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悩ましくも楽しきアルファロメオ選び「2台のジュリアと2台のステルヴィオ、魅惑の4気筒モデルを味わい尽くしてみた」

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悩ましくも楽しきアルファロメオ選び「2台のジュリアと2台のステルヴィオ、魅惑の4気筒モデルを味わい尽くしてみた」

アルファロメオはいつの時代も魅惑的だ。まずは見た目で誘惑し、そして乗ったら乗り味で誘惑してくる。乗ってみたい人も多いはずだ。凝りに凝ったふたつのモデル、その4 気筒仕様の4 台に注目してみた。(Motor Magazine2022年12月号より)

「エモーショナル」がすべてのアルファロメオの共通項
前を走るジュリアがスイッと身を翻してコーナーに入っていくときの一瞬、ボディサイドの抑揚が光を複雑に跳ね返すのが見えて、ああ、綺麗だな、と思った。ミラーにチラッと映った後続のステルヴィオも同様だ。どちらも塊感の強さに気をとられてしまいがちだが、実は意外や彫刻的だ。

●【くるま問答】ガソリンの給油口は、なぜクルマによって右だったり左だったりするのか

ジュリアの日本上陸は2017年、ステルヴィオは2018年。それなりに時間が経っているのに褪せた感じがせず、相も変わらず悪目立ちのしない絶妙な華やかさを漂わせている。筋肉質ではあるが、攻撃的じゃない。

スタイリングをまとめたアレッサンドロ・マッコリーニ氏は、4Cをデザインしたことでも知られており、もちろん最新のトナーレも手掛けている。だが、彼の代表作を問われたら、僕ならこのカテゴリー違いの姉妹車の名を迷うことなく挙げるだろう。造形美が明確な生命線となるスポーツカーでもないのに、そこへのこだわりがフォルムからもディテールからも伝わってくる。

歴史的に見て、ほとんどすべてのアルファロメオは美しい。いや、美醜は個々の感性によって判断されるものだから、言葉を改めよう。ほとんどすべてのアルファロメオは、素晴らしく印象的である。見る者の心に、必ず何かしらを残すのだ。

そして同じく歴史的に見て、ほとんどすべてのアルファロメオは、エモーショナルでもある。ドライバーの心をくすぐる術を心得てるのだ。もちろんジュリアもステルヴィオもその方程式のとおりで、それぞれ同じクラスのライバルたちの中に肩を並べるクルマも、そう多くはない。

操縦する楽しさ、走らせた時の気持ち良さは、もはやスポーツカーの領域にあるじゃないか。目的地までの移動の間、ジュリアを追うもう1台のジュリアのハンドルを握りながら、僕はそんなことを考えるでもなく考えていた。

4気筒エンジン搭載モデル。それぞれ独自の良さがある
ジュリアTIとジュリア ヴェローチェ、ステルヴィオTIとステルヴィオ ヴェローチェという現行モデル4台に共通するのは、直列4気筒エンジンを搭載する、ということ。ステルヴィオTIのみが210psと470Nmを発生する2.2Lのターボディーゼルを積むが、ほかの3台はガソリンの2Lターボ。

ジュリアTIは200psと330Nm、ジュリアとステルヴィオの両ヴェローチェは280psと400Nm仕様だ。
御存知のとおりジュリアとステルヴィオの頂点には、510psと600Nmを誇る2.9LのV型6気筒ツインターボエンジン搭載のクアドリフォリオというモデルが君臨している。

フェラーリ由来といえる名機を積んだクアドリフォリオの評価は、世界的にものすごく高い。僕個人としても、完全に同意だ。しかし、上には上がある。ジュリアに関していうならば、クアドリフォリオをベースにアルファロメオが徹底的に仕上げたスペシャルモデル、GTA/GTAmが存在していて、それはクアドリフォリオをさらに、それもかなり大きく上回る興奮と快感をドライバーに与えてくれる。

ならば、それらと比べたら大人しめに思える4気筒のモデルはダメなのか? いやいや、とんでもない。TIにはTIの、ヴェローチェにはヴェローチェの良さというものがちゃんとある。4台を代わる代わる走らせて僕はニンマリしつつ、改めてそう実感した。

そもそもジュリアとステルヴィオのプロジェクトは、2010年代の前半、それまでの自分たちのクルマ作りを振り返り、あらためて「アルファロメオとはどうあるべきか」を自らに問うところからスタートしている。ブランドの変革を目的としてゼロから生み出そうとした、というわけだ。

そして彼らが選択したのは、思い切り意訳するなら「革新的で魅力のあるエンジン」「50対50の重量配分」「独自の技術ソリューション(による駆動レイアウト)」「良好なパワーウエイトレシオ」「明確なイタリアンデザイン」といった5つの項目。つまりデザインはともかくとして、「徹頭徹尾ドライバーズカーであれ」だったのだ。

ありとあらゆる部分が、実は特別誂えみたいなもの
モータースポーツで数々の栄光を手中にし、その世界の熱さをドライバーが垣間見ることのできたかつてのようなクルマ作りに、最新の技術や素材を使って現代のやり方で取り組もう、ということでもある。そのために長い沈黙を破って、根幹となるモデルには後輪駆動もしくは後輪駆動ベースの4WDを採用することにした。

一説には、軽く1000億円を越えるといわれるコストをかけて後輪駆動のための「ジョルジオ」プラットフォームを開発した。2.9L V6ツインターボのフラッグシップエンジンのほかに、カムシャフトではなく油圧ピストンでインレットバルブを駆動することで吸気の自由度を高めるマルチエアシステムを採用する、専用エンジンも新開発した。

プロダクションモデルでありながら、軽量化と重量バランスのため、カーボン製のプロペラシャフトを全車に惜しみなく与えた。同じ理由で全車のフロントフェンダーとドアのアウター、エンジンフード、ジュリアについてはルーフまでもがアルミニウム製となった。

他にも、まだまだ並べ立てるべき要素はたくさんあるのだけど、いや、もうそれこそキリがない。ここをしっかり理解している人はあまり多くない気がするのだが、普通に販売されているジュリアとステルヴィオのありとあらゆる部分が、実は特別誂えみたいなものなのである。そんな風にして作り上げられたクルマがつまらないわけないだろう、ということは、クルマ好きなら簡単に想像できるはずだ。ありとあらゆる部分が、実は特別誂えみたいなもの

現在、ジュリアとステルヴィオの4気筒モデルには、それぞれ2種類の個性がラインナップされて
いる。TIはトゥーリズモインテルナツィオナーレ(=ツーリング・インターナショナル)で、エント
リーグレードにしてグランドツアラー的な要素を持つ。ヴェローチェはその名のとおり「速い」モ
デルで、アルミ製の変速パドルやLSDが備わることからもわかるとおり、スポーツグレードである。

スペックよりも乗り味で評価。抜群に気持ちが良いジュリア
最初は基本形ともいえる、ジュリアTIだ。ヴェローチェと比べると、80psと70Nmも大人しいエンジンのスペックは物足りないんじゃないか?と思えるかもしれない。ところが少し走らせてみると、そんなことは微塵もないのが瞬時にわかる。

発進直後の1750rpmで最大トルクの330Nmを発生するこのエンジンは、いうなれば全域トルク型。どこからアクセルペダルを踏み込んでいってもスムーズに力強く加速する様子と持ち前のシャープなレスポンスはなかなか気持ち良い。変速パドルはないが、セレクターでのシーケンシャル操作は受け付けてくれるから、峠道だって十分に楽しめる。

ただし本来の性格として、高回転域まで積極的に回すよりも、厚みのあるトルクを活かして適度+αくらいのペースで走る方がさらに気持ちいい。大人のためのジュリア、といった感じだ。ただ、静かな中にも昔のアルファロメオを彷彿とさせる歯切れの良いサウンドが聞こえてくるので、ついその気になってしまうのだけれどね。

やっぱりそういう走らせ方を楽しみたいなら、ヴェローチェの方が似つかわしい。走り始めた直後は、感覚的にTIと大差がないように感じられるが、中回転域から高回転域に向かっていく時の伸びが違う。シャープさも一段上だし速度もはっきりと乗りがいいし、まさに胸がすくようなスポーツエンジンだ。

コーナーから立ち上がって加速していく時なんて、思わず口元が緩むほど。個人的には2L直4ターボではもっとも好きなエンジンで、抜群に楽しい。そしてTIにもヴェローチェにも共通してるのは、身のこなしの見事さである。ギア比が11.7対1という超クイックなレシオを備えるハンドルをスッと切り込むと、ノーズが瞬時に鋭く内側に向こうとする。

そのシャープな動きを、ホイールベース長めの安定方向のシャシが受けとめる。気持ち良くターンインを決められるのに、そこから先は危なげなくコーナーを素早くクリアできるのだ。

サスペンションも硬めではあるが動きそのものはしなやかで、きっちり路面を捕らえ続けてくれる。姿勢はニュートラルを保ち続け、よほど無茶をしない限りオーバーステアに転じようとする動きを見せたりはしない。曲がることが楽しい。気持ち良い。癖になる。

LSDが備わる分だけヴェローチェの方が濃密な感触だが、どちらのジュリアもまさにここが真骨頂。これほどの曲がりっぷりを見せてくれるセダン、他に知らない。

車高の高さを感じさせない曲がりっぷりのステルヴィオ
それはステルヴィオについても同様で、背の高さを感じさせずジュリアによく似たフィールでスパスパと気持ちよくコーナーを置き去りにしていく様子は、見事と言うしかない。車重がある分、シャシはジュリアよりやや硬めだが「キミって確かSUVだったよね?」と訊ねたくなるくらいの曲がりっぷりは、快感ですらある。

ヴェローチェのエンジンはジュリアとまったく同じで満足感も高いが、TIのディーゼルターボも1250rpmで300Nm、1750rpmで470Nmを発生してくれてその加速力は結構、強力だ。しかも高回転まで淀みなく回ってくれるし、アクセルペダル操作に対して素早く反応してくれるから、楽しく走りたい気持ちが阻害されない。その上、ガソリンエンジンに対して10kgほどしか重くないから、ハンドリングもほぼ影響を受けていない。たっぷりとスポーツできるディーゼルだ。

4車4様なれど、アルファがこだわりにこだわり抜いて開発した4気筒のセダンとSUV。ショールーム周りの試乗ぐらいだと伝わりにくいが、この素晴らしさをもっと多くの人に知ってもらえるといいのに、と心から願っている。(文:嶋田智之/写真:赤松 孝)

■アルファロメオ ステルヴィオ 2.2ターボディーゼル Q4 TI主要諸元
●全長×全幅×全高:4690×1905×1680mm
●ホイールベース:2820mm
●車両重量:1820kg
●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量:2142cc
●最高出力:154kW(210ps)/3500rpm
●最大トルク:470Nm/1750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:軽油・64L
●WLTCモード燃費:16.0km/L
●タイヤサイズ:255/45R20
●車両価格(税込):703万円

■アルファロメオ ステルヴィオ 2.0ターボ Q4 ヴェローチェ主要諸元
●全長×全幅×全高:4690×1905×1680mm
●ホイールベース:2820mm
●車両重量:1810kg
●エンジン:直4SOHCマルチエアターボ
●総排気量:1995cc
●最高出力:206kW(280ps)/5250rpm
●最大トルク:400Nm/2250rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・64L
●WLTCモード燃費:10.9km/L
●タイヤサイズ:255/40R21
●車両価格(税込):795万円

■アルファロメオ ジュリア 2.0ターボ TI主要諸元
●全長×全幅×全高:4645×1865×1435mm
●ホイールベース:2820mm
●車両重量:1590kg
●エンジン:直4SOHCマルチエアターボ
●総排気量:1995cc
●最高出力:148kW(200ps)/4500rpm
●最大トルク:330Nm/1750rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・58L
●WLTCモード燃費:12.4km/L
●タイヤサイズ:255/45R18
●車両価格(税込):573万円*
*ジュリア2.0ターボTIは当面、在庫販売のみのため最新在庫状況についてはアルファロメオ正規ディーラーにお問い合わせ下さい。

■アルファロメオ ジュリア 2.0ターボ ヴェローチェ主要諸元
●全長×全幅×全高:4655×1865×1435mm
●ホイールベース:2820mm
●車両重量:1630kg
●エンジン:直4SOHCマルチエアターボ
●総排気量:1995cc
●最高出力:206kW(280ps)/5250rpm
●最大トルク:400Nm/2250rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:FR
●燃料・タンク容量:プレミアム・58L
●WLTCモード燃費:12.1km/L
●タイヤサイズ:255/35R19
●車両価格(税込):646万円

[ アルバム : 悩ましくも楽しきアルファロメオ 「ジュリアとステルヴィオの4気筒モデル選び」 はオリジナルサイトでご覧ください ]

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