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スーパーGT300 BRZに降りかかる難題 STIの先端技術でどう切り抜けるか

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スーパーGT300 BRZに降りかかる難題 STIの先端技術でどう切り抜けるか

2018レースカーから探るSTIの先端技術 Vol.9

2018年のスバル/STI BRZが参戦するスーパーGT300クラスは、3月17日、18日岡山国際サーキットで公式テストに参加していた。前回の鈴鹿テストでは、エンジントラブルに見舞われ、満足なテストとはならず、対策を施した状態でテストに臨んだ。

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岡山国際サーキットはスーパーGTの開幕戦が開催されるサーキットで、レースは4月7日、8日に行われる。スバル/STI BRZは2017年のマシンがキャリーオーバーされているので、十分な準備ができていると考えがちだが、毎年タイムもレベルも上がるスーパーGTだけに、マシン改良によるレベルアップをしなければならない。言い換えれば、レベルアップできるキャパシティを持つマシンということだ。

その開幕戦が行なわれるサーキットでのテストだから、このテストの位置づけと狙いは、当然、開幕戦用のベストなセッティングを探るのが狙いだ。だが、マシン改良をすれば、全体的にブランニューとイコールと言えるほど未知の部分が顔を出す。だから、問題個所が出れば、ひとつずつ潰していく確認作業も重要な位置づけということになる。

■きめ細かなすり合わせが重要

特に、今季のマシンは空力変更を行なっているため、ダウンフォースやドラッグが異なっており、当然タイヤにかかる負荷も違ってくる。それだけにサスペンションセッティングは一から見直す必要がある。そうなると、コーナー立ち上がり加速やトップスピードにも違いが生じるので、ギヤ比にも影響してくる・・・。というように、一つの変更はありとあらゆる箇所に影響しあうほど、レースカーはシビアであり、きめ細かなすり合わせが重要ということでもある。

なかでもブレーキの強化が昨年の最終戦での課題として表面化しており、ブレーキローターの大径化に伴いブレンボ製に変更している。もてぎ、鈴鹿とこのブレンボ製の新ブレーキシステムを導入してテストしたが、ピーク時の減速Gは良い結果になるものの、フル踏力ではない状態やブレーキのヌキなどのコントロール性が要求される場面では、慣れ親しんだAPのようにはいかない。また、導入したブレンボのブレーキシステムはFIA-GT3用に使えるように開発しているもので、車重がBRZより重たいマシン用に設計している。そのため、GT3マシンより軽量のBRZでは、マシン挙動に影響がでてしまうということが分かった。

そのため、今回の岡山のテストでは従来のAP製に戻してテストに臨んでいる。とはいえ、ブレーキを強化することは必要事項なので、AP製の大径タイプに今後交換していく予定だ。ただし、ハードの問題というより、減速Gの作り方、熱変形の違いが大きいわけで、大径APが必ずしも問題ない、とは今の段階では不明なのだ。

■トランスアクスルのギヤ比をその場で変更

前回の鈴鹿ではエンジントラブルに見舞われ、午後のセッションの途中でテストを中断することになってしまった。原因は1日目に降った雨が潤滑系に悪影響を与えてしまった様だ。岡山の午前のセッションでは、前後Gなどをかけた状態でも、オイル潤滑が正しく行われるかのチェックに少しの時間を使っていた。

不安がなくなったあとは、空力とミッションのバランスチェックをしている。ダウンフォースが変わればギヤ比も微妙に違いがでてくる。そのため、ダブルヘアピンなどでシフトチェンジが必要な場面があり、そこは同じギヤでクリアしたいので、ギヤ比の変更することを決断している。

ギヤに関しては1速から6速まで、ギヤの組み合わせやクロスレシオ具合など無数にあるわけで、データをにらみながら、本連載のvol.7でレポートした上保氏が算出したギヤ比に組み替えている。
*参照レポート:2018 STIマシンのエンジン、トランスミッションはどうなってるの?(3ページ目)

昼休みの2時間でギヤ比変更が可能なのも17年から採用しているトランスアクスルの利点だ。通常のFRであれば、ミッションケース全体を降ろす作業になり、1時間半程度で、ミッションの脱着をしギヤの組み換えまで行うのは、いかにレースメカニックといえども不可能だ。

こうして組まれた新たなギヤ比により、セカンドセッションを走行することができた。

この時のギヤ比の狙いだが、上保氏の説明では、ダブルヘアピンを同じギヤで駆けぬけるのはもちろんだが、全体としては加速重視のギヤ比でトップスピードまでは出せるが、全体にエンジン回転は高めになるセッティングだということだ。そのためパワーバンドを超えトルクダウンしてしまう領域までエンジンを回す場面も出てくるセッティングなので、最高速だけを見ると少し苦しいという。だが、マシンのセットアップも最高速狙いの仕様という部分も多少影響しているということだ。

実は、鈴鹿テストのあと、岡山に向けて想定したギヤ比があり、渋谷総監督からは、仕込んできたものの少しやり過ぎたのかもしれないという話もあった。

■セカンドセッション

おおむねマシンの仕様がきまり、狙いはタイヤテストに切り替わる。全く新しいコンパウンド、構造を持つタイヤを2タイプ用意し、実績のある現在のタイヤを基準にテストする。

路面温度は24度前後なのだが、路面のミューが低くなかなかグリップしない環境だった。これはスバル/STIチームだけでなくGT300 クラス全体が、タイムが伸び悩んでいることや、他チームのドライバーコメントでも似たようなコメントが多かった。

そのため、ダウンフォースを高めるとか、メカニカルグリップを上げる変更とか、そうした方向のマシンセッティングが要求されていた。

特にドライバーからはフロントのグリップが不足気味で、どうしてもステアリングをこじる場面があったということで、フロントリップを大径サイズのものに変更したことや、リヤウイングの角度調整などを頻繁に繰り返しベストな状態を探ることになった。

特にリヤウイングはステーとの取り付け角度を自在に変更できるように、穴の位置をA~Eのポジションと角度を1~5の段階で組み合わせられるという、数十通りのセットアップが可能になっている。だが、ここはマシンのキャリ―オーバーのメリットで、おおむね岡山であれば3通りの中のどれかがフィットすることがわかっているというノウハウがあった。

■タイヤの接地バランスの見直し

また午後のセッションは、山内英輝がその多くを走行している。理由を聞けば、昨年ニュータイヤでの走行がなかったそうで、今季は井口とお互い、ニュータイヤで走るときのそれぞれのコンパウンドと構造違いをテストし、本番でアジャストするためのデータ作りがしたかったということだ。

そうすることで、ニュータイヤになったときの一発のいいところを活かしていくことができるという狙いだ。だが、今回のテストでは、そこまで活かしきれなかったと、つまりフロントの入りをもっと良くしたいという結果になった。

また、タイヤ全体に熱が入りにくいようで、前後の熱の入り方が揃っていないことも課題として残ったということだ。これはメカニカルな接地とダウンフォースの双方で煮詰める必要がありそうだ。

翌日のセッション3では、前日とは逆に井口卓人が中心でロングランを狙うようなテストを試みていた。しかしサスペンションのセッティングなのか、アンダーが強いというコメントから、スプリングの交換とフロントタイヤハウス内の壁(インナーハウジング)の一部を取り外している。この壁を取り払う作業は、タイヤハウジング内の空気の流れが変わり、またブレーキの冷却にも好影響のハズという判断を渋谷総監督は説明している。

また、前日に山内がコメントしているようにステアリングをこじるような状況、という話は井口が言うアンダーステアの傾向が強いということで共通の挙動を感じていたと想像できる。

ロングラン、つまり35ラップから37ラップを一気にレースモードで走行するテストを試みていたが、タイヤとのマッチングが悪く、思うようにロングランができなかった。特に新規のタイヤのライフが短く、収穫としては物足りなかったというコメントを渋谷総監督はこぼしていた。

■エアリストリクターから過給圧制限へ

一方、注目はエンジンだ。なんとGTAからの今季のハンデに関し、過給圧コントロールの指定があったということだ。つまり、最大ブースト圧が制限されるということで、オーバーシュートも含め、指定過給圧オーバーはレギュレーション違反とするというお達しなのだ。

その連絡がきてから10日ほどで岡山のテストということで、制御プログラムが完成しておらず、この岡山のテストには、旧来のエアリストリクターを装着してのテストとなっている。

この過給圧制限が果たしてどのようなことになるのか?渋谷総監督からは特に明言はなかったが、最高速はさらに抑えつけられるのではないかと予測する。渋谷総監督は、「概ね最高速はパワーと走行抵抗のバランスしたところで決まるので、シミュレーションでも検討したい」というコメントだった。

逆に、最大過給圧の制限であれば、レスポンスという点では稼げるのではないか?と想像もする。それにともない、A/Rの変更なども考えられるが、開幕戦は目の前。果たして間に合うのか?際どい状況が生まれてきている。

岡山国際サーキットでのテストの狙いは、本番レースでのベストなセットアップを探ることであったが、満足のできるテストとはいい難い結果だったと想像する。

そして、テクニカル・コーディネーターのR&Dスポーツ澤田氏からは、「昨年トラブルで取りこぼしているだけに、今年はきっちり勝っていきたいと思うので応援よろしくお願いします」というコメントがあった。こうした難題をどんな技術力を使って解決していくのか、今後も追いかけてみたい。

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*取材協力:SUBARU TECNICA INTERNATIONAL

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