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アウトウニオンにサーブ、ネッカー、ランチア 1960年代の小さなファミリーカー 前編

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アウトウニオンにサーブ、ネッカー、ランチア 1960年代の小さなファミリーカー 前編

同等モデルの倍近い金額だった輸入車

60年ほど昔の英国では、オースチンA40やモーリス・マイナー、フォード・アングリアなどが、600ポンド前後で買える小型乗用車として普及していた。一方、欧州大陸から輸入される1.0Lクラスのモデルは1200ポンド前後。売れ行きは限定的だった。

【画像】1960年代の小さなファミリーカー アウトウニオンにサーブ、ネッカー、ランチア 全43枚

1959年に規制が緩められるまで、輸入車は英国人にとって手の届きにくい憧れの1つ。小さなファミリーカーですら、現実的な選択肢ではなかった。しかも、第二次大戦の緊縮的な雰囲気や西ドイツに対する不信感は、完全に消えていなかった。

その当時、英国の自動車市場における輸入車の割合は、たった2.5%ほど。大部分が自国産のクルマで支配されていた。その反面、英国の自動車ブランドは、長期間続いた政府による保護政策で感覚が鈍っていた。

40馬力程度の最高出力に、110km/h前後の最高速度。価格価値は優れていたが、所有や運転することへの喜びは、高いものではなかったといえる。英国以外のメーカーが生み出す、新モデルの驚異にも気付けていなかった。

ドイツのアウトウニオンも、スウェーデンのサーブも、軽く1000ポンドは超えていた。その金額を用意すれば、英国ならウズレーやジャガーといった上級ブランドのモデルを購入できたのだから、ぬるい環境だったことは確かだ。

フィアット1100のライセンス生産モデル

一方で、ヒルマンやサンビームを擁するルーツ・グループや、オースチンやモーリスを擁するBMCのショールームへ足を運ばない人がいたことも確かだ。価格差を忘れて、周囲とは違うブランドに対する欲求があったのだろう。

単なる移動手段としてではなく、趣味の延長のような、クルマ好きのためのモデルを探していた人たちだ。小さいながらも、徐々にその需要は拡大する勢いがあった。

英国車には設定がないような鮮やかなボディカラーと、個性的なボディライン。輸入車ならではといえる、華やかな世界を約束してくれていた。日差しが当たる通りに面したカフェや、風通しの良い明るいリビングを、イメージさせた。

1960年代が始まるまでに、今回の4台は英国でも徐々に販売台数を伸ばしていた。欧州本土では、堅調に売れ続けていた。1950年代初頭に起源を持つ、長寿命モデルになってはいたが。そんな英国へやって来た小さな輸入車を、順にご紹介したい。

まず始めは、1953年式ネッカー・ヨーロッパ。フィアット1100の、西ドイツによるライセンス生産モデルだ。ベースとなった1100は、細かなマイナーチェンジとパワーアップを重ね、フィアット124が1969年に登場するまでイタリアの定番乗用車だった。

1100は洗練された後輪駆動シャシーを備え、平均以上の活発さを発揮する、3ベアリングで支えるプッシュロッド・エンジンをフロントに搭載。従来的な技術ながら、改良を加え続けることで、長いモデルライフを実現させていた。

2ストローク・エンジンのアウトウニオン

英国人にとって、凸型な3ボックス・フォルムのネッカー・ヨーロッパは、最も馴染みが薄いかもしれない。だが本家のフィアットは、1100を170万台も製造している。後に生産を受け継いだ、インド・プレミア社での台数を含まずとも。

ネッカーは、1970年代初頭までフィアット・モデルのライセンス生産を続けている。少し複雑だが、戦前はNSUのモデルを生産していた過去がある。

ご登場願ったヨーロッパは、カーコレクターのフレドリク・フォルクスタッド氏の愛車。レッドとホワイトのツートーン・ボディが印象に強く残る。

そんなフォルクスタッドのコレクションでテーマの1つになっているのが、白煙を吐き出す2ストローク・エンジン車。特にDKWやアウトウニオンといった、ドイツ車に関心があるという。ブルーとホワイトのアウトウニオン1000 Sも、彼のコレクションだ。

フォルクスワーゲン・ビートルにも似た丸みを帯びたフォルムだが、より上級向けのモデルが目指されていた。その起源をたどれば、2気筒エンジンのDKWマイスタークラスや、3気筒のゾンダークラッセへたどり着く。

1000 Sのエンジンは、高圧縮比の2ストローク3気筒980cc。大きく湾曲したフロントガラスがトレードマークといえる。発売は1958年で、途中でフロントにディスクブレーキが追加され、1963年まで生産が続いた。

特徴といえるのが、前輪駆動でセパレートシャシーという構造。エンジンとトランスアクスルは、ボックスセクション・フレームの前方へ搭載されている。

ラリーでの強さを世界へ証明したサーブ

真っ赤なサーブ96も、フォルクスタッドの1台。アウトウニオンと良い対比を生んでいる。彼のクルマは、1968年まで生産が続いた2ストロークの直列3気筒を積む。最高出力は55psで、4速MTが組まれている。後期型では、V型4気筒エンジンへ置換された。

96は1960年の発売で、左右に回り込んだリアガラスの造形が特徴。車内空間は広く、荷室にもゆとりがある。ブルノーズと呼ばれた初期型のフロントマスクは、フォード社製V4エンジンの採用計画とラジエターの位置変更により、1965年から新しくなっている。

英国やモンテカルロで開かれたラリーでは、ドライバーのエリック・カールソンにより複数回優勝。サーブの強さを世界へ証明し、販売台数の拡大へとつながった。

96の起源は、1950年から1956年に作られていた、2気筒エンジンの92までさかのぼれる。改良を受けつつ、新モデルの900と並行しながら1980年まで生産が続いたのだから、驚くべきモデルだ。

航空機を生産していたサーブにとって、初の自動車となった92が横向きに積んでいたのは、最高出力25psの2ストローク・エンジン。その後、1956年の93では縦置き3気筒が導入されている。排気量は当初841ccで、38psを発揮した。

前輪駆動のシャシーには、改良が施されたコイルスプリングのリア・サスペンションが与えられている。アウトウニオンのようにシンプルで滑らかなボディと、軽量なシャシーに充分なパワーが組み合わされたサーブに、スウェーデン人は魅了された。

この続きは中編にて。

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  • サーブの96Sの大古車が格安で売られていてレストアベース覚悟で買おうと思ったが、パーツも治せるところも見つからずに諦めた。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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