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異色の軽ハイトワゴン スライドドアの実力者 ムーヴキャンバス大人気の理由

掲載 更新 28
異色の軽ハイトワゴン スライドドアの実力者 ムーヴキャンバス大人気の理由

 今や軽自動車はスーパーハイトワゴン一色と言っていいほど売れている。それをけん引しているのは、ホンダN-BOXにほならない。

 そのいっぽうで、かつて一世を風靡したワゴンR、ムーヴに代表されるハイトワゴン軽自動車は販売面で苦戦が続いている。

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 そんななか、ムーヴの派生車として登場したムーヴキャンバスが独自のポジションを確立して、本家ムーヴの販売を凌駕する人気となっている。決して目立ちはしない、行ってみれば影の実力車といったところだ。

 ムーヴの派生車はこれまでかわいい路線できたが、それとは一線を画すムーヴキャンバスが人気の理由について、渡辺陽一郎氏が考察する。

文:渡辺陽一郎/写真:DAIHATSU、SUZUKI

【画像ギャラリー】パステル調からシックなカラーまで15色をラインナップ!! ムーヴキャンバスはボディカラーによってイメージが激変!!

タントの苦戦でダイハツとスズキが熾烈なトップ争い

2019年7月にDNGA採用第1弾として軽自動車初技術を満載して登城したタントは、イマイチ突き抜けた感がなく苦戦が続いている

 軽自動車の販売ナンバーワンメーカーはダイハツだ。以前は1973年以来、スズキが1位だったが、2007年(暦年)にダイハツがトップに立った。この時から、2014年以外は、ダイハツが軽自動車販売の首位を守り続けている。

 ところが今年はどうなるかわからない。2020年1~6月の軽自動車販売累計台数を見ると、ダイハツが24万1237台、スズキは24万992台だ。ダイハツが1位だが、スズキとの差は245台だから、ほぼ同じ販売実績になる。

 ちなみに2019年1~6月の台数は、ダイハツが1万5448台多かった。それ以前は2万台の差を付けていたこともある。

 今年はコロナ禍の影響も受けたから、この販売実績が本来の商品力や販売力を反映した結果とは限らないが、接戦であることに変わりはない。

 ダイハツとスズキが僅差になった一番の理由は、ダイハツタントの伸び悩みだ。2019年7月に現行型へフルモデルチェンジされたので、それ以降は売れ行きを急増させると思われた。

スズキの軽自動車をけん引するのは今やワゴンRではなく、スーパーハイトワゴン軽自動車のスペーシア/スペーシアカスタム/スペーシアギアだ

 しかし2019年10月以降の売れ行きは、11月を除くと、対前年比が横這いだったり、減少している。

 その結果、通常はフルモデルチェンジの直前に用意するような格安の特別仕様車をコロナ禍の前に設定した。稼ぎ頭が挫折したダイハツの困窮ぶりがうかがえる。

本家ムーヴを凌駕する販売をマーク

本家ムーヴを凌駕する人気モデルとなっているムーヴキャンバスは、現在の軽自動車のなかでは非常に個性的なコンセプトで作られている

 この厳しい状態で、今のダイハツを陰で支えるのがムーヴキャンバスだ。全国軽自動車協会連合会の販売統計では、ムーヴに含まれて発表されるが、実際はムーヴ全体の50~55%をムーヴキャンバスが占める。

 2020年1~6月の速報値によると、軽自動車の販売1位はN-BOXで10万1454台、2位はスペーシアで6万5323台、3位はタントで6万2253台だった。4位のデイズ(先代デイズルークスを含む)は5万5239台で、5位がムーヴの4万8283台になる。

リアコンビはクリアタイプの中に赤丸をいれるなどして、新しさとレトロ感が同居している。ユーザーのデザインに対する満足感は高いという

 このムーヴの販売台数の内、ムーヴキャンバスは約2万5000台を占めた。1カ月平均なら4200台前後だから、コロナ禍の影響も考慮すると、発売から約4年を経ながら立派な売れ行きだ。

 アルト(ラパンを含む)は2020年1~6月に3万570台、1カ月平均で約5100台を販売しており、ムーヴキャンバスはこれに次ぐ台数になる。

ハイトワゴン+両側スライドドアはムーヴキャンバスのみ

 ムーヴキャンバスの全高は1655mmで、ムーヴと同等だが、後席側のドアはスライド式だ。

 そして今のスライドドアを備えたタント、N-BOX、スペーシア、ルークスなどは全高がすべて1700mmを上まわるため、1700mm以下でスライドドアを備える軽自動車はムーヴキャンバスのみになる。

スーパーハイトワゴン軽自動車に必須の両側スライドドアをハイトワゴン軽自動車で唯一採用しているのがムーヴキャンバスで、それだけで存在価値がある

 このほかにもムーヴキャンバスの特徴は多く、フロントマスクには楕円形のヘッドランプを装着してグリルの開口部は小さい。フロントウインドーの角度は直立するが、リアゲートには少し傾斜を付けた。ボンネットやドアパネルは、丸みがあるように見える。

 N-BOXやスペーシアの開発者は、「スライドドアを備えた背の高い軽自動車は、車内の広さを外観でも表現する必要がある」と口をそろえる。

 スペーシアの前身となるパレットは、ボディサイドを上に向けて絞り込み、台形風のスタイルとして安定感を演出した。

パステル調のボディカラーをはじめ、若い女性をターゲットとしたボディカラーが豊富にラインナップされている。背が高すぎないもの人気の要因

 一般的なデザイン手法だが、「車内が広そうに見えない」と言われて売れ行きも伸び悩み、車名をスペーシアに変更してボディを直線基調に改めている。

 その結果、売れ行きは伸びたが、外観はどの車種も似ている。特にエアロ仕様のタント/N-BOX/スペーシアのカスタム、ルークスハイウェイスターは、見分けが付かないほどだ。こういった定番デザインの隙を突いたのが、ムーヴキャンバスであった。

ムーヴキャンバスはセンターメーターを採用。ボディカラーに合わせてインテリアのアクセントカラーが違うのもポイントだ

デザイン、ボディカラーへのこだわり

ムーヴの派生車第1弾は3代目ムーヴをベースとしたムーヴラテ。2004~2009年まで販売された。丸いヘッドライトが愛玩動物を思わせる

ムーヴの派生車第2弾は4代目ムーヴをベースとしたムーヴコンテ。2008~2017年まで販売された。コンテデビュー時にカクカク・シカジカが登場

 外観は可愛らしさと併せてクラシックな雰囲気も併せ持ち、丸みのある形状は、いわゆるワーゲンバス(往年のフォルクスワーゲンタイプI/ビートルをベースに開発されたワンボックスボディのタイプII)に何となく似ている。

 可愛らしくても、以前のムーヴラテのような愛玩動物風ではなく、落ち着きも感じる。このような性格の軽自動車だから、エアロ仕様は用意されず、ターボエンジン車も選べない。標準ボディのノーマルエンジンのみだ。

どことなくレトロに見えるのは、VWバスを彷彿とさせるデザインだから。楕円形のヘッドライトも今見てもオシャレ感を醸し出している

 個性的な外観を際立たせる外装色に、ストライプスカラーも用意した。一般的な2トーンカラーはボディの上側と下側を別々の色彩にするが、ストライプスカラーはドアパネルやフェンダーの中央部分だけを別の色彩に分けている。上下は同色になるのが特徴だ。

実用性が高くユーザーの満足度が高い

 そこでムーヴキャンバスの狙いを開発者に尋ねた。

「最近は晩婚化が進んだ影響もあり、就職している娘と両親の同居する世帯が増えた。1台のクルマを平日は母親、週末は娘が友人と遊びに出かけるのに使う。そこでムーヴキャンバスを開発した」という。

スライドドアの利便性に慣れたユーザーが多くなってきたこともあり、ハイトワゴン+スライドドアを採用して大成功

「後席の下には、引き出し式の収納設備が備わる。引き出した状態で中敷きを持ち上げると、収納設備がバスケット状になって上に置いた買い物袋が倒れない。L以外の全車に両側スライドドアの電動機能を採用したので、買い物を済ませてムーヴキャンバスに戻ったら、右側のスライドドアを開けて買い物袋を置く。電動スライドドアを閉めながら運転席に乗り込めば、動作もスムーズで簡単だ。これは主に母親向けの機能になる。また前後席ともに広く、デザインもオシャレだから、娘が友達3人を乗せて出かける時も快適で楽しい」。

室内は闇雲に広さを追求するのではなく、収納スペースを工夫することでスペース以上の実用性を持っている。これも人気の要因だ

中高年層からの需要も多い

 ユーザーの反響を販売店に尋ねると以下の返答だった。

「最近のお客様は子供の頃から自宅にミニバンがあり、スライドドアに慣れている。ただしタントでは天井が高く洗車もしにくい。ここまで広い車内は必要のないお客様もいる。そこでスライドドアを備えた別の軽自動車が求められた時、ムーヴキャンバスを提案すると購入していただけることが多い」。

パステルカラーがあるいっぽうで、ブラック、ベージュ、ダークシルバー、ブラウンといったシブめの色もあるため、幅広い年齢層に対応する

 ムーヴやタントとの違いも尋ねた。

「後席が横開きドアのムーヴは、価格も割安だから、法人を含めて実用重視のお客様が多い。タントは標準ボディは子育て世代、カスタムも比較的若いお客様が若い。その点でムーヴキャンバスは、ボディカラーも豊富で、落ち着いた色彩を選べる。子育てのイメージもなく、中高年齢層の男性が買うことも多い。またターボがないので、街乗り向けになり、その意味でも中高年齢層のニーズに合う」。

ムーヴはモデル末期にあり、2020年末にフルモデルチェンジすると予想。落ちた販売をムーヴキャンバスが絶妙にカバー

好調に売れるクルマのあり方

 ムーヴは実用重視、タントも子育て世代のツールという印象だが、ムーヴキャンバスは大人っぽいセダン的な感覚で購入されているらしい。そのために男女を問わず年齢層も幅広い。

 ムーヴやタントがカバーできない顧客に好まれ、堅調に売れているわけだ。またスライドドア装着車の人気が高い割に、選択肢は限られることも、ムーヴキャンバスが売れる要因だ。

ムーヴキャンバスはボディカラーにこだわっていて、写真は特別仕様車として販売されているブラックアクセントカラー。ホワイトアクセントカラーもあり

 ムーヴキャンバスの販売台数は特に多くないが、商品コンセプトや戦略の立て方は、ダイハツのナンバーワンといえるほど巧みだ。スズキでいえばハスラーに似ている。

 従ってムーヴキャンバスの発想を参考にすると、好調に売れる新しいクルマのあり方が見つかるかも知れない。それはダイハツ対スズキの販売競争にも影響を与えるだろう。

 2020年秋にはホンダからN-ONEも登場する。定番モデルだけが売れる軽自動車市場に、新しい風が吹くかも知れない。

東京オートサロン2020に出展されていたホンダN-ONEカフェレーサーコンセプト。ほぼこのままで2020年秋に市販されるという

【画像ギャラリー】パステル調からシックなカラーまで15色をラインナップ!! ムーヴキャンバスはボディカラーによってイメージが激変!!

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みんなのコメント

28件
  • ヤリス、ノートの方が安いんだな…
  • 俺これマジでほしいと思ったことある。
    タントなんかと比べ、少々窮屈ではあるが丁度いい感じ。
    もう少し安ければいいけどなぁ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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