積算3万2259km アウディA3と同じMQBが基礎骨格
フォルクスワーゲン・マルチバンほど、長期テストで重宝がられたクルマは少ない。それ故に、トラブルも少なくなかったけれど。
【画像】ご先祖はタイプII VWマルチバン BEVのID.バズ メルセデス・ベンツVクラスとEQVも 全124枚
英国編集部へクルマが届いてすぐ、同僚もメンバーになっているバンドのツアーバスとして駆り出され、グレートブリテン島を3000km以上走り回った。その後は新モデルの試乗取材などで、撮影車両として活躍してくれた。
このマルチバンは、戦後間もない頃に登場したフォルクスワーゲン・タイプ2の直接的な後継モデルに当たる。同社は3種類のワンボックスカーを提供しているが、T7を名乗ることがその証。電気自動車のID.バズが、デザイン的には近いとはいえ。
マルチバンで最大の特長といえるのが、アウディA3なども採用する、フォルクスワーゲン・グループのMQBプラットフォームを基礎骨格としていること。成り立ちが、商用車とは一線を画している。
それでも、車内空間はスクエアで広大。英国の場合、修理部品などは同社の商用車部門が管轄となる。
パワートレインは、150psの1.4L 4気筒ガソリン・ターボエンジンに115psの駆動用モーターが組み合わされた、プラグイン・ハイブリッド。システム総合で218psを発揮する。
フロア下に13kWhの駆動用バッテリーが敷かれ、カタログ上はエンジンを回さずに最長78kmを走れる。充電は、一般的な7kWのものでも、数時間あれば終えられる。
走りは滑らか 乗り心地はしなやか
ドライブモードは複数用意されているが、始動時のデフォルトはEVモード。ハイブリッド・モードへ切り替えれば、ガソリンエンジンを使用し、バッテリーの消費を抑えることもできる。これは、一般的なプラグイン・ハイブリッドと同様だ。
長期間運転してみた結果、フル充電状態でEVモードが持続されるのは、平均で24km程度。それ以降は、自動的にハイブリッド・モードになりエンジンが働き出す。ただし、市街地ではもう少し長く走れる。
ハイブリッド・モードでは、駆動用バッテリーに電気が残っている範囲、75km前後までなら約19.5km/Lの燃費を得られる。バッテリーが空になると、燃費は13.0km/L前後まで落ちる。
利用スタイルによっては、ディーゼルターボの方が経済的かもしれない。乗られる地域の税金体系によっても、ランニングコストは変わってくるだろう。
難しいことは置いておいて、マルチバンは非常に快適だった。洗練されていると表現できる質感を生んでいる理由は、プラットフォームによるところが大きいだろう。
車重は2243kgあり、ボディサイズは全長4973mm、全幅1941mm、全高1907mmと大きい。にも関わらず、走りは滑らかで、乗り心地はしなやか。運転が楽しいとまではいえないにしろ、何か我慢を求められるわけではない。素直で扱いやすい。
そんな特性だから、同僚から引っ張りだこだった。おかげで、ボディにはキズが耐えなかった。
ガラスとタイヤを交換 モニターはブラックアウト
最初の事件は、フロントガラスの飛び石キズ。荒れた路面でストレスが加わり、気温が冷えた数日後に大きなヒビへ広がってしまった。ガラス代は620ポンド(約11万2000円)。ガラス修理の専門店へ作業を依頼し、120ポンド(約2万2000円)で治った。
ドアが凹んだこともあった。同僚へ確認したが、恐らく誤ってキーフォブのボタンを押してしまい、電動スライドドアが開き、近くの荷物へ接触したことが原因のようだ。複数のクルマのキーがごちゃ混ぜに箱へ入っている、管理方法に問題があるといえる。
幸いにも、フォルクスワーゲンの本社で修理を済ませていただいた。板金店へ修理に出していたら数100ポンド(数万円)は掛かっていただろう。
フロントタイヤがパンクした時は、修理キットで応急処置。なんとか持ちこたえ、翌日、140ポンド(約2万5000円)で新しいブリヂストン・トゥランザへ交換となった。もっとも、これらはクルマに非があるわけではない。
インフォテインメント用タッチモニターが、動かなくなったことも。運転は可能だったものの、2日間ブラックアウトし、ラジオやエアコン、運転支援システムの多くが機能しなくなった。
いざ、ディーラーを尋ねる日になると復調。しばらく正常に動作していたが、後日再発している。
他のユーザーの報告を見ても、長期テスト車両に限ったトラブルではない様子。英国では数少ない、極めて実用的なワンボックスカーの1台なだけに、技術的な不具合は早々に解決されることを望みたい。
セカンドオピニオン
実際に運転するまで、商用バン的な走りを想像していたが、落ち着いた乗り心地と曖昧ではない身のこなしに驚かされた。プラグイン・ハイブリッドのパワートレインも、非常に完成度が高いといえる。
英国で乗るには少々大きすぎる、と感じる人もいるだろう。実用性に優れるとはいえ、都市部での運転には気を使ってしまうサイズだ。 クリス・カルマー
テストデータ
気に入っているトコロ
多機能なシート:重たいものの、取り外しが可能。レールに沿ってスライドし、回転もする。撮影車両やポッドキャストの録音スタジオとしても活躍した。
ステアリングホイール上のボタン:車線維持支援システムのスイッチが、ステアリングホイール上にある。ワンタッチでオン・オフを切り替えられる。
スライドドアとフラットなフロア:壁へ寄せて駐車しても大丈夫。運転席から立って移動し、スライドドアから降りることができる。
気に入らないトコロ
充電ポートの位置:車載の充電ケーブルが短いうえに、ポートの位置がフロントの右側にある。自宅の駐車場で充電する場合、前から突っ込んで停める必要があった。
インフォテインメント・システム:タッチモニターが動かなくなると、エアコンなども使えなくなる。
走行距離
テスト開始時積算距離:1万8314km
テスト終了時積算距離:3万2259km
価格
モデル名:フォルクスワーゲン・マルチバン 1.4TSI eハイブリッド 218ps スタイル(T7/英国仕様)
開始時の価格:5万9545ポンド(約1077万円)
現行の価格:5万9545ポンド(約1077万円)
テスト車の価格:6万6619ポンド(約1197万円)
オプション装備
ツートーン塗装:2700ポンド(約48万9000円)
パノラミック・ガラスルーフ:1500ポンド(約27万1000円)
パワーシート:1500ポンド(約27万1000円)
ハーマン・カードン・ハイファイオーディオ:1080ポンド(約19万5000円)
ディスカバープロ・ナビ&インフォテインメント:294ポンド(約5万3000円)
燃費&航続距離
カタログ燃費:52.6-55.5km/L
タンク容量:45L
駆動用バッテリー:13kWh
平均燃費:13.4km/L
最高燃費:19.6km/L
最低燃費:12.3km/L
航続可能距離:642km(24km/駆動用バッテリー)
主要諸元
全長:4973mm
全幅:1941mm
全高:1907mm
最高速度:191km/h
0-100km/h加速:9.0秒
車両重量:2243kg
パワートレイン:直列4気筒1395ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:218ps(システム総合)
最大トルク:25.3kg-m(システム総合)
ギアボックス:6速デュアルクラッチ・オートマティック
トランク容量:469-3672L
ホイールサイズ:17インチ7.5J
タイヤ:235/55 R17
メンテナンス&ランニングコスト
リース価格:685ポンド(12万4000円/1か月)
CO2 排出量:41-43g/km
メンテナンスコスト:275ポンド(約5万円)
その他コスト:740ポンド(約13万4000円/フロントガラス)、140ポンド(約2万5000円/タイヤ)
燃料コスト:1487ポンド(26万9000円/ガソリン)+104ポンド(1万9000円/電気)
燃料含めたランニングコスト:2746ポンド(49万7000円)
1マイル当りコスト:0.22ポンド(39円)
不具合:インフォテインメント・システムの不調
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