンツの電気自動車「EQ」シリーズの第2弾となるCセグメントの「EQA」が日本でも発売され、試乗テストできたのでレポートしよう。
試乗したEQA250は、GLAのプラットフォームをベースにした電気自動車で、全長4465mm、全幅1835mm、全高1625mmとCセグメント+というサイズ。コンパクトとまではいえないが、今回の試乗コースである都内でも取り回しに問題はない。GLAベースのためクロスオーバーSUV的なイメージのクルマといえるが、FWDであり、前後のホイールアーチにエクステンションを装備している点以外ではSUV的なイメージは殆どない。
本国ではリヤにもモーターを搭載したEQA300 4MATIC、より高出力のEQA350 4MATICもラインアップはされているが日本に導入されるのはFWDのEQA250モデルだけだ。
試乗したのはEQA250にデザイン・オプションのAMGラインを装備したモデルで、ナビプラス・パッケージ、パノラミックサンルーフのオプションも装備しており、ベース価格の640万円に約86万円プラスされ、トータル726万5000円であった。もちろん電気自動車だから100万円近い各種補助金が得られるのだが。
駆動モーターは誘導式モーターで、出力は190ps/370Nm。フロントにモーター、インバーターなどをまとめて搭載し、モーターは前輪を駆動する。
EQA250に乗り込むと、エンジン車より少しフロア面が高く感じた。やはりGLAをベースにしたクルマで、最低地上高が210mmとクロスオーバーSUVにしては高く、さらに床面にバッテリーを敷き詰めているので少しフロア面が高くなり、シートに座るとコマンドポジションであることが感じられた。
リヤ席は、フロントシートとの距離は十分に確保されているが、フロア面のバッテリー分がより盛り上がっているため、足を伸ばしにくい着座姿勢になる。一方、リヤのラゲッジスペースはエンジン車と変わりがない。ただしラゲッジボードの下側は12Vバッテリーや車載充電器が搭載されており使用できない。
メータパネルやエアコンのアウトレットは、他のAクラスなどと同様だが、もちろんパネルの表示は電気自動車ならではの項目が表示される。
ドライブモードは、ECO、コンフォート、スポーツの3種類あるが、都内の道路ではどう考えてもコンフォート一択となる。スポーツモードはいわゆるアクセル早開き状態のモードだし、ECOは加速が緩慢になってしまう。
コンフォートモードでもアクセルを速く深く踏めばスポーツモードと同等の加速になるので、コンフォートモード固定でまったく不満はない。都内の交通の流れの中ではコンフォートモードで過不足ない状態だった。最大トルクは370Nmと強力だが、ボディ重量は2000kgなので、強めにアクセルを踏み込んでも発進時の急加速感はあるが、より高い速度域ではそれほど高い動力性能だと感じることはなかった。
電気自動車特有の回生ブレーキはパドルで操作する。回生ブレーキの強さは4段階から選べ、デフォルトは弱いほうから2番目で、通常のATなみの減速感だ。そこから「+」パドル(通常のシフトアップ側)を1回引くと、回生なしのコースティング走行となり、逆に「-」パドル(=シフトダウン側)を引くと、さらに強い回生ブレーキがが2段階設定できる。
都内での走行では、デフォルトか、やや強めの回生ブレーキを選ぶ場面はあるが、回生ブレーキを弱めるモードは使うシーンはなかった。高速道路などでは航続距離を稼ぐためにコースティングもありだろう。
試乗車にはパッケージオプションのAMGライン装着で、よりスポーティ感のあるデザイン仕上げになっており、タイヤはコンチネンタル・エココンタクト6で、大径20インチホイールに235/45R20タイヤを装着。
このタイヤサイズにもかかわらず乗り心地はマイルドに仕上げられている。ただし、荒れた路面では、さすがに2000kgに達する車両重量のせいもあって、収まりが悪くなるが、普通の舗装路であれば滑らかな乗り心地だ。
また同時に静粛性も特筆モノで、きわめて静かで、モーター音、インバーター音もほとんど耳には届かず、上級クラス並みの静かなキャビンであった。
EQA250が搭載するバッテリー容量は66.5kWhで、WLTCモードで422kmという航続距離。普通にドライブすれば350km程度まで余裕で走ることができる。そういう意味で、電気自動車ならではの航続距離の心配はないし、日常的な通勤や買い物などで使用するパターンであれば、1週間に2、3回の自宅での夜間充電だけで済むはずだ。
ちなみに加減速の多い都内の道路で、エアコンを使っての走行では、約50km走ってバッテリーの充電量は15%ほど減少する程度だった。
EQA250は急速充電(CHAdeMO規格:ボデイ後部右側)、普通充電(右後部)の2ヶ所の充電口を備えているが、日常での使用であれば普通充電で賄うことができ、急速充電は長距離ドライブに出かけた場合しか使う機会は少ないだろう。
EQA250は、バッテリー容量から考えて常に電欠を心配する必要もないし、普通のエンジン車と同等の使い方ができるといえる。また走り、静粛性、車全体の質感もプレミアム・セグメントのクルマらしいといえるが、強いていえば電気自動車としての未来感や刺激がやや乏しい気がした。<レポート:松本晴比古・Haruhiko Matsumoto>
メルセデス・ベンツ EQA 250 諸元表
価格
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