2021年8月に発表となり、今秋の発売が予定されている、日産「ノートオーラNISMO」。新世代のNISMOデザインに、次世代e-POWERのシームレスで強い加速力と、それに呼応するシャープで強烈なハンドリングをもつノートオーラNISMOは、クルマ好きを唸らせる、極上なホットハッチに仕上がっている。
しかし、いいモデルだからこそ、あとひとつ、どうしても追加してほしいアイテムがある。それは…。
クラスを超えた乗り心地!! VIPカー顔負けの快適性を持つ意外な実力車 4選
文:吉川賢一
写真: NISSAN、ベストカー編集部
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「走る楽しさ」を狙ったコンプリートカー
ノートオーラNISMOは、純粋に「走る楽しさ」を狙ったコンプリートカーだ。ノートオーラをベースとして、NISMOのレーシングマシンを思わせる、ド派手なエアロパーツの数々で武装し、低重心かつワイドアンドローなフォルムとしている。
先代のノートe-POWER NISMOを上回る、ド派手な空力アイテムは、デザイン的にも、このクルマを所有することの満足感を得ることができ、ポイントが高い。
ノートオーラNISMO 4125×1735×1505(全長×全幅×全高)mm、ホイールベース2600mm、車両重量1270kg、FF、車両本体価格は税込286万9900円からとなる
また、フロントオーバーハングやリヤオーバーハングの延長、サスペンションのローダウン、リヤスポイラー形状の最適化など、車両全体で、ダウンフォースを増大させている。タイヤは、超ハイグリップなミシュラン製パイロットスポーツ4(サイズは205/50R17)を装着。
205/50R17のタイヤホイールを装着。ノートオーラからリム幅を0.5インチ増加させ、7.0Jのツートーン鍛造アルミホイールとした。タイヤはミシュランのパイロットスポーツ4。強烈なグリップを誇るスポーツタイヤだ
パワートレインは、ベースとなるノートオーラと同じ、モーター最高出力100kW[136ps]/3183-8500rpm、最大トルク300Nm/0-3183rpmのe-POWERシステムだが、味付けが大きく変えられており、ノートオーラのSPORTモードがNISMOのECOモード相当になるよう調節したうえで、NISMOモードを新設。力強く伸びのある加速感を味わえるようにした。
この「NISMOモード」が、パンチが効いていて実に面白い。遅れがなく強い加速はじわっと手汗が出るほどだった。ハイグリップタイヤも効果抜群で、1200kg少々という軽量ボディもあって、ステアリングのレスポンス、限界ともに、めちゃくちゃ良い。
といったように、ノートオーラNISMOは、今のままでも十分、走行性能のポテンシャルが高い。しかし、冒頭で触れたように、いいモデルだからこそ、あとひとつどうしても欲しいアイテムがある。
ノートとノートオーラにはFFに加えて4WDがあるが、NISMOにはFFのみ。そう、ノートオーラNISMOにどうしても欲しいのは4WD、それも、ノートやノートオーラに搭載されている「e-POWER 4WD」システムだ。
フロントバンパー下のスプリッターは、フォーミュラEのレースカーに似たデザインが施されている
リアバンパー下はデフューザー形状としており、床下を通ってきた空気が、後方で発生する渦を車両から遠ざけ、ダウンフォースを生み出している
3.0L V6並みの最大トルクを発生する「e-POWER 4WD」
「e-POWER 4WD」は、前後輪を強力なモーターで駆動する電動4WDだ。コンパクトカーの4WDは生活4WD(=雪国で発進時だけに使うような弱い出力)程度である場合も多いが、e-POWER 4WDはその範疇には収まらない、高いポテンシャルをもっている。
e-POWER 4WDは、リア車軸に最高出力50kW/最大トルク100Nmのモーターを搭載している。これは、先代であるE12ノート4WDのリアモーター出力(3.5kW)と比較すると、なんと14倍もの容量だ。
ちなみに、ヤリスHYBRIDの4WD、E-Fourの後輪用モーターは、最高出力3.9kW(5.3ps)/最大トルク52Nm程度。フィットe:HEVはプロペラシャフトを備えた4WDだ(リアにモーターを持たない)。
現行ノートe-POWERの4WDの場合、フロントモーターの出力と合わせれば135kW級(最大出力は184ps)、最大トルクは380Nmにもなる。車重1340kg(FFは1220kgなのでプラス120kg)に、3.0L V6並みの最大トルクを発生するモーターを備えることを考えれば、相当に痛快な走りができることは、みなさんも想像がつくだろう。
後輪用モーターのサイズアップによって、車両後部のフロアレイアウトが相当難しかったそうだ。だがその分、e-POWER 4WDのパフォーマンスは大いに期待できる
ノート勢には出力を絞って搭載
しかし、実際のところ、ここまで大きなリアモーターは、ノートやノートオーラにはオーバースペックにも感じる。2020年末に行われたノートの試乗会で、日産のエンジニアの方も、「今回のノートの4WD車は、いままでの生活4WDとはかけ離れた高い動性能を実現できました。ただしリアモーターの出力は、完全にオーバースペックであり、出力は適宜絞っています。」と、話されていた。
だがそこは、生粋のレーシングチーム「NISMO」のエンジニア集団だ。巧みなモーター出力制御を行い、4WD駆動パフォーマンスを引き出す「スペシャルセッティング」をこしらえてくれるに違いない。
例えば、後輪側のトルク重視にして、疑似的にFRに近いフィーリングにすることも、不可能ではないはずだ(ひょっとするとアリアのe-4ORCEでやってくるのかもしれないが)。せっかく、ベース車であるノートオーラにe-POWER 4WDという極上素材があるのに、NISMOでやらないのは非常にもったいない。
おそらく、この「e-POWER 4WD」は、まもなく国内でも発表されるであろう「新型エクストレイル」や、欧州で2021年2月に発表された「新型キャシュカイ」といったミドルクラスSUV用に開発した技術であり、それをノート勢にも採用した、ということなのだと筆者は考えている。
1.5Lサイズの可変圧縮比エンジン、VCターボを発電専用エンジンとして搭載した新型e-POWERを搭載する
すこし話がそれるが、新型キャッシュカイには、1.5Lサイズの可変圧縮比エンジン「VCターボ」を発電専用エンジンとして搭載した「e-POWERターボ」が採用されることが発表されている。「e-POWERターボ」は、最高出力140kW(187ps)、最大トルクは330Nmにもなるという。
おそらく、日本仕向けの新型エクストレイルにも、このe-POWERターボ、そして「e-POWER 4WD」も搭載されるであろう。エクストレイルの4WDの車重(約1.6トン)を動かすにも十分なスペックだ。
e-POWER 4WD搭載で「GRヤリス並の最大トルク」に!!
最新スポーツコンパクト4WD、トヨタ「GRヤリス」の1.6L直3ターボのスペックは、最高出力200kW(272ps)/最大トルク370Nm。GRヤリスは国際ラリーで戦うマシンのベース車、ノートオーラNISMOはあくまでシティレーサー、といったように、想定されるシーンが違うのは承知の上だが、ノートオーラNISMOにe-POWER 4WDが搭載されれば、最大トルクに関しては同等レベルとなる。
GRヤリスとガチンコ戦えるのは、ノートオーラNISMOの4WDしかないのでは!?
こうなると、是が非でもノートオーラNISMOの4WD仕様が見てみたくなる。そして、そうなれば、日産がラリー競技に復帰し、再びトヨタと戦うような展開も夢ではないのでは…と、妄想している。
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