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「俺たちのホンダ」らしさ なぜ薄れた!? 最もホンダらしかった挑戦車 6選

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「俺たちのホンダ」らしさ なぜ薄れた!? 最もホンダらしかった挑戦車 6選

 クルマ好きに言わせれば、今のホンダ車は「らしくない」。そして「つまらない」。さらに付け加えると「デカすぎる」、「高すぎる」。そういうことになる。

 もちろん、昔のホンダを知らない人には、そういう感覚もないわけだが、初代NSXの熱狂を知っている世代にとって、つまり現在の50代以上は、少なからずそういう感覚を持っているんじゃないだろうか。

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 では、ホンダらしい車ってどんなものだったのか?

 とりわけ“らしさ”を感じさせる6台の歴代ホンダ車を題材に、最新モデルに薄れつつあると言われるホンダらしさを改めて掘り下げてみたい。

文:清水草一
写真:HONDA

 かつてホンダは、国産の“ガイシャ”だった。

 日本的な呪縛にまったくとらわれず、自分の得意分野に特化して自由にのびのびと車を作り、それを「欲しければ売ってあげます」という感じで売っていた。ホンダらしいホンダ車には、こんな形容詞が思い浮かぶ。

「怖いもの知らずの挑戦者」
「技術的な唯我独尊感」

 実はこれ、現在のスバルとマツダにかなり近い。

 一方、現在のホンダは、大成功したがゆえに巨大になり、なにかやらかしてくれる挑戦者から、受けて立つ王者に変身したのです。

 では、かつてホンダが挑戦者だった時代の、ホンダらしい車たちを、独断でいくつか挙げてみよう。

S500は「ホンダスピリットの原点」

僅か1年足らずの生産期間ながら未だに伝説の名車として名高いS500。二輪をバックボーンに持つホンダらしい1台でS600に後を譲り絶版となった

 ホンダ初の四輪車になるはずだった車。実際には軽トラックのT360のほうが2か月先に発売されたが、最初の四輪車としてオープンスポーツカーを選ぶというのがいかにもホンダらしい。

 この選択は、四輪の新規参入者であるホンダが、持てる技術や個性を生かせる場はこれしかない、という見切りだったわけだが、その見極めが素晴らしい!

 搭載された500ccの4気筒4ストロークのDOHCエンジンは、8000回転で40馬力を発生。当時の四輪車としてはありえない高回転高出力型だったが、それは二輪で磨いた技術を流用しただけ。チェーン駆動も同様だ。

 1964年に発売されたS500はS600、S800へと進化した。S500こそホンダスピリットの原点であることは間違いないでしょう。

初代シティは「若者の夢を実現した」

全長3.4m、全幅1.6m級のコンパクトボディで背の高い独自のルックスやパワフルな「ターボII」、カブリオレでも話題をまいたシティ。1983年当時の価格は「ターボII」でも123万円だった


 まさにホンダらしい破天荒な車だった。

 短い全長に、高い全高を組み合わせたトールボーイスタイルの元祖というのもすごいが、そこに100馬力のターボエンジンをブチ込んだ「シティ・ターボ」をリリース。

 さらにはオーバーフェンダーやスクランブルブースト機構を持つ「ターボII」(ブルドッグ)に発展。後にカブリオレも追加された。

 当時の若者の夢だった「速さ」や「オープンカー」を、若者にも手の届く価格で実現したわけで、“俺たちのホンダ”時代の代表作と言えるでしょう。

 当時、友人のシティ・ターボを運転させてもらったことがありますが、ショートホイールベース+固められた足は、路面のギャップでハネまくり、それでもターボの加速で突進すれば、誰でも死を間近に感じられるという、それはそれはホンダらしいやんちゃすぎるクルマでした。

「いかにも挑戦者らしい」ホンダ1300

当時、軽と二輪を主力としていたホンダが初めて挑んだFF小型乗用車のホンダ1300(写真はクーペ)

 1969年に発売されたホンダ初の小型乗用車。当時のライバルはカローラやサニーだが、それらとは180度異なる、FFレイアウトと空冷エンジンを採用していたのがすごい。

 空冷については、本田宗一郎氏の「水冷より空冷のほうが単純で部品点数が少ないんだから絶対にいい」という空冷信仰によって無理矢理導入された。宗一郎さんの空冷信仰は初期のF1でも大炸裂しましたが。

 性能は、100馬力~115馬力と、相変わらずの高回転高出力型で、最高速も185km/hとライバルを寄せ付けなかったが、トラブルが多かったこともあって販売は伸び悩んだ。

 1970年代にそのステアリングを握った経験のある友人から、「(当時としては)ものすごく速かったけど、ものすごいアンダーステアで、とにかく真っすぐ走るしかなかった」と聞きました。

 なにせ当時のFF車だし、しかも無理矢理の空冷化でエンジン重量がかさんでしまったからねぇ。そういう車を世に出してしまうところが、いかにも挑戦者ではなかろうか。

「ホンダらしい自信」に満ち溢れていた初代NSX

言わずと知れた日本初のスーパーカー、初代NSX。1990年発売時の価格は800万円(MT車)で日本車としては最高価格。その性能と圧倒的な扱いやすさでスーパーカーの常識を塗り替えた

 これについてはいろいろ言われているので、詳しくは割愛しますが、私が後に開発主査の上原繁さんに聞いて驚愕した部分のみ書かせていただきます。

 NSXのミッドシップは、もともとシティコミューターとして研究が始まったというのです。つまり、後のミッドシップ軽・ホンダZみたいなものでしょうか?

 でも、やっぱりあんまりコミューターには向かないということで(実際Zも大失敗)、途中で狙いをスーパーカーに方向転換したというのだから恐れ入る。

 オールアルミボディの導入もなにもかも、その過程で必要な技術ってことで後から決まっていったそうです。

 つまり、当時のホンダは、まったく恐れを知らない唯我独尊のメーカーだったのだ! フェラーリやポルシェなにするものぞ、俺たちが作れば軽くそれを上回れるという自信に満ち溢れていた。

 なにしろ、シティコミューターには向かないからスーパーカー作ろうと思っちゃうんだから!

初代シビック「発明こそホンダの真骨頂を体現」

CVCCエンジンの搭載で名を馳せた初代シビック。サイズや価格の手頃さもさることながら、その革新性が現行モデルにはない魅力だろう

 シビックというより、CVCCエンジンの発明こそがホンダの真骨頂だった。世界で初めて米マスキー法のクリアを実現したのは、副燃焼室を持つ希薄燃焼システムだが、その発想のベースは、F1で培ったレーシングテクノロジー!

 当時のレーシングエンジンは、混合気を濃くするほどパワーが出たので、その逆をやれば低公害エンジンができるはずだという、逆転の発想だった。そんなこと、F1をやってなきゃわからなかったわけで、さすがホンダ。

 だいたい、四輪への参入と同時にF1も始めてしまうという大胆すぎる発想そのものが、ホンダスピリットであり本田宗一郎そのものだったわけですね。涙が出ます。

 実はワタクシ、初代シビックも運転したことはないのですが、初代アコードはあります。

 CVCCエンジンは眠く、ホンダマチックはさらに眠く、ボディもユルく、いろんなところがすぐサビるという、当時のホンダ車に共通する欠点だらけの車ながら、どこか都会的で軽快でシャレた雰囲気があり、魅力があったものです。

「世界をリードしたVTECの祖」4代目シビック

1987年発売の4代目、通称“グランドシビック”。SiRには歴代初となるVTECエンジンを搭載

 ホンダの真骨頂は、やっぱり高回転高出力。ホンダの持つレーシングテクノロジーを市販車に応用し、リッター100馬力を実現したのがVTEC(可変バルブタイミング)だった。

 フィーリング的にも、カムが切り替わると「クオ~ン」と高く吠え、当時のクルマ好きを虜にした。

 VTECエンジンは、まずインテグラに搭載されたが、より小型軽量のシビックにも積まれたことで、これが筑波サーキット最速のマシンとなる。

 当時これは大変重要なことでした(遠い目)。私も後にコレ(4代目シビックSiR)を中古で買って走行会仕様にしたけれど、ミニサーキットでは無敵でした。

 この頃、ホンダVTECエンジンの魅力は、ライバルを完全に置き去りにしていた。世界をリードするホンダのVTEC、それ以外のエンジンは全部カッペ、という空気感すらあった。「俺たちのホンダ」独走期ですね。

◆  ◆  ◆

 その他ホンダらしい車はいろいろあるけれど、初代フィットのセンタータンクレイアウト以降は特に独創的なものはなく、ハイブリッドや燃料電池ではトヨタを追い、EVでは日産を追うなど、どちらかというと2番手メーカーとなっている。

 やっぱりホンダスピリットは、フロントランナーであってこそではなかろうか。ユーザーを置き去りにするくらい突っ走ってくれないと、かつてのホンダらしさの復活はないだろう。

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