1年待ちは当たり前、下手すればランクルのように5年先なんてことも増えてきた最近の納車時期。最大の要因はコロナ禍による工場稼働停止など、さまざまな事象が重なってしまっているのだ。
車検を機に新車を! なんてことは叶わず、予定をしっかり立てて買う必要があるなど、購入の仕方も変わりつつある。だが、トヨタのサブスク“キント”は人気車種が最大でも数カ月と非常に早く手に入れることが可能なのだ。一体なんで!?
ヴォクシー納車が1.5カ月!? なんでKINTOはフツーに買うより納車早いのよ
文/渡辺陽一郎、写真/TOYOTA
■納期激遅の今、狙うはサブスクのKINTO! 納車めっちゃ早いゾ
多彩な車種を用意するKINTO。納期も購入するより格段に早い
今は各メーカーとも納期を長引かせている。
2019年頃まで一部の例外を除くと、在庫車でなくても契約から納車までの期間は1~2か月であった。それが今は3か月なら短い部類に入り、6か月から1年以上の車種も増えた。また以前は普通車の納期が長く、軽自動車と一部の小型車は短い傾向も見られたが、今は軽自動車でも6か月前後に達する車種が多い。
納期が延びた背景には、さまざまなパーツやユニットの供給不足があり、メーカーの商品企画担当者は、
「一般の報道では、半導体不足で生産が滞り、納期が伸びているといわれる。確かに半導体は足りないが、実際にはそのほかの原材料、塗料、樹脂部品なども滞っている。しかも供給が不意に停止することもあるから、将来の計画を立てにくい。いつになったら以前の状態に戻るかも分からない」と述べている。
以上のように納期の不安定な状態が続くが、短縮させる方法も皆無ではない。それはKINTOを利用することだ。KINTOとはトヨタが運営するサブスクリプション(定額制でクルマを使うサービス)で、カーリースに含まれる。
■ノア/ヴォクシーが最短で1.5カ月!! しかも若年層はフツーに買うより安い!?
トヨタ ノア/ヴォクシーの場合、KINTOでの納期はおよそ2カ月ほどとなる
KINTOの一番のターゲットユーザーは若年層だ。若い人達は事故のリスクが高いと判断され、しかも任意保険の等級も進んでいないから、任意保険料が高額となる。これがクルマを購入しにくい原因のひとつと指摘されている。
そこでKINTOは、ドライバーの年齢などを限定しない未成年者でも使える任意保険を標準付帯した。そのために若い初心者ドライバーがKINTOを利用すると、自分で任意保険に加入する残価設定ローンなどに比べて、クルマに関する出費を大幅に安く抑えられる場合がある。
KINTOはこのように若年層を中心に割安感のある料金設定にして、利用者の拡大を図っている。しかも前述の通り、KINTOを利用すると、納期を短縮できるメリットも生じるのだ。
例えばノア&ヴォクシーの納期を販売店に尋ねると「2022年10月中旬に契約した場合、ノーマルエンジン車の納期は約7カ月、ハイブリッドは1年近くを要する」という。
ところがKINTOのホームページを見ると、ノア&ヴォクシーの納期は1.5~2カ月だ。
KINTOはカーリースだから、契約期間満了時に所有権をユーザーに移すことはできず、あくまでも借りる形態になる。現金購入やローンとは根本的に異なるが、ノア&ヴォクシーを1.5~2カ月で納車できるのは、今の納期を考えると大きな魅力になる。
■車種やグレードにも制約が!! 選べないオプションも一部アリ
写真のトヨタ ハリアーなど一部の車種はKINTOでの取り扱いがない。また、取り扱いのある車種においても、一部グレードやオプションは対象外となる
なぜKINTOは納期が短いのか。トヨタに尋ねると「KINTOは、販売店とは別のルートによる需給のシステムを構築・運用している」と返答された。
販売店では以下の反応だった。「KINTOの納期が短いのは、購入を前提にしたお客様とは、別枠で注文を受けて納車しているからだ。そのためにKINTOでは、グレードやオプションの選択肢も、販売する仕様とは異なる。KINTOで契約できる車種も、状況によって変化する」
確かにKINTOは、すべてのトヨタ車に適用されるわけではない。2022年10月中旬時点で、アルファード、ハリアー、ランドクルーザー(プラドを含む)、GR86、カムリ、カローラセダンなどは、取り扱い車種に含まれない。
アルファードやランドクルーザーは、新車の受注も停止され、これに伴ってKINTOでも契約できない。
販売店のコメントにあった通り、選択できるグレードやオプション装備も限られる。例えばノアの場合、選べるグレードは、ノーマルエンジン、ハイブリッドともに、X、S-G、S-Zのみだ。GやZは用意されない。オプションについてもデジタルキーは装着できない。
以上のようにKINTOでは、選択肢に制限が加わるが、現金やローンに比べて大幅に狭まるわけではない。従ってKINTOの利用は、納期を短縮する有効な手段になり得る。
KINTOの短い納期について販売店に尋ねると、以下のように返答された。
「今は納期が幅広い車種にわたって遅れている。そこを考えると、KINTOは優遇されている。しかも納期の遅れは、既に1年以上にわたって深刻な状態が続いている。正直にいえば、KINTOの優遇は販売店にとって愉快ではない」
確かにノア&ヴォクシーハイブリッドのように、販売店の納期は1年近くを要しながら、KINTOを使うと1.5~2か月に収まるのは格差が激しすぎる。
おそらくトヨタは、クルマの販売低迷を打開する有効な対策として、KINTOを何としても成功させたいのだろう。そのために、未成年者も使える任意保険料を含めながら、利用料金を割安に抑えているのだ。
■契約前に確認を!! ライフスタイルに合わないひとも
料金を割安に設定するのは好ましいが、納期まで優遇すると話は変わる。なぜなら、KINTOを利用したくても、自分の使い方に合わないユーザーもいるからだ。
例えばKINTOでは、リース期間が満了した車両を再利用するため、ペットの同乗や車内での喫煙は禁止されている。違反すると車両を返却する時に、元の状態に戻すための費用を請求されてしまう。
走行距離も、1か月当たり1500km以下とされ、これを超えると1km当たり11円(レクサスは22円)の超過料金を請求される。従ってKINTOは、クルマをフルに活用するユーザーには適さない。
カーリースだから、契約期間が満了したら返却せねばならず、買い取りはできない。本当のクルマ好きには、これを「悲しい別れ」と感じる人もおられるだろう。「愛車」は文字通りの存在だから、最期まで一緒に過ごしたいと考えるユーザーも多い。
KINTOは注目すべきクルマの利用方法だが、そこを過度に優遇すると、自動車メーカーや販売会社にとって最も大切な「愛車」の価値観を見失う。トヨタ車を本当に愛する人達のためにも、KINTOは納期を優遇すべきではない。
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みんなのコメント
支払って、所有権が買った本人にわたる。
そういうのを納車と感じてるから