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482万8000kmのギネス記録 ボルボP1800 英国版中古車ガイド 北欧美人のクーペ

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482万8000kmのギネス記録 ボルボP1800 英国版中古車ガイド 北欧美人のクーペ

47年間で482万km以上を走破したP1800

P1800という美しいクーペには、いくつかの驚きがある。まず、四角いイメージが先行しがちなボルボなのに、とても流麗なフォルムを持っている。歴代のボルボのなかで、最も多くの視線を集めるモデルだと思う。

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しかも英国中部、バーミンガム郊外のウェスト・ブルミッジで製造されていた時期があった。さらに、もっと驚くような事実も隠し持っている。

それは、1台のクルマが走行した最長走行距離のギネス記録を、1966年式のP1800 Sが保持しているということ。オーナーのアーヴ・ゴードン氏は、定期的なメンテナンスのみで、目立った不具合もなく40万2300kmを走行したという。

その記録は伸び続け、2013年には482万8000kmという、途方もない距離に到達している。47年の間に。エンジンブロックとトランスミッション・ボックスは、最後まで交換されない状態だったそうだ。

つまりボルボP1800は、手間のかからないクラシックモデルだといっていい。まさに、このギネス記録が物語っている。これに乗れば、クルマ好きの知人も自然と増えるかもしれない。

かつての自動車メーカー、ジェンセン社は、1961年から1963年までP1800をバーミンガム郊外でライセンス生産していた。しかし製造品質に問題があると判断され、スウェーデン西部のヨーテボリへ戻されている。

モデル名は当初P1800だったが、ボルボ自らが生産するようになって以降、1969年まではP1800 Sへ改められた。Sは、スウェーデンの頭文字だ。

乗りやすさで選ぶならインジェクション

英国で生産された最初期型は珍しく、中央部分が角のように立ち上がった、カウホーンと呼ばれるフロントバンパーが目印。エンジンのパワーも、それ以降のモデルより低い。

英国の中古車市場を見ると、7年間生産されたP1800 Sが1番流通量も多い。エンジンはジェンセン時代と同じ、SUキャブレターを載せた1.8L 4気筒ガソリンながら、最高出力が異なる。

当初102psでスタートしたが、1963年からは110psへ。1966年には116psへパワーアップしている。

燃料インジェクションの登場は、1969年。モデル名もP1800 Eとなった。エンジンは新しい2.0Lユニットになり、130psを達成。ブレーキも四輪ディスクになったほか、多くの改良を受けている。

この後期型P1800 Eは、キャブレターの前期型より乗りやすい。調整不要の燃料インジェクションだし、扱いやすい強力なブレーキも備わっている。さらに状態の良い例でも、英国では1万ポンド(約155万円)ほど価格が安い。

1972年からはクーペボディを改め、シューティングブレークとしたP1800 ESが登場。実用性を大幅に向上させた。こちらも、まれに中古車市場へ出てくることがある。

ボルボP1800シリーズは馬力が控え目だったため、スポーツカーとしての評価は振るわなかった。そのおかげで多くは丁寧に運転され、目立った改造も受けずに済んでいる。

レストア途中のクルマを買う場合は、すべての部品が揃っているか確認したい。仕上げるまでのコストが驚くほど高くなることもあり、入手が難しいスイッチやゴムシール、ビスなどで作業が進まない可能性もある。

専門家の意見を聞いてみる

ロバート・ウィットン氏:フェニックス・クラシック・レストレーションズ社代表

「P1800の多くの部品は、今でも比較的簡単に手に入ります。いくつかは既に購入できなくなっていますが、少なくともブッシュ類や一般的な整備に必要なものは、まだ入手可能です」

「見た目の個性や希少性を重視するなら、ジェンセン時代のP1800が良いでしょう。多くの人が信頼性に問題があると考えており、実際にスウェーデンへ生産が移された理由でもありますが、それに対応するのも楽しいかもしれません」

「現代のクルマとは違います。クラシックカーを選んでいるわけですし、多くの問題は解決できるものです」

購入時に気をつけたいポイント

ボディ

特に英国で作られていた初期のP1800は珍しく、交換用のボディパネルは出てこない。ただし、酷く状態の悪い例は少ないようだ。

一方で、1963年以降のP1800 Sでは、サイドシルやドアの下面、フェンダー、ヘッドライトのマウント部分などが錆びやすい。燃料タンクの取り付け部分も確認したい。

これまで取引価格が手頃だったため、ボディの修理が充分ではないこともある。養生した磁石と懐中電灯で、予めボディの状態はしっかり確かめたい。パテが盛られていると、磁石がつきにくい。

クロームメッキのバンパーが傷んでいたら、新しいものと交換が可能。英国ではステンレス製の新品を、約700ポンド(約11万円)で入手できる。

インテリア

日差しが強く当たる乾燥した状態は、ゴムやレザーを傷めてしまう。ウインドウシールやシートカバー、ダッシュボードなどの交換は想定しておきたい。1800 S以降のシートの方がクッションが厚く、ジェンセン時代のものより快適とされている。

サスペンションとブレーキ

しばらく交換されていなければ、ブッシュやボールジョイント類はリフレッシュしたい。ポリウレタン製を選ぶと、寿命とパフォーマンスを伸ばせる。オリジナルのゴムブッシュは、数年程度で劣化してしまう。

ブレーキ・ブースターからフルードが漏れ、ブレーキが効かなくなる可能性がある。リアドラムの分解には、ボルボの専用ツールが必要だ。

エンジン

ギネス記録に残るように、この4気筒エンジンは長寿命。それでも、定期的なメンテナンスは不可欠だ。

キャブレター仕様の場合、燃料ホースの劣化やキャブレター自体の汚れで、始動性が悪くなったり回転が不安定になる。状態が良くても、燃料インジェクションでない場合は、アイドリングが不安定になりがち。

走行距離が長い場合は、ピストンの圧縮状態を確かめたい。排気ガスの白い煙なども、内部構造の摩耗のサイン。バルブシートやピストンリングの交換を検討したい。

知っておくべきこと

英国では、ナンバー登録から40年以上が経過した、ノーマル状態に近いクルマが免税対象となる。申請すれば、車検が切れていても公道を走行できる。

ただし、P1800シリーズの多くのオーナーは大切に乗っているため、定期的なメンテナンスも欠かさないようだ。それでもボディの不適切な修復などに、後々悩まされることはあり得る。過去の整備記録などは、しっかり確認したい。

英国ではいくら払うべき?

5000ポンド(約77万円)~1万4999ポンド(約231万円)

レストアが必要な、後期モデルを英国では探せる価格帯。シューティングブレークのESも出てくる。

1万5000ポンド(約232万円)~2万4999ポンド(約386万円)

状態は良くなるが、追い追いレストアが必要になりそうな個体が中心。多くが後期のP1800 Eだ。

2万5000ポンド(約387万円)~3万4999ポンド(約541万円)

1970年以降に生産された、かなり状態の良いP1800 Eを英国では探せる価格帯。P1800 Sも出てくる。

3万5000ポンド(約542万円)以上

ジェンセン時代のP1800を含む、1960年代に製造された上物を英国では探せる。

英国で掘り出し物を発見

ボルボP1800 S(英国仕様) 登録:1963年 走行距離:− 価格:3万5950ポンド(約557万円)

1963年に入って、スウェーデンで生産された初期の頃のP1800 S。ジェンセン時代と同じ、カウホーン・フロントバンパーを備えている珍しい例といえる

個人売買で、売り手はこの6年間に、2万ポンド(約310万円)以上を費やしメンテナンスしてきたという。性能と信頼性の向上のために、後期の2.0Lエンジンと電子点火システムが載せられている。

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