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N-VAN登場後も売れ筋は1BOX! 日本の誇り!! 軽バンは今後どうなる?

掲載 更新 33
N-VAN登場後も売れ筋は1BOX! 日本の誇り!! 軽バンは今後どうなる?

 従来のアクティバンに代わるFFレイアウトを採用したホンダの新たな軽商用バンとして、2018年の登場時に注目を集めたN-VAN。しかし、その後も圧倒的に売れている軽商用バンは従来の1BOXタイプであるスズキ エブリイとダイハツ ハイゼットカーゴだ。

 N-VANと同じFFベースだったダイハツのハイゼットキャディーは今年3月末に販売が終了。現在は室内の広さで有利な1BOXタイプのエブリイやハイゼットカーゴがあり、FF・2BOXのN-VANもあるという状況だが、電動化などの波も押し寄せている今後の軽商用バンはどうなっていくのか?

タイプRはこの先もう出ない!? ホンダ最高のエンジン車に乗るのは今しかない!!

 モータージャーナリストの渡辺陽一郎氏は次のように考察する。

文/渡辺陽一郎  
写真/NISSAN、MITSUBISHI、SUZUKI、DAIHATSU、ベストカー編集部

【画像ギャラリー】日本の物流を支える主要な軽商用車たち 今後の運命は?

■軽自動車の商用バンは日本の物流を支える重要な存在

2015年2月に発売された現行のスズキエブリイ。先代のキープコンセプトながら荷室寸法とシートスライド量を拡大し空間効率を高めた。価格は96万8000円~

 配達などに使われる軽商用車は、日本の物流を支える大切な存在だ。新車の売れゆきも堅調で、2020年度(2020年4月~2021年3月)には、軽商用車は39万4861台が届け出された。4ナンバー車として登録される小型貨物車の23万4095台を大幅に上まわる。

 そして軽商用車は、軽バン(アルトなど乗用車ベースのバンを含む)と、軽トラックに大別される。売れゆきは軽バンが多く、軽商用車全体の54%を占める。

 ただし今は各メーカーとも、電動化などの環境技術、自動運転や安全性の向上に力を入れる必要があり、コスト低減の観点から車種の数を減らしている。薄利多売の典型とされる軽商用車は、その対象に入りやすい。

■軽自動車販売台数NO.1のN-BOXから生まれた商用バン

ホンダNシリーズとして2018年7月に発売されたN-VAN。2021年4月に生産終了となったアクティに代わりホンダ唯一の商用車となった。価格は127万6000円~

 直近ではホンダアクティトラックが生産を終えた。アクティのバンは、2018年7月の時点で、N-VANに変更されている。アクティバンは、アクティトラックと同じく軽商用車用に開発された後輪駆動のシャシーを備えたが、コストとのバランスで専用設計を保ちながらフルモデルチェンジするのは難しい。

 そこでN-BOXと基本部分を共通化した前輪駆動のN-VANに発展した。

 N-VANはN-BOXと同じくエンジンをボディの前側に搭載するから、後部の床下に収めていたアクティバンに比べて荷室長が短い。アクティバンの荷室長は1725mmだったが、N-VANは1510mmと短く、長くて幅の広い荷物は積めなくなった。

 そこでN-VANは、左側のピラー(柱)をスライドドアに内蔵させて開口幅を1580mmとワイドに確保する。後席に加えて助手席まで畳み、荷室面積を広げられる工夫も施した。

 ほかの軽バンに見られない機能だが、2020年度におけるN-VANの届け出台数は3万2125台(1カ月平均では2677台)に留まる。ダイハツハイゼットカーゴの6万6380台(同5532台)、スズキエブリイの5万9027台(同4919台)に比べると大幅に少ない。

■N-VAN低迷の理由

軽バン唯一のFFレイアウトを活かしたN-VANのインテリア。助手席側はピラーレスで、シートをフルフラットに格納できるのが特徴

 ハイゼットカーゴとエブリイが好調に売れて、N-VANが低迷する背景には3つの理由がある。

 ひとつ目の理由は、荷室の使い勝手が異なることだ。N-VANも前述のとおり左側のドアやシートの格納に特徴を持たせたが、荷室長には大きな差がある。ハイゼットカーゴの荷室長は、最も長い仕様では1860mm、エブリイなら1910mmに達するが、N-VANは1510mmと短い。

 荷室長に400mmの差が生じると、ハイゼットカーゴやエブリイには積める荷物がN-VANには収まらない。仮に通常運んでいる荷物が小さくても、万一の時に大きな荷物に対応できることは、商用車にとって大切だ。

 ハイゼットカーゴとエブリイは、N-VANよりも積載性に関する安心感が高く、好調な売れゆきに結び付いた。

 販売格差が生じた2つ目の理由は価格だ。ハイゼットカーゴで最も安いスペシャルの標準ルーフ(5速MT)は94万500円、エブリイのGAとPA(5速MT)は96万8000円だが、N-VANで最も安いGは127万6000円になる。

 装備はN-VANが充実して、衝突被害軽減ブレーキ、運転支援機能(CVT)、キーレスエントリーなどをGでも幅広く装着する。しかしビジネスに使われる軽商用車では、純粋な価格の安さが重視されることも多い。最廉価グレードに30万円以上の価格差があると、N-VANは敬遠されやすい。

2020年で発売60周年を迎えたダイハツ ハイゼットシリーズ。バンタイプのハイゼットカーゴは2004年12月の発売以降改良とマイナーチェンジを重ねている。価格は94万500円~

 価格差が拡大した背景には、他メーカーに供給されるOEM車まで含んだ生産台数も影響している。

 ハイゼットカーゴの届け出台数に、OEM車のスバルサンバーバンとトヨタピクシスバンを加えると、2020年度に7万8339台が届け出された(1カ月平均では6528台)。この販売実績はダイハツミライース+ミラトコットよりも少し多い。

 エブリイの売れゆきに、OEM車の日産NV100クリッパー、マツダスクラムバン、ミニキャブバンを加えると、2020年度に9万6834台が届け出されている(1カ月平均では8070台)。この台数は日産ルークスに匹敵する。

 以上のようにハイゼットカーゴとエブリイは、OEM車を含めて生産台数が多く、薄利多売も可能になって100万円以下の価格を実現できた。N-VANもN-BOXと基本部分を共通化してコストを抑えたが、乗用車がベースだから、価格を安く抑えるのにも限界がある。

 販売格差が生じた3つ目の理由は顧客の違いだ。ダイハツとスズキは、以前からトラックも含めて軽商用車の取り扱いが多い。

 ダイハツの軽商用車の届け出台数は、2010年度:12万7582台、2015年度:13万8030台、2020年度:14万4963台だ。スズキも同様に13万1103台・13万8577台・11万9430台と推移している。

 ところがホンダは、3万8062台・2万7664台・5万4317台に留まる。ホンダは軽乗用車の販売は堅調だが、軽商用車はもともと少ないからN-VANも売りにくい。

 このように軽バンは機能と価格の両面で競争が激しく、ダイハツがウェイクをベースに開発したハイゼットキャディーは販売が低迷して2021年3月に廃止された。ウェイクの後席をはずした仕様で、実用性、価格の割安感ともに、ハイゼットカーゴに見劣りしていた。

■三菱はEVの商用バンを生産終了したが今後は?

日産が2019年の東京モーターショーで公開したIMkコンセプト。サイズは全長3434×全幅1512×全高1644mmと軽ハイトールワゴン的なスタイル

 問題は今後の動向だ。軽バンは国内の物流を支える大切なツールで、価格の安さも重視される。例えば5台の軽バンを使う企業にとって、価格が10万円高ければ、合計50万円の上乗せになってしまう。

 価格は最も安いグレードが100万円以下という設定でないと、ユーザーは選択に困り売れゆきも下がる。

 その一方で、電動化などの環境対応も必要だ。2021年4月には、佐川急便が軽自動車サイズの電気自動車を開発して、配達に使うと発表した。開発はベンチャー企業のASFが担当して、生産は中国のメーカーに委託する。

 詳細は不明だが、ASFの車両は2021年3月から走行試験や機能の検証を行い、2022年9月から運用を開始するという。

 この車両の成り立ちは、三菱ミニキャブミーブに近い。先代ミニキャブをベースに、電気自動車であるiミーブのユニットを移植した軽バンで、2011年に発売されて2021年3月には生産を終えた。

 ミニキャブミーブの最終型は、モーターの最高出力が40馬力、最大トルクは20kgmで、リチウムイオン電池の総電力量は16kWhだ。1回の充電で、JC08モードにより、最大150kmを走行できた。

 問題は価格で、生産終了時点では、2人乗りの2シーターが243万1000円、4人乗りの4シーターは245万3000円であった。軽バンは前述のとおり安いグレードになると100万円以下から用意されるので、240万円を超えると電気自動車でも購入しにくい。

 そのためにミニキャブミーブの売れゆきは低迷して、2019年は521台(1カ月平均では43台)、2020年は1185台(同99台)であった。ASFと佐川急便が共同開発する配達用の電気自動車も、中国に生産を委託するとはいえ、価格をどの程度に設定できるかが課題になる。

2021年3月まで生産された100%電気自動車のミニキャブミーブ。最大航続距離はJC08モードで150km。100万円前後で入手できる軽バンのなかで価格は243万1000円~と高価で、導入のハードルも高かった

 その一方で、今後ミニキャブミーブを大幅に改良して、数年内に発売するという報道もある。販売店に問い合わせると「ミニキャブミーブは生産を終えて、改良やフルモデルチェンジを行う話は聞いていない」という。

 ミニキャブミーブの復活は不確定な情報だが、可能性はある。軽自動車サイズの電気自動車(乗用車)を市場に投入することは、すでに公表されているからだ。このユニットを使えば、新しい電気自動車の軽バンを開発できる。

 この場合でも価格が課題になる。軽乗用車であれば、例えばN-BOXの最上級グレードは223万円に達するが、軽商用車でこの価格は難しい。そうなるとマイルドハイブリッドの燃費効率を高めて二酸化炭素の排出量を抑えるなど、既存の技術で対応する必要もある。

 そもそも軽商用車は走る距離も短いので、燃費規制に別枠を設けてもいいだろう。公共の交通機関が未発達な地域では、軽乗用車はライフラインの役割を果たしている。

 同様のことが軽商用車にも当てはまるから、環境対応の制度も、切実な経済状況のなかで軽バンを使うユーザーの目線で考えて欲しい。

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  • ホンダ車って軽に限らず価格設定が高め(※一部除く)なので、ライバル社(車)に比べられると辛いよね
  • N-VANは詰めの甘い箇所が目立つ印象。
    荷室のタイヤハウス間がギリギリ910mm無いとか、ハザードのスイッチが遠いとか。
    ヘッドレストがデカいから収納場所に困るとか。
    マイナーチェンジでこの辺が改善されるのを期待してたんだけどなあ。
    HPの荷室長の表記が詐欺紛いなのもいただけない。

    あと、道楽用なんでターボのMTが欲しい(未だに言う)
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