新車試乗レポート [2025.04.15 UP]
70年続くクラウンというラグジュアリーカー【九島辰也】
文●九島辰也 写真●トヨタ
クラウン、70歳。“国産最長寿”のヒミツに迫る企画展 トヨタ博物館
「いつかはクラウン」で知られるトヨタクラウンが70周年を迎えました。初代は1955年というからかなり前の話。終戦から10年しか経っていないことを鑑みれば、戦後復興からの急成長が読み取れます。日本における自動車産業発展の足がかりになった一台といったところでしょう。
初代クラウン(1955年)
その頃海外はというと、1955年はシトロエンDSが誕生したり、シボレーが初めてV8エンジンを市販車に搭載したりした年となります。各社まだまだ道半ばといったところ。確か総合自動車雑誌で知られるモーターマガジン誌はこの年創刊だったかと。老舗です。
なぜそんな話をするかというと、先日クラウンエステートの試乗会に参加してきたからです。16代目となる現行型は4つのモデルで構成されますが、その最後のピースがこのエステート。これでクロスオーバーからスタートした布陣は、スポーツ、セダン、エステートでコンプリートしました。
16代目クラウン(右から)クロスオーバー、スポーツ、セダン、エステート
それにしても70年間で16世代というのはすごい。これだけ長い期間同じネーミングで続くモデルはわずかしかありません。前述したシトロエンDSはすでに姿を消しているし、1957年スタートのフィアット500も1959年スタートのMINIも一度途絶えてから生まれ変わって現在に至っています。
続いているという意味では1953年リリースのコルベットはそうですが、現行型はC8と呼ばれる8代目。スポーツカーという特殊なカテゴリーなので、モデルサイクルは長いようです。もちろん、それもすごいことに違いありません。
ではクラウンエステートの話を少ししたいと思います。このクルマは“エステート”というステーションワゴンを意味する名前ですが、通常のそれとは異なります。全高は1625mmとクロスオーバーよりも高い。言ってしまえば、SUVに近いサイズです。逆に言えば、背の低めのSUVと言ったところでしょう。スバルアウトバックよりもカタログ上は低くなりますが、あの分厚いルーフレールを除けば逆転することになりそうです。
背の高いエステートにした理由はいろいろあります。SUVがデフォルトとなりつつある自動車業界のトレンドもそうだし、アウトドアブームも一役買っていると思われます。それに背の低いステーションワゴンが売れるかと言えば、それも疑問。かつてはいろんなメーカーがラインナップしていましたが、だいぶ姿を消しました。ジャーマンスリーにはありますが、それが売れている話は耳にしません。
クラウン(エステート)
他にも理由はあります。クラウンセダンのリアにカーゴルームをつけるのは設計上無理だったからです。FCVでは水素のタンクが、HEVではバッテリーがリアシートの後ろに積まれるのでスペースがありません。クラウンセダンにトランクスルー機構がないのはそれと関係します。つまり、セダンだけプラットフォームが別なんです。エステートはクロスオーバー、スポーツと同じプラットフォームを採用します。
そんなクラウンエステートのパワーソースは2つあります。2.5リッター直4ガソリンエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドと、同エンジンを軸にさらに電池の量を増やしたプラグインハイブリッドです。後者のウリはEV走行モードの距離。カタログ上89キロとなります。実際に走ってみてもそれは感じられます。新東名高速道路を制限速度の時速120キロで巡航していてもなかなかエンジンはかかりませんでした。EV走行モード恐るべし。
ところで、冒頭に書いた「いつかはクラウン」ですが、いつ頃のキャッチフレーズか覚えていますか? 1983年からの7代目クラウンで使われたそうです。テレビCMから流れてきたこのセリフは今も残っているんですから秀逸ですよね。コピーライターはいい仕事をしました。
7代目クラウン
12代目クラウン
これ以降で印象的だったのは「ZERO CROWN(ゼロ クラウン)」。2003年からの12代目で使われたテーマです。“走り”を強調したクラウンですからね。今振り返ってもここは大きな転換期だったと思います。
ということで、70年経ち16代目まで引き継がれたクラウンですが、これからはどう進化するのでしょう。想像するとワクワクします。でもセダンはもう終了かな。ちなみに16代目のテーマは「DISCOVER YOUR CROWN(ディスカバー ユア クラウン)」。4種類ありますからね。そうなりました。
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