インテリアや走行性能をアルヴェルと徹底比較!
今、ミニバンファンの間で話題になっているのが、トヨタから登場したビッグサイズの高級ワゴン、日本専用の上級送迎車として開発されたグランエースだ。そのボディサイズは全長5300mm、全幅1970mm、全高1990mm、ホイールベース3210mmというもの。これまでトヨタの最上級ミニバン、大空間サルーンのアルファード&ヴェルファイアの全長4945mm、全幅1850mm、全高1950mm、ホイールベース3000mmを大きく上まわるのである。
なぜグランエースとして導入? 新型ハイエースが日本で「ハイエース」を名乗らないワケ
グランエースの大きな特徴のひとつが、シートレイアウト。アルファード&ヴェルファイアは2列目席に4種類のシートバリエーションを持つものの、ミニバンとして当たり前だが3列。しかしグランエースは3列と4列のシートレイアウトを用意している。
ここでは、グランエースとアルファード&ヴェルファイアを比較するため、グランエースはプレミアムと呼ばれる3列シートモデルを取り上げて、室内の豪華さや走行性能について比べてみたい。
まず、グランエースで特筆すべきは2、3列目席のエクスクルーシブさだ。何しろ2、3列席ともに、アルファード&ヴェルファイアの上級仕様となる、セパレートタイプかつ本革張りのエグゼクティブパワーシートが奢られているのだ。つまり、2、3列目席の豪華さ、居住感覚に差がないというわけだ。
その点、アルファード&ヴェルファイアは、2列目席こそエグゼクティブパワーシートが選べるものの、3列目席は左右ハネ上げ式格納前提の5:5分割シートになる。2、3列目席の居住性、かけ心地に大きな差がある。4~5人のゲストを同時に運ぶ、あるいは3~4名のVIPを後席に乗せるのであれば、グランエースに軍配が上がるのは、もちろんだ。
そんな贅沢感極まる後席を持つグランエースだが、その車名が表すように、ベースはアジア向けハイエース。プラットフォームは商用車ベースのハイエースそのもので(フロントサスペンションはストラット、リヤサスペンションは車軸式)、駆動方式はFR。パワーユニットも1DG 2.8リッタークリーンディーゼルエンジン+6速ATのみ。WLTCモードは10.0km/Lとなる。アルファード&ヴェルファイアのように2.5リッターエンジン+2モーターのハイブリッドや、3.5リッターV6+8速ATなどは用意されないのである。
ここで、「室内は豪華でも走りはハイエース?」という意地悪い疑問が湧くのは当然。実際、試乗を開始するまでは、業界でミニバンキングと呼ばれていたこともあるボクはそう思っていた。
乗り心地や小回り性能など上級送迎車として十分な性能をもつ
運転席、パワースライド&大開口スライドドアによる後席への乗降性は、なるほど、ハイエースというか、商用車感覚だ。つまり、前席のステップ高は約390mm。フロアはそこから約240mm高い位置にあるため、よじ登り感はぬぐえない。スライドドア部分も、ステップ高約410mm。フロアはそこから約240mm高いのだから、これまたよじ登り感ある乗車となる。
ちなみにアルファード&ヴェルファイアの前席は、ステップ高約390mm、フロアはそこから約50mmの高さでしかなく、思いのほか楽々乗車できる。スライドドア部分もステップ高約350mm、フロアはそこから約100mm高い位置にあるだけなので、グランエースに比べればはるかにスムースに乗車できることになる。
これはかなりマニアックなデータだが、3列目席へのウォークイン乗車時の間口寸法は、ともにワンタッチスライド機構を持つグランエースの実測最大470mmが優位。アルファード&ヴェルファイアは同355mmである。フロアは高いが、身幅の広い人でも乗り降りしやすいのは、さすがに全長、ホイールベースに余裕あるグランエースということだ。
グランエースとアルファード&ヴェルファイアの走行性能の違いはどうか。正直に言って、グランエースの走りには期待していなかったのだが、走り出してびっくり。前席のドライビングポジションはごく自然な乗用車感覚であり、高さを生かした前方視界の良さはもちろん、低めで前傾したショルダーラインによって、左右の見切りまで抜群なのである。
動力性能は街乗り重視の穏やかなものながら、ディーゼルエンジンのトルキーなテイストを生かした走りやすさが際立つもの。もちろん、アルファード&ヴェルファイアのような滑らかでスムースなエンジンフィール、3.5リッターV6の豪放極まる加速力こそ望めないものの、上級送迎車としては必要十分という印象だ。
では、上級送迎車として肝心な乗り心地はどうだろう。これにも期待薄だったのだが、2度、びっくりさせられた。何しろ1、2列席なら、想定外に上質で心地よい乗り心地を示してくれたのだ。3列目席は豪華なエグゼクティブパワーシートによってかけ心地は素晴らしいものの、荒れた路面、段差越えのシーンに限れば、やや振動が伝わりやすく感じる。これはシート位置がリヤオーバーハング上にあるから、致し方ないところではある。
アルファード&ヴェルファイアの乗り心地は、まさにトヨタの大空間高級サルーンそのものだが、ハイエースベースのグランエースがここまで肉薄した乗り心地を示したくれたのには、繰り返すけれど驚きを隠せない。
しかも、アルファード&ヴェルファイアのエグゼクティブラウンジシート、エグゼクティブパワーシートは、シートの重さ、重心の高さ、シートレールへの取り付け部剛性の限界から、シート内に制振ダンパーを組み込んでいるにもかかわらず、路面、速度によっては、とくにひじ掛け部分の振動が取り切れていないのだが、グランエースではそのウィークポイントが、ほぼ解消されているのである。
その理由を開発陣に聞いたところ、まずはプラットフォームの違いがあり、グランエースはハイエースベースゆえ、タフさや剛性面で優位な、一直線に伸びる環状骨格フレームを採用していることが挙げられるという(フロアの高さはバーターとも言える)。また、スライド用のシートレールの幅を、アルファード&ヴェルファイアのものより広げたことも効いているとのことだ。
結果、こと2、3列目席の乗り心地をアルファード&ヴェルファイアのエグゼクティブパワーシート、エグゼクティブラウンジシート仕様と比較すると、グランエースのほうが微細な振動減によって、とくに2列目席ではより快適に感じられるシーンもあるということだ。
最後に運転手の立場で言えば、この巨体にして最小回転半径5.6mの小まわり性の良さから、意外すぎるほどUターンがしやすかった事実も報告しておこう。リヤウインドウ越しの視界は、3列目席の豪華なエグゼクティブパワーシートの大きなヘッドレストに遮られる面積も大きいのだが、車体後方カメラ(洗浄機能付き!)の映像を、ルームミラーにディスプレイ表示してくれるから、安心だ。最新のトヨタセーフティセンス=先進安全運転支援機能やSOSコールが用意されている点も、アルファード&ヴェルファイアと比べ、遜色なしである。
結論としては、グランエースのプレミアムグレードに限り、後席4座の贅沢感に満ちた居住性重視で選ぶなら、グランエースに軍配が上がると考えても良さそうだ。ただ、ファミリーミニバンとして使う場合は、自宅のガレージに入るか、フロントドアを全開できるか、いつもの走行ルートでボディを持て余さないかなど、熟慮する必要はある。巨体は巨体だからだ。
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他社 車の邪魔になるし、物理的に出られなくなる車も出る可能性があるので。
停めてるのを見たら通報します。