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伝統の内燃スポーツへ「終止符」 ジャガーFタイプ 長期テスト(1) オールドスクールなマッスルカー

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伝統の内燃スポーツへ「終止符」 ジャガーFタイプ 長期テスト(1) オールドスクールなマッスルカー

初回 ジャガーの内燃スポーツカーへ終止符

10年前に華々しいデビューを飾った、ジャガーFタイプ。その頃、歴史あるブランド最後の内燃エンジンモデルとして、歴史へ刻まれることになるとは想像していなかった。直接的な後継モデルが、開発されないことも。

【画像】伝統の内燃スポーツへ「終止符」 ジャガーFタイプ EタイプとバッテリーEVのIペイスも 全122枚

だが5年ほど前から、それが避けられない事実だと、受け止めざるを得なくなった。伝説的なスポーツカー、ジャガーEタイプの子孫が絶たれてしまうことへ、複雑な気持ちを抱くようになっていた。

遂に生産終了を迎える今、AUTOCARでは改めて、パワフルな最後のFタイプで長期テストを実施することにした。悲劇の始まりなのか、新時代の幕開けなのか、少し時間をかけて検証したいと思う。

英国編集部が選んだのは、最高出力575psを発揮する、5.0L V8エンジンを搭載したFタイプ R75。この末尾の数字は、Eタイプの誕生以来75年間続いたジャガーのスポーツカーへ、1度終止符が打たれることを意味している。

V8エンジンはスーパーチャージャーで過給され、専用チューニングの8速ATを介し、四輪を駆動する。この四輪駆動システムは、フロントタイヤのトラクションも必要だと判断されるまで、可能な限り後輪駆動状態が保たれる。サスペンションもR75の専用設定だ。

ほぼ、理想的なFタイプといっていい。唯一、筆者の考えと一致しないのが、カルパチアン・グレーという塗装。最後を飾る特別仕様なら、もっと鮮やかな色で強い印象を残した方が良いだろう。

オールドスクールなマッスルカー

Fタイプのトップグレードは、間違いなく素晴らしい。現代でも不足ない動力性能を備え、追加の必要がないほど装備は充実している。

長期テスト車の英国価格は、合計で丁度11万1000ポンド(約2064万円)。その内、オプションが約8000ポンド(約149万円)を占める。

パノラミック・ガラスルーフと高価な20インチ・ホイール、カルパチアン・グレー塗装、アップグレードされたレザー内装などは、選ばなくても良かっただろう。これらを省けば、5000ポンド(約93万円)ほどお安くなる。

最高速度299km/hの高性能モデルだと考えると、Fタイプはコストパフォーマンスが良い。筆者は久しぶりに運転したが、改めて完成度の高いモデルだと感じる。

ボディはワイド&ロー。全長はコンパクトなハッチバック程度しかなく、美しく膨らんだリアフェンダーのラインが勇ましい。車重は1780kgと軽くはないが、同程度の大きさのバッテリーEVと比べれば、500kg前後は軽い。

V8エンジンを始動させると、あからさまにオールドスクールなマッスルカー。最近の内燃エンジンモデルと、一線を画す。

ステアリングホイールを握ると、その印象は一層強まる。サイドボルスターの立ち上がったシートが横っ腹を包み、お尻の位置は路面へ着きそうなほど低い。センターコンソールは高く、助手席と空間を明確に仕切っている。

ルーフは低く、フロントガラスは寝かされている。視界が特に優れるわけではないが、スポーツカーらしく、しっかり意図されている。

英国郊外の制限速度内でも走りは格別

ただしエンジンサウンドは、スペックから想像するほどV8っぽくない。排気ガス規制のユーロ6へ対応した、マフラーのせいだろう。センターコンソールのボタンを押すと唸りが増すはずだが、常用回転域では目立った違いはない。

思い描いた怒号へ浸りたいなら、3500rpm以上は回す必要がある。そこで、最大トルクの71.2kg-mに到達する。

実際、爆発的なほど強力。パワフルなバッテリーEVへ並ぶ勢いはなくても、滑らかに調律された8速ATが、豪快にパワーを路面へ展開し続ける。

最高出力は6500rpmで達成されるが、公道で楽しむことは難しい。本領を発揮させるには、サーキットへ持ち込む必要がある。それでも、普段の道で特別な体験は味わえる。

英国郊外の制限速度、97km/h以下でも走りは格別。ワインディングを勢い良く駆け登り、強力なブレーキを最小限に効かせる。現実的な環境でキビキビと走らせる時、Fタイプ以上に優れたモデルは極めて限られる。

ステアリングも素晴らしい。時折フロントタイヤへもトルクが伝えられるが、操舵感に悪影響はないといっていい。ステアリングホイールの直径と、リムの太さも丁度いい。

長距離のドライブを、快適に楽しむこともできる。弱点といえば、ザラついた路面で大きくなるロードノイズ。正直なところ、かなりウルサイ。

寂しく恋しい気持ちが湧いてくる

ハイブリッドへ慣れた感覚からすると、Fタイプ R75の9.6km/Lという燃費は、かなり悪く感じてしまう。70L入るタンクを満たすと、約100ポンド(約1万9000円)かかる計算。航続距離は530km前後で、多くのバッテリーEVより遠くは目指せる。

これまで少しの時間、筆者は一緒に過ごしてみたが、確かに若干古い感じは否めない。それでも、心地良い。

バッテリーEVはスムーズでパワフルかもしれないが、まだ個性で劣る。聴覚的な主張も遥かに違う。このサウンドを鑑賞できなくなると考えると、寂しく恋しい気持ちが湧いてくる。今後の数か月で、どんな心象の変化が生まれるだろうか。

セカンドオピニオン

英国編集部では、発売時にFタイプの長期テストを実施している。その時は、本当にオールドスクールで、少し荒削り感の漂うモデルだと感じた。

しかし時間が過ぎ、他では得られない体験を与えるモデルへと印象は変わった。スティーブは長い時間をかけて、別れの素晴らしいひと時を味わうことになるだろう。 マーク・ティショー(Mark Tisshaw)

テストデータ

テスト車について

モデル名:ジャガーFタイプ R75 クーペ(英国仕様)
新車価格:10万3075ポンド(約1917万円)
テスト車の価格:11万1000ポンド(約2064万円)

オプション装備

20インチ 5スプリットスポーク・アルミホイール :2000ポンド(約37万2000円)
カルパチアン・グレー塗装:1335ポンド(約24万8000円)
パノラミック・ガラスルーフ:1335ポンド(約24万8000円)
エクステンデッド・レザーシート:1055ポンド(約19万6000円)
クライメート・パッケージ:685ポンド(約12万7000円)
盗難防止トラッカー:545ポンド(約10万1000円)
ブラインドスポット:アシスト:500ポンド(約9万3000円)
ドライバーアシスト・パッケージ:470ポンド(約8万7000円)

テストの記録

燃費:9.6km/L(WLTP値)
故障:なし
出費:なし

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みんなのコメント

1件
  • tak********
    Fタイプクーペ欲しかったけど、RにMT無かったから候補から消した。見た目も前期型の方が個人的には好きだったなぁ。
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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