■新型RXに乗って分かったRXの魅力とは
レクサスの新型「RX」は、約95の国と地域で累計350万台を発売するレクサスの絶対的なエースです。その最新モデルとなる5代目が日本でも発売が開始されましたが、実際は半導体や部品の供給不足などの問題もあり抽選販売となっています(12月22日に受付終了)。
しかし、国内向けバックオーダー解消に向け、輸出向け生産を国内向けに振り分けるというニュースもあるので、受注受付再開を期待しながらRXを紹介していきます。
【画像】こりゃスゴイ! 最上級仕様「RX500h Fスポーツ パフォーマンス」の内外装を写真で見る!(30枚)
エクステリアはCピラー当たりに先代の面影がありますが、見比べると別物です。
ボディに溶け込んだスピンドルグリル、ホイールベース延長や前後トレッド拡幅によるスタンスの良さ、ボリューム感のある面構成などにより「伸びやかさ」と「柔らかさ」を備えたスタイルに仕上がっています。
現時点ではバージョンLとFスポーツの二つのスタイルが用意されていますが、筆者としては細部やアルミホイールといったディテールを含めてRXの世界観に合っているのはバージョンLかなと。
ボディカラーも複数用意されていますが、白黒シルバーのようなアッサリ系の色よりも濃い色のほうがサイドの抑揚が綺麗に見えると思います。筆者のお勧めはソニックカッパーで、これまでのレクサスにはない温かみのある色だと感じました。
インテリアはNXから採用される新世代レクサスのコクピットデザイン「TAZUNA Concept」を水平展開していますが、メーターフードからドアトリムまで連続的につながる造形で奥行きや水平方向の伸びやかさを強調したデザインで、スポーティさよりもエレガントさを重視した印象です。
しかし、14インチの大型センターディスプレイはそのデザインを少々スポイルさせている感も。
タッチパネルの操作性を重視なのは理解していますが、何か革新(例えば、必要がない時は半分収納されるとか)が必要な気もしています。
また、メーター周りのデザインもRXのインテリアとのバランスを考えるとチープな印象が。筆者はメーターをエンターテイメントに使う必要はないと思っていますが、あまりに素っ気ないデザインは改善項目の一つでしょう。
ドライブモードスイッチはNXのダイヤル式からタッチパネル内に移動しています。
ワンアクションで呼び出せないのは問題ですが、右側のステアリングスイッチにカスタム機能で追加可能になったので良しとしましょう。
さらに細かい話になりますがウインカー作動音もNXから変更(事務的な音ではなくなった)、これはNXにも水平展開したほうがいいと思います。
筆者がNXで指摘していたソフトパッドと樹脂部品の質感の差や各部の隙間なども整えられており、個人的にはドアトリム上部のトリムの使い方などはユニークだと感じました。
ドアノブはNX同様にeラッチを採用。開けるときはいいのですが閉めるときに気密性が高いのか半ドアになりやすく、スマートな開閉のためにもイージークローザーがあると便利でしょう。
ちなみにドアの開閉音がNXより音質が良く感じましたが、ドア部に減衰マスチックを採用した効果が大きいそうです。
走りはどうでしょうか。
街中ではサイズを感じさせない扱いやすさ、高速では抜群の安定感と優しい乗り心地、ワインディングではサイズを感じさせない身のこなしと一体感のあるハンドリングは、以前アメリカで乗ったときと印象は同じ、いやさらに洗練/精緻になって印象を受けたので恐らく、量産直前まで作り込みをおこなっていたのでしょう。
今回は現時点で設定される3つのパワートレイン全てに試乗できました。
PHEVの「RX450h+」は、バージョンLのみの設定ですが個人的にはRXのキャラクターがもっとも体現されたモデルだと感じました。
パワートレインはEVモードではシステムからのノイズはもちろんロードノイズも見事にシャットダウン、本当に音もなくスーッと走り始めます。
動力性能も2トン近い重量を軽々と走らせる力強さや瞬発力を備えています。HVモードはアクセル全開時に少々ザラついたノイズが顔を出しますが、常用域はエンジンが完全に黒子に徹しており静粛性はNX以上に高いレベル(エンジンがより遠くにある印象)を実現しています。
フットワークは上記の印象に加えて、よりストローク感のあるサスセットとドシッとしているのに雑味がなくスムーズなステアフィール(実はプロアクティブドライビングアシストの新機構「操舵アシスト」も寄与)とのバランスは、RXの「ラグジュアリーSUV」というキャラクターに恥じない仕上がりといってもいいでしょう。
恐らく、現時点でもっとも販売ボリュームが多いガソリン車の「RX350」はバージョンL/Fスポーツが選択可能ですが、パワートレインとシャシーのマッチングはFスポーツが上です。
2.4リッターターボはフラットトルクと伸び感のあるフィーリングと8速ATの巧みなシフト制御により、実用ユニットにしておくのは勿体ないくらいの実力です。
このエンジンのウィークポイントである濁音の多いサウンドもNXよりも抑えられているのも嬉しいポイントといえるでしょう。
フットワークはボディサイズや車両重量を感じさせない軽快な動きが印象的。クルマの無駄な動きを抑えたセットアップながらも、常用域でFスポーツである事を忘れてしまうくらいの快適性も備えられています4WDシステムはNXと同じ電子制御式ですが、NX以上に四駆を感じさせないスッキリしたフィーリングに仕上がっています。
■期待の「RX500 Fスポーツパフォーマンス」はどんな感じ? 「RXを壊す」ことはできた?
そして、RXのフラッグシップとなる「RX500 Fスポーツパフォーマンス」は専用パワートレインとなる2.4リッターターボ+DIRECT4を搭載しています。
具体的にはフロント:2.4リッターターボ+1モーターパラレルハイブリッドシステム+6速AT(クラッチ機構付)/リア:モーター(eアクスル)を組み合わせた電動AWDです。
その印象はズバリ「気持ちいいハイブリッド」で、システム出力は371psで2100kgの車両重量を感じさせないパフォーマンスはもちろんですが、THSII(トヨタハイブリッドシステム)にはない「小気味よさ」、「伸びの良さ」、そして「ダイレクト感」が備えられています。
トルコンレスATがもっとも苦手とする微速のコントロールはアメリカで乗ったときは少々気になりましたが、改めて乗ったらほぼ問題ないレベルで一安心。
エンジンサウンドは人によって過剰という評価もあるようですが、筆者は逆にこれまでのハイブリッドにはなかったエモーショナルなサウンドでアリかなと感じました。
フットワークはRXの他グレードとはちょっと別格な印象で、「これはあの大きなRXなのか?」というくらい、クルマが小さく・軽く感じました。
コーナリング時の姿勢変化も最小限でコーナーの曲率に合わせて4つのタイヤのグリップ力が最適になるようにコントロールして旋回するので、とにかくアンダーステア知らずのオンザレール。
恐らくDIRECT4による駆動力制御とDRSの相乗効果だと思いますが、制御モノにありがちな「機械に曲げられている」感覚はなく、まるで「運転が上手くなった?」と錯覚するようなコントロール性と自在性があります。
実はサーキットでハイスピード領域でも試乗しましたが、そんな状態でもシッカリ走れるレベルに仕上がっています。
乗り心地は常用域では他グレードよりも僅かに引き締められた印象ですが、バネ上のフラット感は一番高くスポーティグレードとして考えれば快適性は十分以上です。
このように各モデルを詳細に見ていくとさまざまな特徴がありますが、実はRXの本当の良さはそれらを声高らかに主張していない所にあります。
要するに「走りは良くて当たり前、その先は?」というところです。
それは何なのか。筆者はどのRXに乗っても「ゆとり」、「重厚」、「優しさ」を感じました。
かつてのレクサスは「味の前にやることあるでしょ」でしたが、NX/RXをはじめとする次世代レクサスはTNGAによる基本性能の底上げ(課題はまだまだありますが)で、走りの「味」がより明確に表現できるようになったのでしょう。
レクサスのブランドホルダーでもある豊田社長は、レクサスを「素のままの自分に戻れる、本物を知る人が最後にたどり着くブランド」と語っていますが、その本質を筆者なりに解釈すると、「おいしい白飯とお味噌汁」なのかなと。
シンプルなのに味わい深く、飽きがこない、そしてどこかホッとする「ニッポンの味」。
それこそがレクサスが目指すべき道だと考えていますが、RXはそのような領域に一歩進み始めたのではないでしょうか。
※ ※ ※
新型RXの開発時に豊田章男社長は「RXを壊せ!!」と語ったそうですが、その結果「RXらしさ」は増していると感じました。
その結果、NXとは単なるサイズの大小ではなく、兄貴分としてのプレステージ性を備えた1台にと成長できたと思っています。
そしていいクルマだからこそ、多くの人が普通に買えるような環境をできる限り早く作ってほしいと願っています。また、もっとも売れ線となるであろうRX350h(ハイブリッド車)の登場も待っています。
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