■山椒は小粒でもぴりりと辛いぞ! ホットなコンパクトカーたち
いま販売中のコンパクトカーは、経済性と安全性が重視されています。したがって、ハイパワーなエンジンを搭載するコンパクトカーは極端に数が減ってしまいました。
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しかし、かつては過給器によって動力性能を飛躍的に向上させたコンパクトカーが数多く発売され、いわゆる「ホットハッチ」と呼ばれました。
そこで、これまで販売されていた高性能なコンパクトカーのなかから、3車種をピックアップして紹介します。
●ホンダ「シティターボII」
1972年、ホンダから発売された「シビック」は、コンパクトなFF車としてヒットします。それから9年後の1981年に、シビックの大型化にともなって、全く違うスタイルのエントリーモデルとして「シティ」を発売。
個性的な背の高い3ドアハッチバックのボディは広い室内空間を実現し、安価ということも相まって、シビック以上の大ヒットを記録します。
1982年にはライバルに対抗すべくターボを装着した「シティターボ」を発売。そして1983年にはさらにパワーアップした「シティターボII」が登場します。
シティターボIIのエンジンは1.2リッター直列4気筒SOHCで、クラス初となるインタークーラーを装備することで、最高出力110馬力(グロス)を発揮。ノンターボモデルが67馬力でしたから、じつに60%以上の高出力化が図られたことになります。
外装は前後ともにブリスターフェンダー化され、インタークーラーを収めるためボンネットのバルジ(膨らみ)も大型化されました。また、内装もバケットタイプのシートや、ブースト計を内蔵するメーターパネルなどが専用に装備。
735kgという軽量な車体ということもあり、高い加速性能と運動性能を誇りましたが、パワステが無いハイパワーなFF車ということで、滑りやすい路面ではアクセルワークにかなり気を使いました。
また、2220mmと短いホイールベースのためかコーナーリング時の挙動も神経質で、まさに「じゃじゃ馬」といったところです。
●日産「マーチスーパーターボ」
初代日産「マーチ」は1982年に発売され、世界戦略車として国内のみならず欧州などでもヒットを記録したコンパクトカーです。
デザインは初代のフォルクスワーゲン「ゴルフ」やフィアット「パンダ」を手掛けた巨匠ジウジアーロによるもので、シンプルな造形ながら優れたベーシックカーと評価されました。
1988年には、モータースポーツベース車の「マーチR」を発売。エンジンは930cc直列4気筒SOHCで、ターボに加えスーパーチャージャーも装着され、最高出力は110馬力(グロス)を誇りました。
翌年、このマーチRをベースに公道走行に適した仕様とした「マーチスーパーターボ」が発売されます。
出力は110馬力とマーチRと変わらず、スーパーチャージャーによる低速域のパワーと、ターボによる高速域のパワーを両立しており、全域に渡って高い性能を発揮しました。
770kg(5MT)と軽量なボディでしたから、その速さはほかのリッターカーを寄せ付けませんでしたが、シティターボIIと同様にパワーステアリングなどは装備しておらず、ハイパワーなFF車にありがちなピーキーなハンドリングだったようです。
■コンパクトカーによる競技が盛んだった時代
●ダイハツ「ブーンX4」
かつてダイハツはモータースポーツ活動に力を入れており、主に「ダートトライアル(平坦な未舗装のコースで速さを競う)」や、閉鎖した公道でおこなわれる「ラリー」へ積極的に参加していました。
そのための競技車両として「ストーリアX4」や「ブーンX4」が開発されました。
2006年発売のブーンX4は、ベーシックなコンパクトカーである初代ブーンをベースにエンジンを936ccの直列4気筒DOHCターボに換装。最高出力は133馬力を誇り、同クラスではもっともハイパワーでした。
駆動方式もフルタイム4WD化されトランスミッションは5速MTのみとし、サスペンションも標準車よりチューニングされ、高い運動性能を誇っていました。
980kgの軽量な車体に133馬力のエンジンでしたから、パワーウエイトレシオは7.3kg/馬力と、立派なスポーツカー並といえます。
通常のモータースポーツベース車のほかに、快適装備が充実した「ハイグレードパック」が用意され、普段使いとスポーツドライビングの両立も可能でした。
※ ※ ※
現行モデルでハイパワーな国産コンパクトカーはスズキ「スイフトスポーツ」くらいです。輸入車ではフォルクスワーゲン「up! GTI」や、ルノー「トゥインゴGT」、アバルト「500」など、意外と残っています。
しかし、今後はコンパクトカーもさらなる低燃費に向けた進化が予想されますので、高性能モデルがほしいと考えている人は、まだ手に入るいまがチャンスかもしれません。
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