積算8832km タイヤを認識するアルトゥーラ
ピレリのサマータイヤへ履き替えた、長期テストのアルトゥーラ。ついに本領が発揮されるようになったと前回お伝えしたが、実は同じ経験を以前にもしている。数年前にお借りしていた、マクラーレン720Sでも同様の変化があった。
【画像】覚醒したパワートレインへ舌を巻く マクラーレン・アルトゥーラ 増殖中! HVスーパーカー 全153枚
スタッドレスタイヤから履き替えた途端、200馬力くらいパワーアップしたのでは、と感じるほどだった。それまでも、もちろん胸がすくほど速かった。だがサマータイヤを履いた720Sは、タガが外れたように速く感じられた。
それと似た変化が、ハイブリッドのアルトゥーラにも起きた。加速が鈍く感じることはなかったものの、駆動用モーターが加勢してもこの程度なのかな、と感じていたことは否定できない。
しかしこれは、単にスタッドレスタイヤのトラクションが制限していたことだった。高速域で表出するスリリングさには、息を呑むほど。マクラーレンへ電話し、この事実を確認せずにいられなかった。
スタッドレスタイヤを履いているとアルトゥーラが認識していることは、長期テストの早い段階で知っていた。ダッシュボード中央のタッチモニターでメニューを辿ると、現在のタイヤに関わる情報が表示されるからだ。
これは、スタッドレスタイヤが許容する速度を超えないため、重要なことといえる。一般的に、サマータイヤより100km/h程度は低い。また、最新の「サイバー」タイヤにはセンサーが内蔵されており、空気圧や表面温度が車載システムへ送られてもいる。
舌を巻くパワートレインのパワフルさ
筆者はてっきり、その情報を読み取り、アルトゥーラがパフォーマンスに制限をかけているのだろうと想像していた。ところが、マクラーレンの技術者へ確かめると違っていた。
V6エンジンの出力特性や、トラクション/スタビリティ・コントロールのマッピングは、タイヤを問わず同一だという。あらゆる状況に対応できるよう、始めからプログラミングされているそうだ。スタッドレスタイヤでもサマータイヤでも、関係ないらしい。
つまり、それらのコントロールが介入し、これまでは加速を穏やかにしていたに過ぎなかったようだ。筆者が今まで気づかなかった理由を考えると、警告灯が小さく、ステアリングホイールのリムに隠れてしまっていたことが1つ。
また、介入が極めて自然で、パワーが絞られているようにしか感じなかったことも大きい。改めて、マクラーレンの技術水準の高さには驚かされる。
過去に自分は、マクラーレン・セナでトラクション/スタビリティ・コントロールをオフにしたことがある。違和感なく運転している最中に、警告灯が点滅していたためだ。しかしオフにした途端、慌ててしまった。すぐにオンへ戻そうと考えを改めたほど。
アルトゥーラは、そこまで急激な挙動は示さない。それでも、完全な全力を路面へ伝えられるようになった今、ハイブリッド・パワートレインのパワフルさには舌を巻く。
750Sと乗り比べ 乗り換えたいと思うか?
そんな折、マクラーレン750Sへ試乗する機会が巡ってきた。アルトゥーラと、連続して乗り比べることもできた。とても興味深い比較といえた。
4.0L V8ツインターボが載る750Sの最高出力は、750ps。アルトゥーラより格上のモデルといえるが、秘めた能力は公道で開放できる水準を遥かに超えている。実際、安全に楽しめる範囲で比べると、違いはそこまで大きくないといえる。
それでも、車重は750Sの方が100kg以上軽い。ステアリングの反応は鮮明で、回頭性はより鋭い。ドライビング体験は一層ピュアで、鮮烈なものといっていい。しかし、英国価格には6万ポンド(約1200万円)の開きがある。
仮に大きな価格差がなく、筆者が本当のオーナーだとして、750Sへ乗り換えたいと感じたのか? 恐らく、アルトゥーラでいいと答えるだろう。比較すればしなやかな乗り心地や、上品なサウンド、早朝に無音で発進できるという特長を、高く評価しているから。
アルトゥーラには、ずっと乗っていたいと感じさせる魅力がある。しかし、悲しいかなこれは長期テスト。マクラーレンへお返しする期限は日に日に迫っている。残された時間を、堪能しなくては。
積算9476km 普段使いで大切なヒーター
マクラーレン・アルトゥーラが得たハイブリッドシステムで、最も見逃されがちでも、有用な機能といえるのがヒーターだ。エンジンが温まる前に、冷えた車内を暖められる。早朝に上着を着て乗り込んでも、2分後には発進前に脱ぐべきだったと思うほど。
フロントガラスのデフロスターも優秀。スーパーカーにとって、些細な機能に思えるかもしれないが、普段使いするうえでは極めて重要なことだろう。
積算9646km 回生ブレーキは備わらない
マクラーレンは、ブレーキペダルの感触に影響が生じる可能性があるとして、アルトゥーラへ回生ブレーキ機能を実装しなかった。シリアスな運転体験を提供したいという、同社の意志が現れている。
だが同時に、限られた駆動用バッテリーで得られる航続距離は短くなってしまう。どの程度感触が変わるのか、筆者は想像するしかない。だが、些細な変化でもマクラーレンは許せなかったのだろう。
テストデータ
気に入っているトコロ
覚醒したパワートレイン:マクラーレンへ期待通りの速さがついに開放された。
気に入らないトコロ
シートセンサー:助手席へ買い物袋を置くと、人間と誤認してシートベルト着用の警告が鳴ってしまう。
英国価格
モデル名:マクラーレン・アルトゥーラ(英国仕様)
新車価格:18万9200ポンド(約3784万円)
テスト車の価格:22万1400ポンド(約4428万円)
テストの記録
燃費:10.4km/L
故障:クルーズコントロール用レバーの交換/フロアシールの交換
出費:なし
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