現在日本のコンパクトカー業界の注目はホンダフィットがフルモデルチェンジされ、トヨタヴィッツもヤリスに移行したこともあり、この2台に集中している。
フル販売最初の2020年3月は登録車でフィットが2位、ヤリスが3位と幸先のいいスタートを切った。
2代目もヒット街道驀進! 軽SUV切り開いたハスラーの偉業とは?
そんなコンパクトカー業界においてあまり目立たない存在ながらスズキスイフトの販売も堅調だ。当記事では現行スイフトの軌跡や販売状況を交えながら、現行スイフトの販売が堅調な理由を考察する。
文:永田恵一/写真:SUZUKI、MAZDA、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】スズキスイフト&スイフトスポーツは初代からガラリと変わった後は超キープコンセプト!!
現行スイフトは4代目
初代スイフトから数えて4代目となる現行モデルは、エクステリアはキープコンセプトながら大幅な進化を遂げて登場
スイフトは初代モデルこそ軽自動車をベースに拡大した成り立ちだったが、2004年登場の2代目モデル以降、「ボディサイズやポジションはヴィッツ&ヤリスとデミオ&マツダ2に近い広さは重視しないコンパクトカーのド真ん中。
ヨーロッパでも販売される世界戦略車だけに走りは骨太でスポーツモデルのスポーツも設定し、価格は安価」という基本的なコンセプトは変わっていない。
2016年12月登場の4代目モデルとなる現行スイフトは、リアドアのドアハンドルを上方に置いた一見3ドアハッチバックに見えるエクステリアやD型ハンドルを採用したインテリアなどにより、視覚的なスポーツ性を向上。
スイフトは下がフラットになったD型ハンドルを採用。計器類の視認性、操作性にもこだわり、インテリアの質感も高い
機能面ではスズキが展開する新世代のプラットホームであるハーテクトの採用により、十分なボディ剛性を確保しながら100kg級の軽量化を実現した点が注目された。
パワートレーンはベーシックな1.2L、直4ガソリン、1.2L、直4ガソリンのオルタネーターを強化した簡易ハイブリッドとなるマイルドハイブリッド、1L、3気筒ターボでスタート。
新型スイフトではスズキの新世代プラットフォームのハーテクトを採用。大幅な軽量化により走り、燃費面でも大きく向上(写真はスイフトスポーツ)
2017年にスイフトスポーツを追加
2017年7月には1.2Lガソリンに5速MTのクラッチ操作とシフト操作を自動化した5速AGSを介して14馬力の小型モーターを組み合わせたかつてのホンダIMAのようなハイブリッドを追加。
グレード展開は標準系に加え、現行モデルから先代モデルで追加されたヨーロッパ仕様のサスペンションやチューニングを施した電動パワステなどを持ち、より走りに磨きを掛けたRS系の存在感が目立つものとなった。
現行スイフトは2016年のデビュー時はマイルドハイブリッドをラインナップ。2017年7月にハイブリッドを追加して2本立てとなった
また現在も変わっていない自動ブレーキ&運転支援システムは単眼カメラとレーザーセンサーを使ったもので、約40km/h以上の速度域で作動する先行者追従型のアダプティブクルーズコントロールも装備している。
これは現在でもコンパクトカーとしては水準程度の性能を備えている。なおハイブリッドが追加されるまでの月間販売目標台数は3000台だった。
2017年9月にはスイフトスポーツが追加された。
現行スイフトスポーツはヨーロッパ仕様と共通の3ナンバー幅となるボディを持つ(つまり5ナンバー幅となる標準のスイフトのボディは日本専用ということだ)。
2017年9月に追加されたスイフトスポーツの全幅は1735mm。4代目にしてシリーズ初の3ナンバーボディとなったがネガは感じられない
パワートレーンは6速MTと6速ATと組み合わされる1.4L、直4ターボ(140ps&23.4kgm)にパワーアップされ、そのパワーを受け止める足回りなどの強化も抜かりないものとなっている。
またスイフトスポーツが追加された時点で月間販売目標台数は3500台に増やされた。
その後スイフト、スイフトスポーツはスイフトの特別仕様車の追加やグレード体系の見直しがあったくらいで、現在まで目立つ改良は受けていない。
現行スイフトの販売推移
スズキにとって世界戦略車のスイフトの売れ行きは非常に重要。日本では爆発ヒットはしていないものの堅調な販売をマーク
2017年以降の現行スイフトの販売推移は以下のとおりだ。
■2017年:3万8324台
■2018年:3万6628台
■2019年:3万3238台
前述した月間販売目標台数には若干届いていないものの安定している。
またもっとも近いライバル車となるデミオ&マツダ2の同時期の販売台数を見てみると以下のとおりだ。
■2017年:4万9302台
■2018年:4万8182台
■2019年:3万7892台
データからはデミオ&マツダ3に対して見劣りするようにも感じる。
プレミアムコンパクトカー戦略の一環として、ガソリンエンジン車は量販の見込める1.3Lエンジンを消滅させ1.5Lのみとなったデミオ
しかしスズキのコンパクトカーにはスイフトと似た価格帯でプチバンのソリオとクロスオーバーのクロスビーも存在する。
●ソリオ
■2017年:4万9742台
■2018年:4万4884台
■2019年:4万4488台
●クロスビー
■2018年:3万0624台
■2019年:2万4108台
販売台数を見ると、どちらも堅調だ。
今やスズキの小型車部門の稼ぎ頭となっているのがソリオ。ユーティリティ面を重視する人がスイフトからスイッチしている可能性は高い
SUVブームもありハスラーの兄貴分であるコンパクトSUVのクロスビーは堅調な販売をマークしている
ド真ん中のコンパクトカーとなるスイフトと似た価格帯にこういったモデルがあれば、「スズキにクルマを見に来たユーザーがソリオやクロスビーに流れる」ということがあるのは当然で、この点を考慮すればやはりスイフトの販売推移は堅調と断言できる。
スイフトの販売が堅調な3つの理由
スイフトの魅力は軽量なことも大きく後押しする。スイフト(英語で軽快、快速の意味)という車名にふさわしい走りや燃費のよさも浮かぶ。
しかし筆者は普通にクルマを使う一般ユーザーにとってそれらは当たり前のことで、スイフトを選ぶそれほど大きな要因ではないと考えている。
ではそれ以外のスイフトの販売が堅調な理由を考えてみる。
(1)2代目モデルからコンセプトがブレていない
もちろん時代の変化や見誤りがあればコンセプトを変えるのは大事なことだが、正しいと確信しているのであればフルモデルチェンジがあってもコンセプトを変えないというのも、それはそれでユーザーへの信頼を高める有効な手段ともいえ、2代目モデル以降のスイフトはまさにそれに当てはまる。
2004年にデビューした2代目は初代と併売された。スタイリッシュで軽快なコンパクトカーというコンセプトはこの2代目から不変の安心感がある
(2)1.2Lガソリン車がリーズナブル
一般ユーザーが標準系のスイフトを選ぶ際には、費用対効果などを考えると1.2Lガソリン車だけを考えればいいと筆者は思っている。
その場合スイフトのベーシックな1.2Lガソリン車の価格は前述の自動ブレーキ&運転支援システムやLEDヘッドライトを着けて150万円台と、一番のライバルとなるマツダ2が似た内容だと1.5Lエンジンというアドバンテージはあるにせよ190万円程度になるのを考えると、非常にリーズナブルだ。
コンパクトカーも現在では値上げ傾向にあるなか、スイフトの1.2Lガソリンモデルはライバルに比べても買い得感が高い
(3)スイフトスポーツの存在
スイフトスポーツは現行モデルも含め、2代目以降ホットハッチの定番商品として実に完成度が高い。
さらに初代モデルから一貫して価格も内容を考えたら激安で、現行スイフトスポーツはMTだと自動ブレーキ&運転支援システムを着けて195万8000円といつ見ても信じられないくらい安い。
日本を代表するホットハッチのスイフトスポーツの安さは驚異的。スポーツ受難時代ながらコンスタントに月販平均約1000台を販売するのも充分に納得
さらに現行スイフトスポーツはエンジンが高回転域での面白みに欠けるところはあるのだが、そのぶんATとの相性がバッチリでアダプティブクルーズコントロールが着けられることもありスモールGT的に使うというのも面白い。
またスイフトの中での標準系のRSとスイフトスポーツの価格差を見るとRSのエンジンによっても違うが15万円から25万円程度しかない。
東京オートサロン2020に出展された『スイフトスポーツ カタナエディション』はワイドフェンダー装着、カーボンパーツ多用でカッコいい。ぜひ市販してほしい!!
「この価格差ならスイフトスポーツにしたい」と考えるユーザーがいるのも当然で、スイフトスポーツはスイフト全体の3分の1前後を占めており、コンスタントに月に1000台前後が売れているというのもよくわかる。
ただ見方を変えるとスイフトスポーツが安すぎることが、RSやハイブリッドといったベーシックモデル以外のスイフトの存在意義を希薄にしているような気がしないこともない。
※スイフトスポーツは2017年9月20日発表
まとめ
どんな商品でも売れているものには、考えてみるとそれなりの理由があるものである。
スイフトを見ているとスイフトだけでなく、スズキというメーカーのしぶとさ、したたかさも再認識し、この点には他メーカーも見習うべきところが多いように思う。
写真はスイフトの欧州仕様。欧州仕様は全幅が1700mmを超えるが、日本用にはナローボディを用意。この配慮もスズキのしたたかさの証
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みんなのコメント
スズキは絶対にこの火を絶やしてはいけない。
ホンダもこういう『シビック』を作らなきゃいけないんだよ。