もくじ
どんなクルマ?
ー 「GT」を名乗る4ドアクーペ
どんな感じ?
ー ノルドシュライフェを7分30秒以下で
ー 4ドア化による確かな利便性
ー 他の2tクラスには真似できない走り
ー GTスポーツカーと呼ばれるクルマ以上
「買い」か?
ー 食わず嫌いはもったいない
スペック
ー メルセデス-AMG GT 63 S 4ドアクーペのスペック
20年ぶりの新型 スズキ・ジムニー・シエラ初試乗 高いオフロード性能は不変
どんなクルマ?
「GT」を名乗る4ドアクーペ
メルセデス-AMG GT 4ドアクーペは、ライバルを引き離すパフォーマンスを目指したオリジナルモデル。全長5m超、4シーターのボディで、アウディRS7スポーツバックやポルシェ・パナメーラなどと同じ、4ドアにハッチバックを備えるハイパフォーマンスGTだ。ドイツ・アファルターバッハを本拠地とする、メルセデス-AMGが生み出す生産モデルで、CLSの改造版ではない。AMGにとっては、この存在は小さくないはず。
例えばパナメーラは、明確なアイデンティティを備えている。巨大にした911のようなアピアランスながら、911GTとは呼ばれていない。またアウディが生み出す近年のクルマは、どれも1980年代の4輪駆動モデルのアイコンにイメージ付けされてはいるものの、新しいRS7を「クワトロ・ツーリング」などと命名することもない。BMWが計画中のM8グランクーペも、スポーツカーとしての独自性を持っている。正々堂々と、新しいクルマとしてのアイデンティティを備えている。
そんな中でメルセデスは、現在生産されている、似たパッケージングを持つ多くのイメージを借用しながらも、新しい4ドアクーペに「GT」という名前をつけてしまった。AMG GTといえば、スペースフレームを備えた2シーターのスポーツカーなのではないだろうか。
といいつつも、AMGがGTと名乗らせた4ドアのクルマは、GTと呼ぶのに相応しいものだった。スポーツカーには決して見えなくても、このボディサイズと車重を持つクルマとしては、望外にスマートなハンドリングを獲得しているのだから。
早速その走りをご紹介しよう。
どんな感じ?
ノルドシュライフェを7分30秒以下で
わたしの第一印象としては、GTの名には合わないように感じてしまった、メルセデス-AMG GT 4ドアクーペのスタイリング。4ドア版GTがまとうエクステリアデザインのテイストと同様に、内側にもMRAモノコックと呼ばれる、メルセデス製の共用プラットフォームが採用されている。GTスポーツカーとしてのハンドリングを目指し、軽量なスペースフレームが選ばれたわけではなく、CクラスやEクラス、CLSなどと同じものとなる。
GTのキャビン周り、特にリアのシルエットやワイドなスタンスは、スポーツカーとは呼べない。実際に走り出すまでは、パナメーラやRS7などのライバル達と、基本的には同じ種類のクルマに感じられるだろう。同門でもあるメルセデス製のCLSとの違いも、どの程度なのか、気になる部分ではないだろうか。
エンジンには、「アンチフリクション」と呼ばれるベアリングを採用した、新しいターボチャージャーが搭載されている。宇宙開発企業が興味を持ちそうな、イノベーション技術にも聞こえるが、恐らくドイツ語を翻訳した際の表現的なものなのだろう。さらに、特にサスペンション周りを中心に、ホワイトボディ状態で剛性を向上。GTスポーツカーとしては初めて、4輪操舵システムも搭載する。
車高が低く、なだらかに弧を描くルーフラインを持つ4ドアクーペのGT 63Sと現行のE63との違いや、639psと91.6kg-mを発生するV8ツインターボを採用した点に関して、AMGのエンジニアへ質問してみた。
「GT 4ドアクーペには、4マティック+に4輪駆動、eデフ、アダプティブ・エアサスペンション、4輪操舵システム、スタビリティコントロールなどを採用しています。シャシーとドライブトレインとの協調性を高め、われわれの他のパフォーマンス・サルーンやクーペとは異なる水準へと高めています」と話すのは、デミアン・シャファート。彼はAMGのドライビング・ダイナミクスの責任者であり、このGT 4ドアクーペを駆り、個人的にニュルブルクリンクのノルドシュライフェを、7分30秒以下で走らせたという。
「クルマのすべてがネットワークで繋がった感覚は、特別なものです。ハンドリングの正確性を自分好みに設定できるだけでなく、ステアリングの重さやエグゾーストノート、高速走行時のスタビリティ、コーナリング時の姿勢、スロットルレスポンスなど、独自の設定が可能です。本当ですよ。E63には不可能なことですから」
4ドア化による確かな利便性
彼の話は間違いないだろう。何しろ2トンもある鉄の塊を、ニュルブルクリンクで7分半以下で走らせたのだから。ポルシェ・カレラGTと同等のタイムだ。
もちろん、このクルマにとって最も重要なのは、ニュルブルクリンクのラップタイムではない。このAMG GTの大きなテーマは、4ドア化することによって、利便性を向上させることだといえる。
大人はリアシートに座れるのだろか?トランクは充分なサイズが有るのだろうか?普通の姿勢でフロントシートへ乗り降りできるのだろうか?ポルシェ911ターボとは異なり、2月の真夜中の、凍えるような寒さの交差点でも、普通に運転ができるのだろうか?
これらの疑問の答えは、すべてYES。AMGの最高責任者でもあるトビアス・ムアースは、GT 4ドアクーペに対してかなり自信を持っているようで、抜き出た性能と実用性の高さで、並み居る4シーターのGTモデルとは直接的に競合しないと考えている。
低速域ではやや落ち着かない印象があるものの、サスペンションをコンフォートモードにすれば、GTの乗り心地は非常に優れれている。トランスミッションもスムーズで洗練されているし、スポーツシートは、ライバルモデルと比較すると彫りが深いが、快適でサイドサポートも邪魔ではない。リアシートは身長180cmの大人でも充分快適に過ごせる広さがあり、ラゲッジスペースも多くのハッチバックより大きなサイズが用意されている。
最大トルクは、多くのスーパーカーを超える数値を叩き出すが、路上で恐怖を抱かせるようなことはないはず。その仕上がりは、AMG GTという名に恥じないものだといえるだろう。
他の2tクラスには真似できない走り
GTという名前を持つ以上、このクルマの持つポテンシャルは4ドア化による利便性の向上以外にもある。それを確かめに、アメリカ・テキサス州オースティン郊外の、サーキット・オブ・ジ・アメリカズへとやってきた。ハミルトンやベッテル、リカルドなどが、来月バトルを繰り広げるであろう舞台でもある。
なにしろ一般道では、GT 4ドアクーペのダイナミクス性能は丸みを帯びて感じられ、GTスポーツカーというより、ずっと民主化されたクルマだったのだ。2ドアの兄弟となるGTよりも、エキサイティングさでは若干穏やかに感じられた。しかし、一度サーキットでステアリングを握れば、考えが改められる。4ドア版でも、エキサイティングなドライビングを求めるなら、思う存分味わうことができたのだから。
この大きさのボディを持ちながらも、俊敏な身のこなしやバランス、ボディコントロール性、懐の深さなどは、まるでひと回り小さなクルマに乗っているかのよう。ただし、このような感覚を味わえるクルマは他にもあるけれど。
卓越したグリップ力やブレーキング性能も素晴らしいが、BMW M5やポルシェ・パナメーラ・ターボなども肩を並べるレベルは持っている。しかし、GT 4ドアクーペのアクセルを深く踏み込んだ時や、自然な挙動でコーナーを抜けていく感覚は、他の2tクラスのクルマには真似できない水準にある。さらに、電子制御する神の手を知覚することが、ほとんどできないのだ。
この大柄のボディでコーナリングを甘美な味わいにするためには、タイヤ4本、すべてがしっかり仕事をする必要がある。もちろん、ハイスピードからのブレーキングも同様。そこには、サスペンション・セッティングの大幅な見直しやeデフの設定、駆動トルクの各タイヤへの配分、4輪操舵システムによる回転軸の最適化などが効いてくる。ライバルモデルなら、電子制御されていることに気づいてしまうか、あるいは隠そうと必要以上のアシストが働く場面だろう。
GTスポーツカーと呼ばれるクルマ以上
このGT 4ドアクーペは、センセーショナルという言葉が相応しいほどに、サーキットを存分に楽しませてくれた。4輪駆動モードのままで、優雅なグリップ走行から派手なドリフトまで、望みのまま。しかし実際は、走行ラインを逸れないように、ドラバーが気づかない内に、様々なディバイスが絶え間なくクルマをコントロールをしているはずだ。
ステアリングホイールの感触は濃く、重さも一定しており、スロットルを大きく開けても、ハンドリングバランスはニュートラルのまま保たれる。スタビリティコントロールも機能しているが、感じ取ることは難しい。横方向のグリップも急激な変化は起きないから不安感が少ないし、この重たいボディを持ってしても、ダンピング不足も感じられない。
また、急にノーズの向きを変える場面でも、驚くほど自然に、いとも簡単に受け入れてくれる。ドリフト状態に持ち込んでも、平衡状態の感覚や操作の正確性、調整のしやすさなどは、さらに高まる印象さえある。
ほかの大きなボディを持つGTモデルと異なり、GT 4ドアクーペが熱い走りを受け入れてくれるようには見えないかもしれない。しかし、このクルマでの長距離ドライブは、乗りはじめの驚きから、距離を重ねる毎に興味が掻き立てられていき、楽しさに溢れたものに変化していくはず。
常に身近にあるコミュニケーションの豊かさは、ライバルモデルよりも優れた、クルマの持つ限界領域へ迫ることを可能にする。むしろ、GTスポーツカーと呼ばれるようなクルマ以上の、優れたコントロール性や高いバランス性を備えているといっても良いだろう。
「買い」か?
食わず嫌いはもったいない
2ドアのメルセデス-AMG GTがあるのにも関わらず、GTを名乗る4ドアが出た、ということに引っかかるのはわたしだけだろうか。しかし、クルマの備えるダイナミクス性能の高さは、確かにGTと名乗るのに相応しいものだった。4ドアボディのスタイリングが気に入らない読者でも、このクルマの備える優れた実用性と卓越したフォーマンスの二面性を知れば、好きにならずにはいられないとさえ思う。
確かにクルマは大きく重たい。でも一度走り出せば、加速感や制動感、ハンドリングは軽快でリニア。より低く、軽量なクルマに感じられるはず。4輪駆動システムも、多くのライバルよりも遥かに賢く、巧みに駆動力をマネージメントしてくれる。
2ドアの本家GTと比較すれば、4ドアのスタイリングが鈍重に見えてしまうことは仕方ないが、日常的な使いやすさでは数段上を行くはず。誤解を招いてしまうような風貌ながら、食わず嫌いにならずに、一度試してほしいモデルだと思う。きっと気に入るはずだから。
メルセデス-AMG GT 63 S 4ドアクーペのスペック
■価格 13万5000ポンド(1944万円)
■全長×全幅×全高 5059×1953×1455mm
■最高速度 315km/h
■0-100km/h加速 3.2秒
■燃費 8.9km/ℓ
■CO2排出量 256g/km
■乾燥重量 2045kg
■パワートレイン V型8気筒3982ccツインターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 639ps/5500-6500rpm
■最大トルク 91.6kg-m/2500-4500rpm
■ギアボックス 9速ツインクラッチ・オートマティック
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