11月4日に閉幕した「東京モーターショー2019」。前回を超える130万人もの入場者数を記録し盛況となった一方、行けなかった人、行けたけど目当てのクルマが見られなかった人も多いのではないだろうか。
そこで今回は、「東京モーターショー2019 総まとめ」として、各メーカー出展車のなかから世界初出展となったクルマたちをご紹介していきたい。
【新型ヤリスにフィットと強力ライバル登場!】マイチェンしたマツダ2はどう戦うか!?
第一回となる今回はトヨタ編である。
●【画像ギャラリー】グランエース、MIRAI、ヤリス…未来のトヨタのクルマたちをギャラリーでチェック!!!
※本稿は2019年10月のものです
文・写真:ベストカー編集部
初出:『ベストカー』 2019年11月26日号
■グランエース
●4列シート8人乗りの超豪華ワゴン
トヨタ自動車本体からバン事業を移管されたトヨタ車体が企画、開発、生産を担当する「グランエース」。
出るのか!? 出ないのか!? さまざまな情報が飛び交ったが、国内での2019年内発売が正式にアナウンスされた。
全長5300mm、ホイールベース3210mmという車体はとにかくデカい! ものすごいボリューム感だ。 海外向けのハイエース、豪州向けグランビアなどがベースとなっている
デカっ! 現車を間近に見た第一印象はまさにこれ。
なにしろ全長は5300mmもあり、全幅は1970mm、全高は1990mmもあるのだから、そのボリューム感はアルファード/ヴェルファイアの比ではない。
基本プラットフォームは縦置きエンジン後輪駆動のレイアウトを採用している。これは8名乗車時の重量を支える車体剛性や後軸への荷重などを考慮すると後輪駆動でないと成立しないため。それもあって堂々たるサイズ感になっている。
撮影車はプレミアム仕様の3列シート6人乗りだったのだが、2列目だけではなく3列目もキャプテンシートでオットマンつきフルリクライニング。
フロアセンターにプロペラシャフトが通ることもあり、フロアはやや高めとなることが功を奏し、着座位置は高くアイポイントも高いため視界良好。インパネやシートなど、内装は豪華な雰囲気だ
一方、4列シートの8人乗り仕様も設定され、こちらはビジネスシーンなどでの使用を想定したもの。
搭載するエンジンは直4、2.8Lのディーゼルターボで6速ATを組み合わせた縦置き後輪駆動。
この内装はプレミアム仕様の3列6人乗り。最後列もオットマンつきキャプテンシート
FFミニバンと比べると若干フロアは高いけれど、それを補ってあまりある大型ボディがゆったりした室内空間を作り出している。
バン事業を2018年11月にトヨタ自動車から移管されたトヨタ車体が開発、生産を担当。今回のショーではトヨタ車体ブースに展示さた。
全幅は1970mmあり全高も1990mmと高い。パッと見た感じはミニバンのサイズではなく、マイクロバスのような存在感だ
■NEW MIRAI
●燃料電池車の次期型は驚くほどスタイリッシュに!
世界初の量産型燃料電池車として華々しく2014年12月に登場した現行型MIRAI。あれから5年、いよいよ次期型の2代目MIRAIが東京モーターショーでそのベールを脱いだ。
東京モーターショーで初公開された「MIRAIコンセプト」。ボディカラーには複層工程で鮮やかさと深み感を増した「フォースブルー マルチプルレイヤーズ」を新規開発
車名は「MIRAIコンセプト」だが、その仕上がりはほぼ市販レベルに到達しており、来年末に向けて開発最終段階のモデルとして出展。
最大の注目ポイントは写真を見てもらえればおわかりのとおり、非常にスタイリッシュな外観を纏っていることだ。
現行型MIRAIは先代カムリをベースにした前輪駆動の4人乗りモデルだったが、次期型は現行クラウンと同じくTNGAプラットフォームを採用したFRモデルとして登場することになる。
しかも乗車定員は1名増えて5名となり、車格もワンサイズ上がった高級サルーンとしてデビューする。
ホイールベースが現行型よりも延長され、後席は現行型の2人から3人がけに
ボディサイズは全長4975×全幅1885×全高1470mmと、現行型から全長で85mm、全幅で70mm向上し、逆に全高は65mmダウンしてロー&ワイドなプロポーションへと変貌する。
特にリアビューは現行クラウンを彷彿とさせるファストバックスタイルとなっており、6ライトウィンドウがその流麗さを強調している印象だ。
ベースの現行型クラウンを彷彿とさせるファストバックのリアビュー
その伸びやかなスタイルを実現させたホイールベースはベースとなった現行クラウンと同じ2920mm。
現行型が2780mmであることから室内長なども延長され、居住空間も改善されているのは間違いない。
また、パワートレーンとなるFCスタックはシステムをすべて一新しており、FCVとしての性能を大幅に向上。
具体的には水素搭載量を拡大することにより、現行型のJC08モードで約650km走行可能だった航続距離については3割増しの約850km前後を目指しているのだという。
より上質感を高められたMIRAIコンセプトのインパネ。ナビ画面はよりワイドに拡大され、見やすさを向上させている
TNGAプラットフォーム採用により、乗り心地も大幅に改善。
FCVならではの静粛性と剛性の高さに磨きをかけることで、次期型MIRAIはリニアで質の高い動き出し、優れたレスポンスの気持ちいい加速、高速域までトルクフルな特性の走りを見せてくれるということだ。
田中義和チーフエンジニア曰く、「エモーショナルで魅力的なデザイン」を目指した次期型MIRAI。現行型とは打って変わって流麗なプロポーションの高級FRサルーンとしての位置づけになり、クラウンよりも上位モデルに
現行型から続けてチーフエンジニアを務めたトヨタミッドサイズ製品企画の田中義和氏は「ワインディングでは意のままのハンドリングが可能です。
FCVだから選んだのではなく、ずっと走っていたくなるクルマだからこそMIRAIがほしかったと言っていただけると思います」と自信をみなぎらせる。
来年末の市販が楽しみだ!
先進安全装備のトヨタセーフティセンスが採用される予定で、MIRAIコンセプトにも単眼カメラが備わっていた。このまま走り出したらすぐに作動しそうな感じだ
MIRAIコンセプトが履いていたのは245/45R20サイズのブリヂストンTURANZA。輸入車&国産のサルーン向けタイヤだ
■ヤリス
●いよいよ登場のヤリスも世界初公開!!! TNGAで一新! 12月中旬正式発表 2020年2月発売!
お台場のヴィーナスフォートに展示され、10月末から12月にかけて、全国各地で展示される予定となっているのが新型ヤリスだ。
旧型であるヴィッツとはデザインもプラットフォームもすべて変わった「ヤリス」。生産はトヨタ自動車東日本の岩手工場が担当する
コンパクトカー向けTNGAプラットフォーム「GA-B」。主要な骨格を連結させることで、クラストップレベルの剛性を実現している
■LQ
●新時代の『愛車』は間もなく発進!
前回2017年の東京モーターショーで『コンセプト愛』として出展されたコンセプトカーが、2年の時を経て「来年にはナンバーを装着して公道での走行を開始する予定です」(開発責任者/井戸大介氏)というところまで開発が進展した。
前回の東京モーターショーに出展された「コンセプト愛」の内外装のイメージを忠実に維持した「LQ」。相変わらずコンセプトカー然とした雰囲気だが、このままの状態で衝突安全基準や保安基準などをクリアしており、間もなくナンバープレートを取得して公道試験を開始する
前回ショーのコンセプトカーでは前ヒンジの跳ね上げ式ドアだったものが、見てのとおり通常のヒンジタイプ4ドアとなっていて、前後ドアを開けて見えるボディ骨格はBピラーの位置や形状など、プリウスやカローラなどのものとよく似ている。
なるほど、ホイールベースは2700mmでプリウスと同じ。まさにTNGAプラットフォームを使ったEVなのだ。
前回ショーモデルでは跳ね上げ式ドアだったものが、今回は一般的な「4ドア」となった。Bピラーの位置や形状などはプリウスやカローラシリーズと同じである
下部までガラスエリアが回り込むフロントドアを見るといかにもコンセプトカー然とした雰囲気なのだが、「国内での認証に必要な衝突安全性はクリアしています。ほぼこのままで完成形と考えていただいていいです」と開発陣は説明する。
内装はシートもステアリングも市販車レベルの仕上げとなる
タイヤは175/60R19のBSオロジック。BMW i3にも装着される細幅大径低燃費タイヤだ。
インテリアもシートやステアリングなど市販車のクォリティで仕上げられている。まさに「実走行可能」なモデルなのだ。
リアビュー。車体後部はガラスハッチで荷室。右側には200V、左側には急速充電口
また『LQ』のキモとなる先進技術は「YUI」と名付けられたAIエージェント。クルマとオーナーを結びつけることで精神的な価値を高めるもので、例えば覚醒推定AIが機能すると、ドライバーが眠気を感じる15分程度前に睡魔を推定。
ドライバーが興味を持つ音楽をかけたり、話題を振って覚醒状態を高めるようにするなどが可能となる。自動運転についてはレベル4相当の機能を搭載。
トヨタは本気でこのままのかたちでLQの市販化を進めているのだ。
一見ヘッドライトに見える部分はコミュニケーションランプで、車両の状態によって表情を変える。実際のヘッドライトはパンパー左右端の縦長のLED部分
■超小型EV2台
●トヨタの本気マイクロカー
MEGA WEB会場で開催された「FUTURE EXPO」で意外な存在感を発揮していたのが、トヨタの超小型EVの2台。
●ウルトラ コンパクト BEV
ともに導入準備が進む超小型車規格に合致するよう作られ、ウルトラコンパクトBEVは高齢者や免許取り立ての人の、日常における近距離移動を想定して作られた。乗車定員は2名。
●ビジネスコンセプト
デビューは2020年冬頃が想定されている。
一方のビジネスコンセプトは短距離の営業や巡回業務など、短距離移動と離駐車を繰り返す業務での使用を想定している。
車内での作業や休憩を繰り返すスタイルに合わせた、移動myオフィスといった感じの1人乗りEVだ。
ともに充電時間は200Vで約5時間。1充電あたりの走行可能距離は約100km。
デビュー予定は来年冬ということで、内装はすでに市販車レベルの仕上がり。2人乗りという点が従来のミニカー規格と違うところだ
こちらの内装はまだまだコンセプトカー然としたものだが、デザインや提案はユニーク
■e-パレット(東京2020オリンピック パラリンピック仕様)
●選手村で自動運転する新モビリティ
2018年のCESで初めてその開発を世に知らしめた「e-パレット」。自動運転EVのプラットフォームとして、新時代のモビリティ(移動体)を実現する……とされていたものだ。
横断歩道などの歩行者を認識して一時停止。その際には車両側が歩行者を認識していることが前面パネルに表示される。横断し終えると、自動的に再発進する
今回の東京モーターショーに登場するのは2020年の東京オリンピック/パラリンピックの選手村で実際に運用される前提のバス型e-パレット。
現時点で「自動運転」での「実走行」を実現し、出展車両説明会の場で実際の走行シーンを見せるばかりか、われわれが乗客として乗って走る実演まで体験した。
電動で乗降用スロープを展開する
オリパラ仕様ということで、4名の車いすが同時に乗車可能で、しかも、4名の車いす乗客が1分以内に乗降可能な大開口ドア、フラットフロア、バス停への正着制御、段差のないスロープの自動展開、車内のスムーズな乗降導線などの工夫をしているのがポイント。また、海外の大柄なオリパラ選手の乗車を考慮した2760mmという全高となる。
開発を担当した牟田隆宏主査は、「e-パレットはあくまでもプラットフォームとして捉えていただきたいのです。
今回はオリパラ選手村での実用を考えたパッケージングとしてますが、用途に応じてもっと小型のもの、もっと大型のもの、荷物輸送に特化させたものなど、さまざまな車体に展開できます」と。
こちらは座席を展開した状態。今回の仕様は選手村内の短距離移動を想定しているため、座席は簡易的なものだが内装は用途に応じてアレンジ可能
パワートレーンは電気モーターで車体後方に搭載され後輪を駆動。今回の仕様では最高速は19km/hとされているが、例えば公道を走るコミュニティバスのような使い方であれば、40~50km/hでの走行も対応可能だという。まさに新時代のモビリティカンパニーを目指すトヨタの主張だ。
現状はオリパラ選手村内での運用を前提としているため、最高速度は19km/hとされている
基本的にはプログラミングに沿った自動運転をするのだが、非常時に手動運転できるように操作装置が左前方にある
車いすでの乗車時には座席を収納して最大4名の車いすに対応。立ち席で7名も乗れる
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