欧州では純EVのみの設定に
欧州で人気のファミリーワゴン、シトロエン・ベルランゴ。AUTOCARでの試乗のためにクルマを借りていたところ、驚くようなニュースがシトロエンを擁するステランティスから飛び込んできた。
【画像】純EV版シトロエンe-ベルランゴ ボックスボディの電気自動車と比べる 全80枚
ベルランゴはこのカテゴリーでは英国の主流モデルの1つだが、今後はガソリンエンジン版もディーゼルエンジン版も、英国を含む欧州市場で販売しないという。つまり、すべてを純EVへ置き換えるというのだ。
それには、兄弟モデルに当たるオペルが販売するコンボと、プジョーのリフターも含まれる。商用車には内燃エンジン版も残るそうだが、一般ユーザーは今後選べないことになる。
ステランティスの説明では、この決定は将来的にもベルランゴのようなモデルを存続させるためだとしている。一見矛盾するようにも思えたのだが、プレスリリースを深く読むと、その真意が見えてきた。
背の高いボックスボディは正面面積が大きく、全高の低いモデルと比べて燃費が悪くなりがち。自動車メーカーはCO2排出量の削減に向けて、各国政府から圧力を受けている。そこで矢面に立ったのが、ベルランゴということのようだ。
もっとも目的はどうあれ、純EVのe-ベルランゴが持つメリットは変わらない。基本的には使い勝手の良い、ファミリーワゴンだと思う。
行動範囲は内燃エンジン版から大きく制限
一方でベルランゴが売りにしてきた、アウトドア・レジャーに適したクルマという側面は薄くなるだろう。その理由は航続距離。試乗日が極寒の天気だったとはいえ、駆動用バッテリーから得られた距離は、カタログ値の292kmより遥かに短いものだった。
e-ベルランゴが搭載するバッテリー容量は50kWh。冬場の現実的な航続距離は、180kmから190kmといったところになると思う。
目的地で確実に充電できるなら、その距離まで遠出することはできる。しかし、充電器に先客がいたり、そもそも付近には充電器がないかもしれない。そう考えると、150km前後までの移動に留めておいた方が無難だといえる。
内燃エンジン版のベルランゴなら、一度の給油で800kmくらいは走れた。比較すれば、大幅な性能の変化といわざるを得ない。e-ベルランゴは都市部から遠くは離れることができない、ファミリーワゴンなのだ。
市街地で沢山の人を乗せて移動するという目的でいえば、英国で提供されるロングホイールベース版のXLが好適。車内空間は広大で、乗り降りもしやすく、大人7名が快適に過ごせるシートが用意されている。
後席の2列を折り畳むかクルマから降ろせば、直方体で巨大な荷室空間も得られる。大きな家具も、難なく運べる。
活発な発進加速に慣れ親しんだ乗り心地
ロングホイールベース版の場合、全長が4.8m近くへ伸びるから、スーパーマーケットの駐車場での取り回しには少し気を使うかもしれない。大きなサイドミラーを含めると、全幅は2.1m程もある。
7シーターが必ずしも必要でなければ、ショートホイールベース版となるMの方が、市街地という環境には向いている。
e-ベルランゴの車重は2440kgに達するが、走りは充分に活発。前輪を駆動する電気モーターは138psと目立った数字ではないものの、0-100km/h加速は9.0秒となかなか鋭い。最高速度は135km/hと控えめだが、クルマの性格を考えれば充分だろう。
アクセルペダルの反応は、スポーツ・モードを選ぶと向上する。ただし、勢いよく加速したり、高速を長時間保つほど航続距離も短くなる。エコノミー・モードなら、穏やかになる。
乗り心地は、われわれがベルランゴに慣れ親しんできた、しなやかさを維持している。シャシー・エンジニアは、姿勢制御を多少緩くしてでも、優れた衝撃吸収性と落ち着きのあるマナーを与えたいと考えているようだ。
郊外の道を速めに運転してみて、楽しいと思えることもそのまま。ロングホイールベースでは少々手に余ることもあるが、ステアリングホイールの重み付けはちょうど良く、反応も正確。常に狙ったとおりに操れる。ドライバーもうれしいクルマだ。
ボトルネックになる航続距離
シトロエンe-ベルランゴは、とても良くできたファミリーワゴンではある。しかし、内燃エンジン版と比べて、利便性の幅は狭められている。車内空間の使い勝手は優秀ながら、限られた行動範囲は多くのユーザーにとってボトルネックになるはずだ。
エントリーグレードは手頃な価格で、16インチのスチールホイールと肉厚なタイヤが組まれている。その道具的な雰囲気に、惹かれるという人も多いだろう。カタチとしての能力はとても高い。だが、クルマとして大切なもう1つの能力が及ばない。
e-ベルランゴには、エアコンなどの快適装備が消費するエネルギー量を教えてくれる、個別のメーターが付いている。エコノミー・モードを選ぶと、ヒーターの効きは弱くなるが、後続距離は少し伸びる。気持ち的な制限も、少しは緩められるだろう。
シトロエンe-ベルランゴ XLフィール(英国仕様)のスペック
英国価格:3万495ポンド(約472万円/英国政府補助金適用後)
全長:4753mm
全幅:1848mm
全高:1879mm
最高速度:135km/h
0-100km/h加速:9.0秒
航続距離:292km
電費:−
CO2排出量:−
車両重量:2440kg
パワートレイン:AC永久磁石モーター
駆動用バッテリー:50.0kWh
最高出力:138ps
最大トルク:26.4kg-m
ギアボックス:−
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