パリ五輪支えるトヨタの技術
なぜ日本の自動車メーカーは、世界的なスポーツの祭典に莫大(ばくだい)な予算と労力を投じるのか。
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東京五輪から3年が経過し、パリ五輪の準備が着々と進んでいる。この一大スポーツイベントを支えているのは、行政だけでなく多くの企業である。トヨタがパリ五輪に向けたモビリティコンセプトを発表したのもその一例だ。
パリ五輪の公式モビリティパートナーとしてのトヨタの活動は、すでに始まっている。五輪組織委員会のスタッフは、2023年からトヨタのカーシェアリングサービス「キントシェア」を利用している。
大会期間中は、合計2650台以上の電動車が提供され、そのうち150台は車いす対応車となる。また、提供される車両の約60%はゼロエミッション車で、バッテリー式電気自動車(BEV)のbZ4X、プロエース、プロエースヴァーソ、レクサスRZ、燃料電池車(FCV)のミライなどが含まれる。
さらに、大会スタッフ、アスリート、ボランティアに500台のミライが提供され、ゼロエミッションの移動を実現する。大会終了後は、500台すべてがタクシーとして使用され、パリの燃料電池タクシーは合計1500台となる。
ロックダウンが解かれた今、世界中の人々がパリを訪れ、トヨタ車で移動することになる。つまり、パリ五輪の“レガシー”となり、パリ市民の日常生活で末永く愛され続けるのだ。そのインパクトは計り知れない。
政治的リスクとの闘い
台数だけ見ても、トヨタが巨額の予算を投入していることは明らかだが、五輪の公式パートナー契約金は数年間で数百億円ともいわれている。では、なぜトヨタはこれほどの資金と労力を投じて五輪に参加するのか。
先ほど、大きな効果が期待できると述べた。人口約5億人という巨大市場である欧州で、消費者のイメージを向上させることができれば、販売台数を伸ばすことができる。しかし、メリットはそれだけにとどまらない。行政の政策の方向性を改善することもできるのだ。
国際貿易には常に政治的リスクがともなう。欧州連合(EU)では、安価な中国製EVの流入による警戒感が高まっている。欧州にとって日本車もアウトサイダーである。
欧州は近年、EV開発に力を入れてきた。気候変動対策という理由もあるが、EUが自国産業の保護・振興のために一石を投じる狙いがあるとの見方もある。つまり、EUの行政関係者や自動車産業関係者が、
「法規制や補助金政策などで既存の内燃機関に強い日本車を市場から退場させれば、欧州EVメーカーのシェアを伸ばすことができる」
と考えてもおかしくはない。
トヨタはEV開発だけでなく、ハイブリッド車にも引き続き力を入れている。さらに、ポルトガルのカエターノ・バスと提携し、欧州バス市場に参入した。内燃機関を得意とするメーカーとして、全方位で攻める方針を打ち出している。このトヨタの戦略が欧州の政策と合致しなければ、努力は水の泡になりかねないのである。
多様性と持続可能性を支える貢献
欧州の中心、パリで開催される五輪に参加することで、トヨタは多くの市民や政府に好印象を与えることができるだろう。
忘れてはならないのは、五輪に合わせてパラリンピックも開催されるということだ。これは、多様性と持続可能なモビリティを推進する絶好の機会である。
欧米ではハイブリッド車の販売が好調で、2023年にはトヨタが世界で最も売れている自動車メーカーとなった。2024年3月期の純利益は前期比101.7%増の4兆9449億円と過去最高を記録した。
EUでは一部の地域を除き、行政関係者が期待したほどEV化が進んでおらず、EV政策の見直しが進められている。当初は2035年までにエンジン車の新車販売を全面禁止する方針だったが、環境に優しい合成燃料で走るエンジン車を容認する姿勢に軟化している。
このポジティブな流れを維持するため、トヨタは五輪に先駆けて投資を行っている。
トヨタのリベンジに注目
トヨタは東京五輪にも参加した。しかし、母国開催にもかかわらず苦戦を強いられた。東京2020五輪は、実際には2021年に開催された。
周知のとおり、コロナ禍で1年延期され、開催すら危ぶまれた時期もあった。日本の世論は開催の是非をめぐって二分され、トヨタ自動車は五輪関連のCMを休止したほどだ。数々の障がいがあり、難しい決断を迫られた。パリ五輪には、トヨタが東京のリベンジを果たすという意味合いもある。
東京五輪では、スケジュール変更や限られた練習環境など、オリンピアンたちは試合前の調整に苦労した。パリ五輪でリベンジを狙った選手も多いことだろう。
スポーツの祭典ということで、どうしても競技に目が行きがちだが、フィールド外ではトヨタもリベンジを狙っている。トヨタがパリ五輪のモビリティ分野で活躍を見せることができるか、注目したい。
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みんなのコメント
終わってみれば逮捕者続出の汚職の祭典、利権側に分類されて批判に巻き込まれる前に苦言を呈して降りたのは損切り大成功。
次はグローバルパートナーから降りるというから、IOCも何かあると嗅ぎつけてるんだろ。