「日本一速い男」と呼ばれ、かの元F1ドライバーE・アーバインをして「日本にはホシノがいる」と言わしめた「星野一義」。通算133勝、21の4輪タイトルを獲得した稀代のレーシングドライバーの50有余年に渡る闘魂の軌跡を追う。(「星野一義 FANBOOK」より。文:小松信夫/写真:モーターマガジン社)*タイトル写真は、優勝を飾った1987年5月24日F3000 Rd4 鈴鹿フォーミュラジャパン。
F2からF3000へ国内トップフォーミュラが移行
世界最速を競うフォーミュラカーの最高峰、F1直下のカテゴリーで、ヨーロッパ選手権として長年開催されてきたF2。1960年代はメーカーの開発したレーシングスポーツカーのレースが中心だった日本では、フォーミュラカーレースが盛んになったのは1970年代に入ってからのこと。
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73年になって、F2に準じたマシンで争う全日本F2000選手権がスタートし、78年から全日本F2となる。星野は75年、77年、78年と3度タイトルを獲得したが、80年代に入ってからのF2では無冠に終わっていた。
一方、ヨーロッパF2では、80年のホンダエンジン参戦による競争の激化をきっかけに、参戦コストの高騰が問題となっていく。その結果、F2に代わる新カテゴリーとして、F3000が85年からスタート。F1のターボ化で余剰となったコスワースDFVエンジンに、回転リミッターを装着することで、コストを低く抑えることを狙ったものだった。
しかし日本では85年、86年とそのままF2を開催。87年はF2とF3000混走として、88年からF3000に移行予定だった。しかし、87年のエントリーが全てF3000だったため、実質的にはこの年から日本のF3000がスタートする。
初年度計4勝をマーク! 翌年も亜久里と激闘を演ずる
レイトンハウスのスポンサードで、星野もこのF3000にエントリー。F2時代末期と同じくホンダから、F3000用のV8エンジン・RA387Eの供給を受け、シャシーはマーチ87Bで、タイヤはブリヂストンという最強のパッケージだ。
3月に鈴鹿で行われた記念すべき第1戦、ポールポジションこそG・リースに譲ったが、決勝レースは2位となった鈴木亜久里に、30秒近くの大差を付け優勝。第2戦からはローラTに乗り換え、第4戦から第6戦で3連勝してシーズン合計4勝をマークする。
シーズン途中、ヤマハ製5バルブヘッドを組み合わせたDFVエンジン・OX77を手にし、終盤の2連勝で追い上げてきた亜久里を抑え、41歳にして国内トップフォーミュラのチャンピオンに返り咲いて見せた。
翌88年、キャビンのサポートを受けるようになった星野は、亜久里と再び熾烈なタイトル争いを展開。お互い3勝ずつを挙げるが、星野は僅差でタイトルを逃す。そして亜久里は秋のF1日本GPでのスポット参戦を経て、翌年からのF1GPフル参戦が決定。中嶋に続いて、星野は再び日本からF1へのチャレンジャーを見送ることになった。
続く89年には、星野は3年連続となる開幕戦勝利を飾ったが、そこから4戦連続リタイアという、最悪の展開にはまってしまう。第6戦で再び優勝するが、タイトルを争う小河等、R・チーバーの間に割って入ることができず、シーズンを終えることになった。(次回に続く)
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