予想価格を上回り落札!
2024年8月15日~17日にRMサザビーズがアメリカ・モントレーで開催したオークションにおいてロータス「エスプリ V8 SE ファイナルエディション」が出品されました。同車はトータルで79台が生産されましたが、エクステリアをソリッドブラックペイントで仕上げた例はわずかに4台しかありません。詳細をお伝えします。
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ボディデザインはジウジアーロだった
それまでライトウェイトスポーツの生産をビジネスの主力としていたロータスが、さらに上級で高性能なスーパースポーツの世界に進出しようと、1970年に「M70」のプロジェクト名のもと立ち上げたのが、のちに1975年のパリ・サロンでほぼプロダクションモデルに近い姿で公開された、ミッドシップ・スーパースポーツの「エスプリ」だった。
ロータスの位置づけとしては、それは「ヨーロッパ」の後継車としての役を担うものとされていたが、見る者をまず驚かせたのは、ジョルジョット・ジウジアーロの手による直線を基調とした未来的な雰囲気が醸し出された、そのボディスタイルにほかならなかった。
コンセプトカーではアルミニウム製であったボディ素材はFRP製へと変更され、ロータス伝統の軽量性という優位性は、エスプリにおいても変わることはなかった。ミッドに162ps仕様の2L直列4気筒エンジンを45度傾けて縦置き搭載した、最初のエスプリ(のちにS1と呼ばれることになる)のウエイトは公称値ではわずかに900kg。全長4260mm×全幅1861mm×全高1111mmというボディサイズからは想像もできないほどに軽量なモデルに仕上がっていたのだ。
30年近く生産されたエスプリの歴史
このS1で始まったエスプリの歴史は、当初誰もが予想していたよりもはるかに長く2004年まで、30年近くも続くことになった。その間、1978年には内外観にマイナーチェンジを受けた「S2」が、1981年には210psの2.2L 直列4気筒ターボエンジンを搭載する「ターボ」が(1986年にはさらに215ps仕様へと進化を遂げている)誕生。
さらにNA系のモデルは1980年に2.2Lで163psを発揮する直列4気筒エンジンを搭載した「S2.2」、1981年にはターボ用のシャシーにS2.2のエンジンを搭載した「S3」が発表され、こちらは1986年には172psへとその動力性能を向上させている。この時、同時にシャシーにもかなり大がかりな改良が加えられ、その走りは一気に洗練された。
1978年のロンドン・モーターショーでは、「HC」と「ターボHC」がデビューを飾った。HCとはハイコンプレッションの意で、圧縮比を高めることでさらに魅力的なパワースペックを得たエンジンが、それぞれのモデルには搭載された。ノンターボのHCは172ps、ターボのターボHCは215psだった。
その直後にはボッシュ製のKジェトロニックを搭載した「HCPI」も登場するのだが、これらのシリーズでの大きなトピックスはエンジンの強化のみではなく、エクステリアとインテリアのデザインがより丸みを帯びた現代的なものに改められたことだった。そのなめらかなボディはロータスのピーター・スティーブンスの手によるもの。エスプリの存在感が市場でさらに高まったのは言うまでもない。
エスプリはどんどんアップデートし最後はV8エンジンを搭載
だがエスプリの進化はまだまだ止まることはなかった。1990年モデルでは「ターボSE」が265psのパワースペックとともに誕生し、1992年にはエスプリのIMSA用レーシングマシン、「X180」をベースとする302ps仕様の「スポーツ300」が発表された。そしてターボ系モデルは265psの「S4」を経て、最終的には1996年に「V8」へと進化を遂げることになるのである。
ちなみに今回RMサザビーズがモントレー・オークションに出品した「V8 SE ファイナルエディション」は、V8のラグジュアリーモデルである「SE」をベースとした特別仕様車で、まさにエスプリの究極形ともいうべき1台。エスプリの生産最終年にあたる2003年に完成されたものだ。搭載エンジンは、V8のそれと同様に最高出力で350psを発揮する、3.5LのV型8気筒ツインターボ。ロータスがシリーズ4と呼ぶプラットフォームにはさらなる改良が加えられ、サスペンションには可変式のビルシュタイン製ダンパーにアイバッハ製スプリング、AP製のレーシングブレーキなども装備された。0-100km/h加速を4秒台前半でこなす加速性能も見逃せない。
コンディション抜群! 4台しかないレアカラーも価格に反映
エクステリアやインテリアにもファイナルエディションには独自のフィニッシュが数多く認められる。フロントのメッシュグリルにはシルバー仕上げのステンレススチール製インサートが装着され、リアもシルバー仕上げのロアバランスとマッチしている。
インテリアはエスプリの中で最もラグジュアリー。キルティングレザーシートに加え、ドア内張りにはパーフォレイテッドレザーが採用され、ダッシュボードにはアルミニウム製のエアコンノブが装備されている。短いサテン仕上げのアルミニウム製ギアノブは、ドライバーに素晴らしい触感を提供する。
エスプリ V8 SE ファイナルエディションは、トータルで79台が生産されたが、エクステリアをソリッドブラックペイントで仕上げた例はわずかに4台しかない。出品車はそのうち3台目にあたり、アメリカ・ジョージア州のディーラーから、アトランタのカスタマーに最初に納車された記録が残っている。
現在までの走行距離は1万2020マイル(約1万9232km)。車両に付属される整備記録簿や領収書は、このモデルがいかに大切にされてきたかを物語っている。RMサザビーズが提示した予想落札価格は12万~16万ドル(邦貨換算約1755万円~2300万円)。エスプリの歴史に終止符を打った貴重でコンディションに優れたモデルということでオークションは白熱し、入札は予想落札価格を超えても終わることはなかった。
最終的に入札が止まった数字は18万4800ドル(邦貨換算約2703万円)。それも当然の結果というべきなのだろうか。
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