トヨタ「カムリ」の日本国内販売終了が3月22日、報じられた。カムリの存在意義とは? 小川フミオが考えた。
実直なセダン
SUVばやりの昨今だが、セダンづくりにかけて、トヨタは上手で、さまざまな見識を持ち合わせていた。
代表的なトヨタのセダンといえば、そりゃあ「クラウン」(新型のセダンは2023年中に発売予定)と「センチュリー」だけれど、私にとって思い出深い1台はカムリだ。
最新のカムリは2017年に登場した10代目。つい最近、一部メディアが現行カムリの日本国内販売終了を報じ、話題になっているようだ。日本からカムリがなくなるとしたら、寂しい。
ただし、トヨタ自動車の広報部では、2023年3月23日の時点で、そのニュースについてノーコメントを貫いているので、まぁ、誤報であってほしい気もする。
カムリの良さは、前輪駆動方式で効率のよいパッケージをフルに活用したセダンであること。フォルクスワーゲンの「パサート」に通じる実直さが感じられる。
初代が登場したのは1980年で、このクルマは2500mmのホイールベースをもった後輪駆動。「セリカ・カムリ」と名付けられていて(中身はカリーナ)、ちょっとスポーティな印象だった。
私はこの初代がけっこう好きで、サイドウインドウ下の車体ショルダー部分をふくらませたデザインや、パワー感のある「2000GT」の設定など、存在感がそれなりに大きなモデルだった。
いまに続くカムリシリーズのオリジンともいえるのは、1982年にフルモデルチェンジを受けて前輪駆動になった2代目だ。
カムリとビスタという2本立てで、セリングポイントは室内の広さ。トヨタのセダンとしてはめずらしく、リアクオーターパネルに明かり採りをもうけた6ライトのボディも、広さを強調していた。
その後カムリは、1986年に3代目、1990年に4代目、1994年に5代目とモデルチェンジ。1996年にはカムリ・グラシアと呼ぶ3ナンバーボディも設定された。並行するように5代目は1998年まで作られて終了。6代目に相当する上記グラシアが2001年まで生産された。
2001年の7代目では、グラシアで載せたV6エンジンは廃止され、カムリの名とともに、4気筒搭載車に戻った。共用の2720mmものロングホイールベースが特徴的ともいえた。
やっぱり寂しい2006年の8代目は、バブル経済が崩壊したときにいっきにコストダウンした歴史を完璧に払拭するような、細部にいたるまで手のこんだデザインだったのが記憶に残っている。
もうひとつは、この8代目から、エモーショナルな造型が採用された点。波状のグリルなど、好き嫌いはわかれると思うけれど、ひと目みてカムリとわかるデザインだった。
2011年に登場した9代目は、全長4825mm、ホイールベース2775mmと余裕あるサイズのボディに、ハイブリッドパワートレインを搭載したのが特徴。
現行モデルにつながる巨大なフロントのエアダム(これもかなり好き嫌いは分かれると思う)も、9代目で採用されたものだ。そういえば、マイナーチェンジを機に松田聖子がCMに起用されたのも印象に残る。
このころカムリはグローバルカーとなっていて、北米市場でもセールスは好調だったし、北米、中国、タイ、それに豪州(現在は生産拠点閉鎖)などでも生産が続いてきた。
現行モデルが登場したときは、9代目をさらに上まわるようなデザイン要素が満載で、驚いたものだ。
薄いヘッドランプに、開口部を強調したフロントマスク、強く抑揚のついたボディアンダーガーニッシュからリアホイールフレアまでの流れが目をひく。ファストバックスタイルのリヤまわりや、フローティングデザインが採用されたルーフのデザイン処理が目をひく。
これらは発表時はやりすぎ感が強かったが、今みると、自然に受け止められる。
SUVに流れるユーザーを引き留めるためのデザイナーの工夫だったのかもしれない。そう考えると、なかなかうまい。
今のカムリのパワートレインは、2487ccガソリンエンジンを使ったハイブリッドのみ。モーターが1基あるいは2基、組み合わされる。
基本は前輪駆動車で、フロントモーターのトルクは207Nmもある。私はこの原稿を書いている前日に、たまたまカムリを走らせる機会があったので、印象は新鮮。走りは力強かった。出た当初は、EPS(電子制御式パワーステアリング)の制御がいまいちで、ステアリングフィールがいまひとつビシッとこなかったが、それも改良されて、好感度の高いモデルになっている。それゆえに、日本国内で販売中止となるのはやっぱり寂しい。
とはいえ日本市場における日本車のセダン市場は超縮小しているから、販売終了も致し方ないだろう。とくにミドルクラス以上は壊滅的で、トヨタこそクラウンやセンチュリー、レクサスも含めるとLSやESなど複数ラインナップするものの、ホンダはアコード、日産はスカイライン程度。レジェンド、インスパイア、セイバー(いずれもホンダ)、セフィーロ、ローレル、セドリック(いずれも日産)など数多くの名前があふれていた時代が懐かしい。
北米を中心に、海外市場ではカムリの人気は高めで維持されているようで、まっとうなセダンが評価されるのは、自動車好きとしては、わがことのようにうれしいものだ。日本市場でも再評価され、需要が増えることを期待したい。
ところでダイハツの「アルティス」(カムリのOEM版)はどうなるのだろうか……。
文・小川フミオ 編集・稲垣邦康(GQ)
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