今年復活を遂げるトヨタの名車の2代目もデビュー
平成の元号が間もなく終わろうとしている。31年間続いた平成という時代はバブル景気の絶頂期と崩壊、阪神大震災や東日本大震災といった大規模災害、長かった不景気など、激動の時代であった。激動だったのは日本車の大躍進や次々と変わったユーザーの志向の変化など、時代を映す鏡とも言われるクルマも同じだった。
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そこで平成の終わりを期に、平成を駆け抜けたインパクトあるクルマを良かったもの、悪かったものを含めて振り返ってみたいと思う。これまで平成元年から平成4年までをお届けしたが、今回は平成5年編をお届けしよう。
■平成5年(1993年)ってどんな年?
景気はよく言われる「バブルの余波」があった最後の年という印象ながら、この年の3月に日産が神奈川県座間市の工場を2年後に閉鎖するという発表したこともあり、人々は「いよいよ本格的な不景気が始まるのかな」とも思い始めていた。政界では自民党を離党した議員が中心となり結成された新生党や新党さきがけの躍進により自民党は与党の座を失い、新党さきがけの細川護熙氏が総理大臣に就任した。
世のなかの動きとしては長梅雨と冷夏が原因となった米の不作による米騒動(対応として日本米と輸入米を混ぜたブレンド米も販売された)、サッカーJリーグのスタート、レインボーブリッジの開通、女子中高生の間で大人気になったルーズソックスの登場、テレビドラマ「ひとつ屋根の下」のヒットなどが記憶に残る。
1)トヨタ・スープラ(2代目:A80型)
「THE SPORTS OF TOYOTA」をキャッチコピーに据えた2代目スープラは、とくにアベレージスピードの高いサーキットやアウトバーンのような高速道路で目を見張る速さを見せるスポーツカーだった。自動車メディアによるテストで最高速は280km/hをマークし、最高速付近でのスタビリティ(安定性)も素晴らしいものだったという。
技術面でも日本車初の6速MTや、トラクションコントロールを安全のためだけでなく速さを向上させるためにも使うスリップコントロール、大きなリヤスポイラーの採用などが注目された。
また2代目スープラは快適性やクルマのコントロール性なども高く評価され、改良を重ねながら2002年まで生産された。そして今年、スープラは17年振りに復活する。
2)日産ローレル(7代目)&日産スカイライン(9代目)
2台の前型となる6代目ローレルと8代目スカイラインは、前者はスタイルとインテリアの良さ、後者はスカイラインらしいスポーツ性と実用性をうまくバランスしていたことを理由にどちらも評判のいいモデルであった。
しかし7代目ローレルはスタイル重視なのか、スペースに代表される実用性を重視しているのか、よくわからない中途半端な4ドアハードトップになった。
9代目スカイラインは室内を広くするため8代目で小さくなったボディサイズが再び拡大してしまうなど、こちらもコンセプトが不透明で、両車とも販売は低迷した。
ただ、9代目スカイラインの2.5リッターターボに採用された排気量を大きくしたようなフィーリングを目指したリニアチャージというコンセプトは当時不評だったが、現代のダウンサイジングターボに通じるものがあり、この点は評価できる。
とくにスカイラインは8代目スカイラインの中古車が値上がりするという事態まで起きてしまった。
日産はこの頃から決算に赤字が目立つようになり、今思うとルノー傘下に入る前の日産の、ユーザーにとって分かりやすい凋落の始まりはこの2台だったようだ。
一大ブームを作り上げた偉大な軽自動車もこの年に誕生!
3)ユーノス800
ユーノス800はFFレイアウトで現在のベンツCクラスやBMW3シリーズのようなプレミアムセダンを目指したクルマで、塗装などクオリティの高さをアピールしていたが、クルマ自体にそれほどインパクトはない。
では何にインパクトがあったかというと、燃費に代表される効率に優れるミラーサイクルエンジンを量産車として初めて搭載した点である。
当時のミラーサイクルエンジンは効率に優れる代わりにパワーが出しにくいという欠点があり、ユーノス800はスーパーチャージャーという過給機を加えることでパワーを補っていたため、残念ながらさほど燃費は良くなかった。
しかしミラーサイクルエンジンは、のちにトヨタのハイブリッドカーやマツダでは3代目デミオ、現在のスカイアクティブGなど多くの搭載車が登場。今では過給機やハイブリッドカーのモーターのようなエンジンのパワーを補うものなくエンジン単体で十二分なパワーを出せるほどに開発が進んだ。
このことを思うと、ミラーサイクルエンジンを初めて量産化したユーノス800の功績は記憶に留めていい出来事だろう。
4)スズキ・ワゴンR(初代)
初代ワゴンRは「限られた軽自動車のサイズでスペースを広く取るには全高を上げるのが一番」というコンセプトで、全高を1600mm台に上げた、今になると多くの人が思いつきそうなモデルである。
だが、それを実行するのは大変な勇気が要ることで、当初は当のスズキすらそれほど売れるクルマとは思っていなかったようだ。
しかしフタを開けてみると広さや着座位置を上げたことによる見晴らしの良さ、ある種の珍しさを理由に初代ワゴンRは大ヒット車となった。さらにダイハツ・ムーヴやホンダ・ライフといったワゴンRの影響を多大に受けた後追いも登場し、今では当たり前となった軽ハイトワゴンという新しいジャンルを開拓した。
最近は軽自動車業界にダイハツ・タントを代表とするスーパーハイトワゴンや、スズキ・ハスラーのようなクロスオーバーが登場するなど、さらにジャンルが多様化していることもありワゴンRは以前ほどは売れなくなった。それでも堅調に売れ続けており、ワゴンRは偉大な存在と断言できる。
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