ダイムラーとの提携事業は株式売却後も継続するというルノー。しかし、ルノー車は日産車とのプラットフォームやパワートレーンの共用化が進められている。そのため、ルノーのエントリーモデルであるトゥインゴは、次期モデルでは現行モデルのようなスマートと姉妹車のRRレイアウトではなくなることも考えれる。
リアエンジン&リア駆動という日本ではほかのコンパクトカーにはない個性が光るトゥインゴ。このRRレイアウトは現行モデルで最後となるのか?
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現行型トゥインゴの魅力、そして今後の動向に、モータージャーナリストの石川真禧照氏が迫った!
文/石川真禧照
写真/ルノー・ジャポン、ベストカー編集部
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■トゥインゴはカングーと同じくらい人気の売れてるクルマ
ルノーのスモールカー、トゥインゴは、現行モデルで3代目。2014年にフルチェンジし、日本では2016年から販売されている。
現行型トゥインゴ。コンパクトボディにRRレイアウトと、街中でバツグンの取り回し性を発揮する構成だ
写真のグレードはGT。2本出しマフラーがスポーティさをアピール
販売のほうも好調で、「2020年の販売台数はカングーとほぼ同じ位」(ルノー・ジャポン広報)。カングーといえば日本のルノー車販売ではベストセラー。トゥインゴはそのカングーと同じ程度売れている人気車種ということになる。
実際に2021年に入ってからだけでも2月に3種類のボディカラーが設定された「バイブス」、5月には装備を充実させた「インテンス」「インテンス キャンバストップ」、マニュアルミッションの「S」の3車種を発表している。
「S」は車両本体価格も189万円と、輸入車のなかでもっとも低価格なクルマでもあり、これも人気のポイントになっている。
■突然の暗雲
しかし、2021年に入ってから、ショッキングな事件がおこったのだ。
ルノーは日産と資本提携したあと、2010年にダイムラー(メルセデスベンツ)と業務提携している。この時は共同で車両開発するなどの計画があった。
その時のひとつに次期スマートとトゥインゴという両社のスモールカーを共同で開発しようという動きがあった。スモールカーというのは開発コストがかかる割に、車両価格を高く設定できないので、利益幅が小さい。それを共同で開発することで、少しでも原価低減できれば、ということだった。
2014年に発売された現行トゥインゴは、それまでのFF(フロントエンジン、前輪駆動)をやめ、RR(リアエンジン、後輪駆動)を採用した。これはスマートと同じ方式。ここでルノーとメルセデスの協業が実現した。
トゥインゴとエンジンやシャシーなどのベースを共用しているスマートフォーフォー。現在新車は購入できず、欧州ではスマートEQという電気自動車になって販売されている
登場したトゥインゴは、ルノーのかつての名車「ルノー5(サンク)」をオマージュしたスタイリングや、初の4ドア+リアゲート付のコンセプトがユーザーに受け入れられた。
順調にメルセデスとルノー日産連合の提携がスタートしたかに見えた。日産もスカイラインにメルセデス製のエンジンを搭載した。
しかし、そこからあとは、ほとんど動きがなくなってしまった。2021年に入り、両社の提携は解消することが決まったのだ。
そうなると気になるのはトゥインゴの将来だ。
■初代のスタイリングは「トゥデイ」リスペクト
トゥインゴは1992年にルノーがそれまでの「4(キャトル)」に代わる”足”として、投入したスモールカー。初代は多彩なシートアレンジやコンパクトなエンジン、ユニークなスタイリングで、欧州でも人気車種になった。
余談だがそのユニークなスタイリングは、1983年から1998年まで生産されていた日本の軽自動車「ホンダトゥデイ」を参考にしたものと言われていた。しかもルノーはそれを否定しなかったのだ。この初代トゥインゴは、マイナーチェンジをくり返しながら、2007年まで生産されるロングライフモデルにもなった。
1992年に発表された初代トゥインゴ。そのスタイルはホンダの初代トゥデイを参考にしたものと言われている
2代目は2007年に発表され、クラス上のルーテシアのシャーシに手を加えて、開発された。スタイリングも大きく変わったが、3ドアだけのスモールカー(Aセグメント)だった。
2代目の特徴は、限定車を次々に出して、ユーザーの関心を引きつけたこと。「ゴルディーニ」などかつてのルノースポーツのブランドを実用化したモデルも登場している。
2007年に発表された2代目トゥインゴ
日本でも右ハンドルやマニュアルミッション車などを設定するなど販売を展開したが、初代ほどの人気は得られなかった。
そこで登場したのが3代目のトゥインゴだった。このクルマは先ほど説明したように、日本ではルノー車のベストセラーカー、カングーに並ぶヒット商品となっている。そのヒット商品も、ベースになるシャーシの共同開発相手がいなくなってしまうというのだ。
ルノー・ジャポン広報は「現時点では生産中止になるとかの話しはいっさい出ていません。あと2~3年はこのままだと思います」とコメントしている。
■次期型トゥインゴの開発情報は出ていない
しかし、今年1月、ルノーの新しいCEOに就任したルカ・デメオ氏のカンファレンスでの資料を見てみるとショッキングな事実が判明した。
そのカンファレンスで、ルノーの将来を見据えた車種開発の記述があったのだが、そのなかになんと、トゥインゴの名前がなかったのだ。やはり、トゥインゴは消滅の運命にあるのか。人気車種なのに、なぜ開発の話しが出てこないのか。現実は厳しいのだ。
欧州に取材をしてみると、意外な事実がわかった。
トゥインゴの属しているAセグメントは、ボディもコンパクトで車両価格も安い。と思われているのだが、実は車両価格はそう安くはないという。ボディはコンパクトでも開発費用はかかり、内装などにもお金をかけないと、ユーザーは見向きもしてくれない。
その結果、1クラス上のBセグメントのベースモデルと、大差のない車両価格になってしまっているのだ。購入する側からすれば、同じような価格なら、ボディが大きく、室内や荷室も広い1クラス上のクルマを購入するというのは常識。
そういうパターンが多くなっているようなのだ。これはルノーだけでなく、プジョーやシトロエンも同じ。Aセグメント全体が意外に売れていないのだ。
おしゃれで、カワイクて、コンパクトなトゥインゴだが、欧州の販売戦線では苦戦を強いられている。しかし、日本市場での販売は好調なので、次々と魅力的なバリエーションが発売される。
5月13日に140台限定車のトゥインゴ インテンス リミテッドも発売されている
日本では車両価格も200万円前半のモデルも多く、買いやすい輸入車といえる。しかし、本国でのポジションは意外に厳しいという。
魅力的なトゥインゴが消滅の危機にある。スモールカー購入を考えている人は一度、試乗してみてほしい。その楽しさのトリコになってしまうに違いない。
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みんなのコメント
トゥインゴ(RR)だったり、アルピーヌ(MR)だったり、
こういった希少車種は残していって頂きたいですね。