英国製自動車の10%以上を生産
今から100年ほど前、1900年代初頭の英国では、前例がないほど多くの自動車メーカーが誕生し、潰れた。クルマの技術やデザインは日進月歩で進化し、新たな生産方法や宣伝手法が模索されていた。
【画像】今はなきブランド ベルサイズ・モータースの15hp 同年代のクラシックと比較 全76枚
自動車黎明期といえ、クルマを設計し、生産し、販売するための正攻法的な雛形は確立していなかった。アイデアへ実験的に取り組み、成功といえる結果を導いたメーカーのみが生き残り、成長することができた。
そのような環境下で誕生した1社が、今回ご紹介するベルサイズ・モータース。同社として初のモデル発表から22年後にも「15hp」を開発し、生存競争を比較的長く勝ち抜いていた。
この15hpは、1919年にベルサイズが生産した唯一のモデルで、翌年移行も量産が続けられた。モーター誌など、当時の自動車メディアにも登場し、広報や宣伝といった手法の形成にもつながった。
だが、その時既にベルサイズは存亡の危機にあった。1914年に始まった第一次世界大戦以前の、好景気に沸いた勢いは失われていた。
このブランドを振り返ると、もはや存在しないという事実に疑問を抱いてしまう。25年以上もクルマを生産したが、現在ではインターネット上で得られる情報もひと握り。1910年代半ばには、英国製自動車の10%以上をベルサイズが生産していたのだ。
バーミンガムで1番のタクシー・メーカー
同社がグレートブリテン島の中東部にある都市、マンチェスター・クレイトンで創業したのは1896年。自転車工場のベルサイズ・ワークス社をベースに、マーシャル・アンド・カンパニー社としてスタートした。
初めて生産したクルマは、フレンチ・ヘルツ。基本的には単気筒エンジンにベルトとチェーンのトランスミッションが組まれた、ベンツのコピー・モデルだった。しかし創業当時から、向上心の熱い技術者魂が社内には存在していた。
経営責任者だったジェームズ・ホイル・スミス氏はその筆頭。繊維業界で用いられる道具の特許権を所有する人物だった。また、取締役会のジョージ・ピルキントン・ドーソン氏とジェラルド・ヒギンボサム氏も、経験を積んだ技術者だった。
1728ccの2気筒エンジンをシャフトドライブした初の独自モデル、12hpが誕生するのも自然な流れといえた。社名も、しばらくしてマーシャル・ベルサイズへ変更された。
12hpは比較的成功といえる結果を残した。それを受け、1903年までに更なる投資が進められた。社名はベルサイズ・モーター・アンド・エンジニアリング社へ改称。株式の発行で、投資家からの資金調達も順調だった。
1906年にはベルサイズ・モータース社へ改められ、事業内容も多様化。第一次世界大戦前の1911年には、大型トラックや消防車、タクシーなどの生産も手掛けるようになっていた。バーミンガムで1番のタクシー・メーカーになっていた。
一次大戦前にはフォードに次ぐ規模へ成長
この事業展開は、収益性の高い中流階級向け自動車市場への進出・拡大にも貢献した。同じマンチェスターにはフォードも拠点を置き、初の量産車、モデルTを展開していた。だがベルサイズも負けじと、3.0Lから11.7Lの排気量を持つクルマを大量生産した。
ベルサイズのモデルたちは正常進化を辿り、1906年に発表された24/30には、シャフトドライブの駆動系に5880ccの直列6気筒エンジンを搭載。2年後には40hpと60hpも発売された。
マンチェスターには、クロスリー社というライバルもあった。それでもモデルレンジの幅や最高出力などを比べると差は大きく、第一次世界大戦を生き延びることはできなかった。
一方のベルサイズは、英国最大の自動車メーカーとなったフォードに次ぐ規模へ成長。1914年までに6000台のクルマがラインオフし、英国2番目のブランドとして確かな評価を獲得していた。
1913年の従業員は約1500名。その時には、年間3000台の量産体制にあったという。
ところが、今回ご紹介する15hpの発売から6年後に、同社は倒産してしまう。明るい未来を導くことができなかった理由は何だったのか、貴重な1台を紐解いてみよう。
スペックや実車を観察してみても、その明確な手がかりは感じられない。だが1919年当時、15hpはベルサイズとして唯一の、戦後モデルになっていたことは事実だ。
上質さを感じる見た目と信頼性の高さ
エンジンはオリジナルのモノブロック・サイドバルブを採用した直列4気筒。ロングストローク型で排気量は2799ccある。ゼニス社製のキャブレターで混合気を送り、当時のRACと呼ばれる基準で20.1bhp(20.3ps)を発生した。
カムシャフトで駆動するチェーンで、冷却ファンを回転。さらにファンから伸びる2本目のチェーンが、ダイナモ(発電機)を回している。
トランスミッションは4速のマニュアル。コーンクラッチが備わり、後輪を駆動する。ブレーキはドラムでリアにしか備わらないが、当時としては一般的な仕様といえた。
シャシーには、13フィート6インチ(約3844mm)と、14フィート(約4267mm)の2種類の長さが用意されていた。当時の価格は400ポンドから。今回の試乗車のような、4シーター・ツーリングボディの場合は540ポンドだった。
ダイナモで点灯するライトにクラクション、スペアタイヤ、フロントガラス、ツールキットなどが標準装備。今回のクルマの場合はセルフスターター付きで、さらに30ポンド高かったという。
15hpのボディは、それほど強い印象を与えないものの、醤油顔的にハンサム。当時のオースチンやサンビームなどと並んでも、見劣りすることはなかったはず。上質さを感じさせる保守的なルックスに加えて、機械的な信頼性の高さが評価されていた。
内容を知るほどに、ベルサイズ社の経営を傾けた理由が見えなくなる。一見すると、15hpの内容は悪くない。
この続きは後編にて。
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