MX-30 Rotary-EVで久々に復活したロータリーエンジン。「マツダ独自の技術が復活!」といった声も大きい。確かにロータリーエンジンを実用化し現在まで研究開発をしているのはマツダだけになってしまったが、実はロータリーエンジンを世に生み出したのはマツダではない。改めてロータリーエンジンの歴史を簡単に振り返ってみよう。
文:西川昇吾╱写真:マツダ、ベストカー編集部
こっそりトヨタや日産も作ってた! まだまだいくぜ! ロータリーを諦めないマツダに大拍手だ!
■誕生はドイツだった!? 最初はハウジングが回転したってマジ!?!?
今でも絶大な人気を誇るロータリーエンジン
ロータリーエンジンはドイツでフェリクス・ヴァンケルという技術者によって発明された。
オートバイメーカーのNSUと共同で研究を進めて1957年にDKM型という試作エンジンを造った。
このエンジンは現在のロータリーエンジンとは異なり、ロータリーハウジングが回転するというものだったそうだが、翌年には現在のようにローターが回転するエンジンが出来た。
4輪自動車製造への復帰を考えていたNSUは小規模な会社であった。
そこでライセンス事業を展開する戦略を取ることにした。
1960年に発表会をし、ロータリーエンジン開発成功をアピール、これに世界中の多くの自動車メーカーが興味を示したのだ。
■ロータリーの課題を克服したマツダ
マツダもこのロータリーエンジンに興味を持った。
NSUと1961年に技術提携契約を結び、ロータリーエンジンの開発をスタートさせたのだ。
マツダは技術研修団をドイツに派遣させ、ロータリーエンジンの実用化に向けて動き出した。
しかし、そこには大きな壁がいくつも立ちはだかった。
もっとも有名なのはチャターマークだ。
悪魔の爪痕とも言われたチャターマークは三角形のローターの頂点に取り付けられたアペックスシールがローターハウジングを傷つけてしまうというものであった。
マツダはこの課題に約2年かけて取り組み、形状を工夫して周波数特性を変えるというアプローチをとった。
これによりチャターマーク問題を解決、翌年には日本カーボン社の協力を得てアルミの隙間をカーボンで埋める複合材が完成した。
こうした開発の成功があって1967年にコスモスポーツをマツダ初のロータリーエンジン搭載車として世に送り出すことができたのだ。
■トヨタや日産も開発していた!!
実はロータリーエンジンを市販したのはマツダだけではない。
NSUは1964年にロータリーエンジンを搭載したヴァンケルスパイダーというモデルを発表し、2000台ちょっとを販売した。
実はこれが世界初のロータリーエンジン搭載市販車なのだ。
しかし、耐久性という問題を解消できていなかったのだ。
これを解消して市販車に搭載できたのはマツダだけと言えるだろう。
実はロータリーエンジンはトヨタや日産、メルセデスやアウディといったメーカーも開発していた。
しかし先に上げた耐久性の問題や燃費性能が悪く、時代がオイルショックになってしまったことなどといった背景が理由となり、開発が中止されたりしてしまった。
そして現在に至る訳だ。
■ロータリーは復活!! 開発を続けたマツダに拍手!!
これからが期待されるMAZDA ICONIC SP
最終的にロータリーエンジンはマツダ独自の技術となったが、それはロータリーエンジンを進化させることを難しくもした。
レシプロエンジンならば可変バルブタイミング機構とか直噴エンジンだとかが生まれて、他メーカーからの技術に刺激されどんどん開発競争が起きるわけだが、ロータリーエンジンは1社だけでの研究開発であり、その進化速度はレシプロエンジンには正直敵わないだろう。
そんな中でもロータリーエンジンの研究開発を行って、レンジエクステンダーという形でロータリーエンジンを復活させたマツダには拍手を送りたい。
なお、マツダはヴァンケル氏の功績を時が経っても称えている。
2002年にヴァンケル氏生誕100周年記念展がドイツで開催されたのだが、マツダはこの展示会に協力をしロータリーエンジン搭載車やエンジンなどを出展していた。
それは1960年代にロータリーエンジン実用化に向けて共に戦った。お互いを称賛しあう関係性があるからかもしれない。
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みんなのコメント
今回は発電機としての復活。
やはりロータリーエンジンそのものを動力とした車に乗りたい。