この記事をまとめると
■いま、本革シートが合皮やファブリックのタイプに置き換えられている
レザーシートは憧れるけど「キズ」がつくと見るも無惨! キズはDIY補修できるのか?
■環境負荷を軽減するために今後は動物由来の素材はなくなっていく
■環境対応やサステナビリティを考慮した新素材のシート表皮が登場することになる
シート生地は環境負荷の少ない素材へとシフトしている
クルマのシート生地といえば、高級車やスポーツカーは本革というイメージをもっている人が少なくないだろう。それが近年は、合皮やファブリックへシフトする動きがある。
たとえば、ホンダの新型燃料電池車である「CR-V e:FCEV」。11月上旬に首都圏で実施された、同モデルの公道試乗会で配布された資料のなかに、「シートはバイオ合皮を適用」との記載があった。
背景にあるのは、環境への対応だ。ホンダが企業として「環境負荷ゼロ」を目指しており、ホンダ社内と社外に向けた方針として「トリプル・アクション・フォー・ゼロ」を示している。
その一環として、次世代車のシートでは、バイオ技術を活用した。バイオ合皮でありながら、横基調の幅の広いキルティングを施すことで、肌触りの良さや、張力を増すことでの座り心地のよさを実現している。
この資料を基に、ホンダのデザイナーにシート素材について聞くと、サステナビリティ(持続的な社会)を実現するためには、本革などの動物系天然素材の活用は今後なくなっていくと考えるのが妥当、という話をしていた。
一方で、「感触が大事」という観点でステアリングについては当面、本革が使われる可能性があるとも指摘した。
環境負荷の少ない新素材の登場に期待
そもそも、クルマのシートはさまざまな役目がある。一般論としていえば、ドライバーがクルマを運転する際にハンドルや各種ペダルを的確に操作するために、ドライバーの身体をしっかりとホールドする必要がある。
こうした点を重視しているのが、いわゆるバケットシートと呼ばれる競技車両を原点としたシートだ。バケットシートに限らず、クルマのシートは身体をしっかりホールドすることが大事だ。
さらに、シート内部にコイルバネが装着されているのだから、シートは乗り心地(座り心地)としてサスペンションの役割もある。
シートに関連した操作性と乗り心地(座り心地)とのバランスは、シートを装着するクルマの商品コンセプトや運動特性によって違いが出る。
そうしたなか、日系メーカーが実施する最近の新車発表会や報道陣向け試乗会では、シートに焦点をあてた話題が増えている印象もある。商品としてのクルマの熟成度が上がるほど、ヒトとクルマの物理的な接点であるシートの重要性が高まるのだ。
もうひとつは、クルマに対する趣向性がシートに与える影響が大きい。時代を振り返れば、1940年代から50年代、そして60年代と時代が進むにつれて、それまで一部の富裕層や官公庁向けだったクルマが庶民向け商品へと、その役割が拡大していった。それに合わせて、クルマには高級車、ファミリーカー、スポーツカーなど多様な種類が登場したわけだが、「シート=車内空間」という観点で「シート=家具」という考え方も出てきたものと思われる。
自宅でくつろぐようなクルマのシート、または自宅では味わえないような高級な雰囲気の車内空間に似合うシート、という発想だ。そこでクルマのシートでも本革という仕様が広がった。または、馬具もクルマのシートに対する影響があったのではないだろう。
いずれにしても、環境対応やサステナビリティの観点を考慮した各種の新素材を応用したクルマのシート表皮が今後、登場することになるだろう。
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みんなのコメント
石油由来の合皮か、天然素材の本革か、どちらが環境負荷が少ないか冷静に考えるべきだ。
食肉の副産物である天然皮革、持続性さえ考慮できれば、その方が負荷は少ないのは明らかだ。