2020年の夏の終わりに、スカイアクティブ技術、魂動デザインで今、勢いに乗るマツダが、『マツダ CX-30』 価値体験型取材会を実施した。しかも、驚くことに、CX-30に愛犬を乗せ、日本最高峰の避暑地、ドッグフレンドリーリゾートでもある軽井沢を目指すという、愛犬家のライフスタイル、愛犬との休日をイメージした、マツダ初の愛犬同伴の体験型試乗会なのである。わが家もジャックラッセルのララを連れ、出発地点のマツダR&Dセンター横浜に集合した。
まずは、CX-30についておさらいしたい。CX-30は、車格的にはCX-5とCX-3の中間に位置づけられる(価格的にも)、マツダ3をベースにホイールベースと全長を短縮し、全高を立体駐車場に入りやすい1540mmに抑えたクロスオーバーモデルの会心作。シャープな折れ線を持たない魂動デザインのエクステリアは、“美しすぎるハッチバック/セダン”のマツダ3の延長線上にあるものの、黒い樹脂のクラッティングパネルの面積を幅広く取り、SUVらしさ、下半身の力強さをアピールしているのが特徴だ。
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パワーユニットは2LガソリンエンジンのスカイアクティブG、1・8Lクリーンディーゼルエンジンを積むスカイアクティブD、そして最新のガソリンエンジンとディーゼルエンジンのいいとこ取りをした先進の2Lガソリンエンジン、スカイアクティブXを用意。駆動方式は2WDと4WDを揃え、最低地上高はクロスオーバーモデルらしく全車175mmを確保する。
兄貴分となるCX-5に対して、ボディサイズの違いから、CX-30のほうが後席、荷室スペースがやや狭くなるのは当然として、最大の相違点と言えるのが全高だ。CX-5はSUVらしい1690mm、対するCX-30は1540mmと、マンションや公共の立体駐車場への入庫が容易だ(1550mm以下の制限があるところが多い)。最小回転半径にしても、CX-5はクラスの平均値となる5.5mだが、全長、ホイールベースの短いCX-30は5.3mと、抜群の小回り性を発揮してくれる。
また、クロスオーバーモデルに期待する走破性に関しては、最低地上高がCX-5は本格クロスカントリーモデルと肩を並べる210mm。CX-30は175mmという違いがある。こうして見ると、日常、街乗りでより使いやすいのがCX-30、アウトドア、オフロードでの使い勝手、走破性で優位に立つのがCX-5になるはずだ。
CX-30は前席優先のパッケージを採用するものの、後席の居住スペースは弟分のCX-3より広く、身長172cmの筆者のドライビングポジション背後で頭上に120mm、ひざ回りに120mmの空間が確保される。CX-5ほどの広さはないものの、CX-3の同105mm、90mmよりはゆとりがあり、大人の着座も無理がない。CX-3にない後席エアコン吹き出しがあるのも、後席の乗員、愛犬にとっての快適ポイントと言えるだろう。
ラゲッジスペースは“意外に広い”という印象だ。開口部地上高730mmはSUVとしては低めで、フロアの奥行きは890mm(最大フロア長1600mm)、フロア幅は1000mmと十分に実用的だ(CX-3は同780、1000mm)。何しろ荷室容量はCX-5に対して約30L少ないだけなのである。CX-5と違い、開口部に100mmの段差があるのは、犬の乗降時に足を引っかけてケガをする可能性があるため、今後、アクセサリーなどでの対応、フラット化を検討してもらいたい部分ではある(愛犬は基本的に後席乗車)。
デザインや走行性能、使い勝手以外のCX-30の大きな魅力となるのが、SOSコール、およびKDDI製の専用通信機全グレード標準搭載によるマツダコネクト、オペレーターサービスである。スマホとCX-30を連携させ、My Mazdaアプリを利用することで、例えば、ぐるなびや食べログに掲載されている、お気に入りのレストランの場所を、スマホからCX-30に送り、ナビの設定を遠隔で行うことができるほか、メンテナンスの確認、駐車位置の確認、ドアロックのし忘れ、ハザードランプの消し忘れなどにも対処。もちろん、現在地近くのマツダディーラーも一発で検索可能だから安心である。
そんなCX-30は、ドッグフレンドリーなクロスオーバーモデルと言っていい1台だ。今ではマツダ全車に採用されるG-ベクタリングコントロール(CX-30は進化したG-ベクタリングコントロール プラス)は横方向と縦方向の加速度=Gを総合的に制御して、ドライバーや犬を含む乗員の頭部や体の揺れを抑制し、誰もがリラックスして思いのままにクルマを操れる感覚をさらに高い次元に引き上げてくれるマツダ独自の技術であり、車内でどこかにつかまれない犬も、例え山道でも安定した姿勢のまま、安心してドライブを楽しむことができる。G-ベクタリングコントロールはクルマに酔いやすい子供に優しい技術として、「第10回キッズデザイン賞」(子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン部門)を受賞したほどで、進化したG-ベクタリングコントロール プラスともなれば、一段とストレスフリーな運転、乗車を可能にしてくれるというわけだ。
全高とリンクした後席のシート位置の低さによる犬の乗降のしやすさ、暑がりの犬が後席で1年中、快適に過ごせる後席エアコン吹き出し口の装備、スムーズな減速が可能になるパドルシフト、純正アクセサリーのコットを後席に確実に取り付けられる、空気入りタイヤのエアバギー製ドッグカートの用意など、ドッグフレンドリーポイントが数多いのも注目点。
さて、今回の『マツダ CX-30』 価値体験型取材会では、軽井沢の往路、復路で違うグレードのCX-30に乗ることになっていて、往路にジャックラッセルのララとともに乗り込んだのは、ソニックシルバーという美しくもシックなボディカラーを纏ったスカイアクティブG搭載のCX-30 20S L Package、2WDだった。
横浜を出発し、首都高~関越道~上信越道をいくCX-30は軽快でスムーズかつ、静かそのもの。クラスを超えた上級感がある。ただし、後席に乗車した、“ペットとの明日を考える”をテーマに多彩な情報を発信している小学館PETomorrowでも活躍している自称自動車評論犬!? 旅するジャックラッセルのララによれば、「大径18インチタイヤによる道路の継ぎ目などのショックはもう少し、マイルドにしてほしい」とのこと。CX-30は全グレードに18インチタイヤが組み合わされているが、20Sにオプションの16インチタイヤ、あるいは現時点で設定のない17インチタイヤも、乗り心地面で有利なはずで、ドッグフレンドリーカーとしての資質を試してみたいところではある。
途中、渋滞区間を経験したものの、電子パーキングブレーキと組み合わされたブレーキオートホールド機能や、渋滞追従機能付きのマツダ・レーダー・クルーズ・コントロール(ACC)によって、一時停止時にブレーキを踏み続ける必要がなく、また高速道路での走行時、渋滞時のペダル操作がほぼ不要になり、G-ベクタリングコントロールの効果もあって、ドライバーの肉体的、精神的疲労度は最小限。安全にも役立ってくれるのである。だから、静かな車内で会話を弾ませながら、気づけば軽井沢に到着していたという具合である。付け加えれば、腰骨を立て、自然なサポート感による正しい運転姿勢を取らせ、上半身の無駄な動きを制御してくれる前席のシート設計、かけ心地の良さもまた、前席乗員の快適度に大きく貢献しているポイントだろう(ファブリックシートのほうがかけ心地がふんわりしていた効果が分かりやすい)。
上信越道 碓井軽井沢ICを下り、直進すると、プリンス通りに至る、一気に標高900~1000mに駆け上がるバイパスとなる山道。そこでのCX-30は水を得た魚のようで、低全高による低重心、シートのサポート性の良さ、そしてG-ベクタリングコントロールの総合的恩恵から、安定、安心して、意のままの山道ドライブを楽しむことができた。CX-30の運転技術を問わないスムーズさ極まる運転感覚、路面に張り付くかのような高い安定感、軽快感たっぷりの操縦性が、なるほど、人馬一体をアピールする、マツダ車ならではの気持ちいいドライブを思う存分、楽しませてくれたのである。
最初の目的地はランチスポットとなる、離山通り沿いにあるロンギングハウス。軽井沢通を自称するボクでも初めて訪れる(知る)愛犬同伴可能なレストランだが、CX-30の純正ナビケーションはデータ通信によって、最新の道も網羅。開通して間もない高速区間の案内もあって、実にスムーズに軽井沢、ロンギングハウスに到着することができた(ナビの地図データ更新の手間不要)。
ランチを終えたあと、立ち寄った旧軽井沢エリアには、別荘地内に恐ろしく狭い道もあるのだが、全長4395mm、全幅1795mmという、クロスオーバーSUVとしてはコンパクトで日本の道にジャストで扱いやすいボディサイズ、最小回転半径5.3mの小回り性の良さから、そんな場面、すれ違いでも、走りやすさは文句なしだった。
午後3時。いよいよ本日の滞在先、プリンス通り沿いの、軽井沢を訪れる愛犬家には有名な、DOG DEPT GARDEN&RESTRANTの裏手に位置するDOG DEPT GARDEN HOTEL KARUIZAWAに到着。そこは、1300坪もの敷地に木のぬくもりにあふれる、それぞれ異なるテーマ&カラーでまとめられた、サンタモニカのビーチをイメージした「ブルー」、サンタモニカの自然をイメージした「ナチュラル」&「ブラウン」、サンタモニカの街並みをイメージした「レッド」という、アメリカンなコテージタイプの4棟が建ち並ぶ、軽井沢感溢れるリゾートホテルだ(2階建て、全15部屋、全室角部屋)。敷地内には、レストランはもちろん、オープンテラス、屋内型を含む3面のドッグラン、そしてショップのDOG DEPTGARDEN軽井沢店があり、軽井沢を訪れた愛犬と愛犬家にとっての楽園、お散歩環境も抜群の、すべての愛犬家のための別荘感覚のコテージホテルというわけだ。
DOG DEPT GARDEN&RESTRANTのフロントでチェックインを済ませたあとは、オープンテラスで行われる、愛犬家なら誰もが興味津々の肉球クリームづくりのワークショップを体験。参加者全員で肉球クリームづくりを行い、出来上がったものをお土産としていただくことに。わが家のジャックラッセルのララはもう8歳をすぎ、さすがに肉球がザラザラし始めてきたところで、うれしいワークショップとなった。
その後、CX-30の開発担当者である佐賀さん、開発陣、アクセサリー担当者と参加者のトークセッションがあり、今日のCX-30と過ごした愛犬とのドライブについて意見を交わし、初日のイベントは終了である。
オープンテラスから客室に戻る途中、立ち寄った、DOG DEPTGARDEN軽井沢店で、オンラインショップや都心の店舗では完売の、DOG DEPTのクールマスク最新作を奇跡的にゲットできたのは、ラッキーだった。
夜はDOG DEPT GARDEN&RESTRANTのオープンテラスに面した、コロナ対策、ソーシャルディスタンスがしっかりととられたテーブルで愛犬同伴のフルコースディナーを楽しみ、味わいつつ(愛犬メニューもあり)、CX-30の奥深い魅力について、参加スタッフとともに語り合うことに。
ちなみに、わが家が滞在した客室は、ブルーの2階、201号室。51平方メートル+バルコニーのお部屋で、暖炉のあるリビングルーム、ダブルベッド×2、畳の小上がりというレイアウト。愛犬と愛犬家にうれしい設備、備品、飼い主と愛犬がペアで着れるナイトウェアなど、DOG DEPTならではのペットアメニティの充実度にも驚かされる。
ちなみに、一部の客室からは、テラスや窓から、止めてある愛車を間近に望むこともでき、クルマ好きにとってたまらない愛犬同伴型リゾートホテルとも言えそうだ。
翌日、DOG DEPT GARDEN&RESTRANTで朝食を済ませ、帰路用に用意された、2020年ワールド・カー・オブ・ザ・イヤー トップ3ファイナリストにマツダ3とともに選ばれ、また2020年1-6月期にマツダで最も売れた車種でもある、往路とは違う、CX-30に乗り込む。ボディカラーはすべてのマツダ車にもっとも似合うと思える、特別塗装色のソウルレッドクリスタルメタリックである。
グレードは最上級のマツダ渾身の次世代パワーユニット、スカイアクティブX搭載モデル、CX-30 X L Package 4WDだ。
往路の20S L Package FFの156ps、20.3kg-m、WLTCモード燃費15.4km/Lに対して、同じ2Lの排気量にして180ps、22.8kg-m、4WDでもWLTCモード燃費15.8km/Lという格上のスペックを備える。ただし、燃料はハイオクが基本で(20Sはレギュラー、XDは軽油)、価格はガソリンエンジンの20S L Package の279万4000円、クリーンディーゼルエンジン搭載のXD L Packageの306万9000円に対して、347万7000円(いずれもFF 6ATの価格)と、それぞれ約68万円、約40万円高となる。
スカイアクティブXとは、世界初の革新的な燃料制御技術を採用した、クリーンディーゼルエンジンとガソリンエンジンのメリットを兼ね備える、マイルドハイブリッド技術も搭載したマツダが誇る新世代エンジンの総称。しかも、復路で試乗するCX-30の駆動方式は先進のi-ACTIV 4WD。雨や雪などによる滑りやすい路面ではもちろん、ドライ路面でも4輪に常時、適切なトルクを配分し、スムーズで安定した走行が可能になる。加えて、オフロード・トラクション・アシストを備えることで、最低地上高175mm(全車)を生かした悪路の走破性と、意のままの走りをより実現しやすい仕様となる。冬、白銀の世界になった軽井沢を訪れるのにもふさわしい、今回、スタッフカーとして用意してもらったCX-5とともに最強のドッグフレンドリーカーと言っていいのがこのCX-30 4WDである。
進化の途中にあるスカイアクティブXのパワーユニットは、低中速域でディーゼルエンジンのような振動がわずかに残るものの、とにもかくにも、パワーフィールの気持ち良さ、制御のち密さという点で、さすがマツダの新世代エンジンと言うしかない実力の持ち主だった。
純ガソリンエンジンの20Sとの違いは、特に軽井沢の山道の登坂路で認められた。20S L Packageの6ATがキックダウンするような場面でも、スカイアクティブX搭載のCX-30 X L Packageはゆとりあるパワー、豊潤なフラットトルク、独自のシフトパターン、出力の出し方(高度な制御)によって、エンジンが高回転まで一段とスムーズに回るとともに、登坂路でキックダウン(ギヤを落とす)する機会が減少し、車内でどこかにつかまれない犬も、前後Gの少ない、さらに快適な乗車感覚が可能になったようだ。何しろ、クネクネした登坂の山道でも、後席にいるジャックラッセルのララは、窓の外の軽井沢の景色を堪能する余裕があり、リラックスしたまま快適なドライブを楽しんでいたぐらいなのである。ララの首に付けてある、迷子札を兼ねたネックレスが、カーブでもほとんど左右に揺れていない事実が、G-ベクタリングコントロール プラスがもたらす安定感を物語る。
個人的には、現時点でCX-30のベストグレードは、価格と燃費性能、走行性能のバランスに優れる、クリーンディーゼルエンジン搭載のスカイアクティブDモデルと思えるのだが、開発責任者の佐賀さんが正直におっしゃるとおり、スカイアクティブXのこれからのさらなる進化、熟成にも注目したいところである。
気が付けば、軽井沢の緑に映えた、ソウルレッドクリスタルメタリックのCX-30 X L Packageは、横浜のマツダR&Dセンターに到着。片道およそ210キロの行程を、ストレスフリーで行えたのは、CX-30の走行性能、快適性、静粛性に加え、SOSコール、マツダコネクトによる安心感、そしてマツダ最新の先進運転支援機能をフル搭載しているところがポイントだ。
なにしろ、先進運転支援機能として、運転席、助手席、運転席ニーエアバッグ、カーテン&サイドエアバッグのほか、衝突軽減自動ブレーキのスマートブレーキサポート、前後AT誤発進抑制装置(ブレーキ制御付き)、後退時&後退時左右接近物ブレーキサポート、アダプティブLEDヘッドライト、ハイビームコントロールシステム、360度ビューモニター、前側方接近車両検知、ブラインドスポットモニタリング、車線逸脱警報システム、レーンキープアシストシステム、交通標識認識システム、ACC(アダプティブクルーズコントロール)のマツダレーダークルーズコントロールなどの機能が満載されているからである。
軽井沢を往復した、愛犬同伴のCX-30価値体験取材会で得られたもの、それはCX-30のデザイン、走行性能、安全性能、先進運転支援機能の充実度、都会からリゾート地、アウトドアなどオールマイティな使い勝手の良さ、日本の道にジャストなサイズ感、扱いやすさに加え、ステーションワゴンとクロスオーバーSUVの中間的パッケージがもたらす、愛犬とのドライブ旅行を一段と快適、安心なものにしてくれる、ドッグフレンドリー度極まる商品性、価値だったように思える。特にG-ベクタリングコントロールと愛犬乗車の相性の良さは、誰がなんと言おうと、抜群であると断言したい。
取材協力/マツダ https://www.mazda.co.jp/cars/cx-30/
犬の衣装協力/DOG DEPT
写真/雪岡直樹
文/青山尚暉
モータージャーナリスト。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。自動車専門誌の編集を経て、現在、モータージャーナリスト、愛犬との快適安心なカーライフを提案するドッグライフプロデューサーのふたつの肩書を持つ。小学館PETomorrowでも「わんこと行くクルマ旅」を連載中。最新刊に「愛犬と乗るクルマ」がある。
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