そっくりだけどパクりじゃない似て非なるクルマたち
オマージュという言葉はとても使い勝手のいいコトバだ。その意味は、リスペクトした作家などに影響を受けて似たような作品を創作することであり、それはクルマの企画・開発にも存在する。ここではパクリカーと言うなかれ、平成のオマージュカーを愛情を持って振り返りたい。
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ミニライトスペシャルが登場するなどオマージュぶりハンパなし
「ダイハツ・ミラ ジーノ/1999年3月発売」
ローバー・ミニ(以下、ミニ)をオマージュした日本車はいくつかあるが、なかでも再現度が高かったモデルが5代目ミラをベースに、追加グレードとして登場した初代ミラ ジーノだ。ちなみに2004年に発売された2代目ミラ ジーノもミニのオマージュモデルと言えるが、よりリスペクト度が高かったのはL700S型の初代だ。ツインカムDVVT採用の3気筒12バルブEFI NAエンジン仕様(最高出力58ps/最大トルク6.5kg-m)と、同ツインカム3気筒12バルブEFIターボエンジン仕様(最高出力64ps/最大トルク10.9kg-m)が設定され、それぞれにFF/4WDに加えて5速MT/4速ATモデルをラインアップした。
また、2000年10月には、本家ミニがモンテカルロラリーなどで使用した伝説のホイール「MINILITE」(ミニライト)とのタイアップモデルである「ミニライトスペシャル」を発売。以降、2001年にはミニライトスペシャルをベースにした「ミラ ジーノ ハローキティ」(2001年12月発売)、2002年8月には1000ccのツインカムDVVT3気筒12バルブEFIエンジン搭載の登録車である「ミラ ジーノ1000」が登場するなど、パクリカーという稚拙な言葉では語りきれない、ダイハツが本気でオマージュしたモデルとして人気を博した。現在でもクラシックミニがサーキットで暴れまくっているように、初代&2代目ミラ ジーノもターボモデルがあったことから、サーキットでまだまだ現役の活躍を見せている。
オマージュしたポイントはリヤスタイルにあり!
「4代目スズキ・スイフト/2016年12月発売」
オマージュカーと言ったらフロントマスクをいかに真似るかがポイントになるが、個人的に気になって仕方がないモデルが4代目スズキ・スイフトだ。推測ではあるが、このスイフトがオマージュしたと思われるのが5代目の6R型VWポロのリヤスタイルで、とくに少し膨らみを持たせたテールゲートに加え、テールランプ形状も似たデザインを採用。さらに、このポロが最後の5ナンバーサイズ(全長3995mm×全幅1685mm×全高1475mm)であったことからボディサイズも似ており、スイフト(全長3840mm×全幅1695mm×全高1500mm※2WDモデル)とはガチライバルの関係であった。
スポーツ性能を求める人にとってはスイフトスポーツ一択となりそうだが、2016年12月の発売時に設定された1L直3ターボ搭載のRStグレードでも、十分に走りの良さが堪能できるいい意味で日本車離れしたモデルだった。
’60年代フレンチ旧車の個性を放つ日産のパイクカー
「日産パオ/1989年1月発売」
1987年開催の東京モーターショーにS-Cargo(エスカルゴ)とともに参考出品されたPAO(パオ)は、1989年1月に正式発売(期間3カ月の予約販売)された。目にした瞬間に『どこかで見たことがある!』と思えるスタイリングはルノー4(Quatre/キャトル)に似たもので、やわらかな曲線基調のスタイリングをベースに、柔和な表情を見せる丸目2灯ヘッドライトがルノー4をオマージュしたと思わせる所以だろう。
しかし、ルノー4のハッチバックモデルは5ドアであり、PAOが3ドアであることや、メッシュグリルと縦型フィングリルの違いがあるなど、厳密には各所で差異が見られる。ただし、PAOは日産パイクカーシリーズ第1弾のBe-1(ビーワン)と同様に、ハッチバックのK10型マーチがベースであることからフォルムとして似てしまったのはもちろん、レトロなテイストを取り入れる常套手段である丸目2灯ヘッドライトを採用したことが、どうしても近似してしまうのは仕方ないと言える。
現在、中古車市場で高い人気を誇り、30年以上の前のモデルとしてはタマ数はまだまだ残っているわりに、極上コンディションやしっかりメンテナンスされた車両は200万円に迫るプライスタグが付けられており、いまもなお色褪せないモデルだ。
ヘビーデューティの極みとも言える軍用仕様の民生モデルをオマージュ
「トヨタ・メガクルーザー/1996年1月」
1996年に発売されたトヨタ・メガクルーザーは『卓越した機動性と災害時の救助活動でなどで活躍できる』新しい4WD車としてデビューした。そのスタイリングからも、不整地走破性能や登坂性能、さらに5m超の全長と2.2mに迫る全幅ながら、逆位相4WSにより5.6mの最小回転半径を誇る小回り性を兼ね備えていた。
もちろん、このメガクルーザーがオマージュしたと推察できるモデルは、アメリカの軍用車ハンヴィーの民生モデル「ハマーH1」であり、メガクルーザーも高機動車として陸上自衛隊にも納入されていることからも、似たような生い立ちを持つ両車である。エンジンはトヨタの中型トラック、ダイナに積まれた4.1Lインタークーラー付き直噴ディーゼルターボの15B-FTを採用。39.0kg-mの最大トルクを1800rpmで発生させるトルクフルな特性も手伝い、通常のクルマでは走行が困難な場所でも路面を選ばない桁外れの走破性を誇った。
なお乗車定員は前席2名、後席4名の6名乗車となっており、運転席に座ると助手席の乗員がかなり遠くに感じるほど。ちなみに中古車情報サイトでは2台の個体が掲載されており、1台は応談だが、もう1台はメーカー希望小売価格の962万円の2倍の値付けとなっている。
後発モデルゆえにライバル車を研究し尽くしてデビュー
「日産NV350キャラバン/2012年6月」
最後は日本が誇るボックス型商用車の日産NV350キャラバン(現在はキャラバンに名称変更)。オマージュしたモデルと言えば、言わずもがなのトヨタ200系ハイエースである。このハイエースは2004年8月デビューであるのに対して、NV350キャラバンは遅れること8年、2012年デビューであった。日産としては2004年~2012年まで実質型落ちのE25型キャラバンで200系ハイエースに対抗してきたのだが、もちろん苦しい戦いを強いられた。そこで満を持してデビューさせたのが2012年発売のNV350キャラバンだ。
4ナンバーサイズ(乗用車での5ナンバーサイズ)に収めるという制限のなかで、最大の積載量を狙うとどうしても形状が似てしまうのは致し方ないこと。日産は王者として君臨していた200系ハイエースを研究し尽くし、E25型ではセミボンネット(ボンネットが少し前方に張り出している)を採用していたが、NV350キャラバンでは200系ハイエースと同じ完全なキャブオーバータイプとなった。
同じ4ナンバーの標準仕様(ロングボディ/標準幅/標準ルーフ)のNV350キャラバンと200系ハイエースを比べると、後発のNV350キャラバンのAピラーからDピラーまでのシルエットは、200系ハイエースのピッタリとハマる、まさに200系ハイエースを完全リスペクトした証拠がそこからもうかがい知れる。
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