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【比較試乗】「アルファロメオ・ステルヴィオ・クアドリフォリオ vs BMW X4M vs ジャガーFペイス SVR」SUVにモンスタープラントは必要か!?

掲載 更新 4
【比較試乗】「アルファロメオ・ステルヴィオ・クアドリフォリオ vs BMW X4M vs ジャガーFペイス SVR」SUVにモンスタープラントは必要か!?

「狂気」。レーシングドライバーであり自動車評論家の木下隆之氏がこの3台を試乗した後、賛辞を込めてこう表現した。そして、何度もワインディングを走り込んでいた。とても楽しそうに。SUVの体躯を活かして大型プラントを積み込み、電子制御システムを全部乗せ。これこそ高性能SUV最大のメリットで、狂おしいほど楽しい理由といえるだろ。

SUVカテゴリーは限界!? スポーツカーに近い3台

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中国古代の書経には、【玩物喪志(がんぶつそうし)】という言葉が記されている。「物を玩べば志を失う」。夢中になりすぎて、大切なことをおざなりにすることだそうだ。物に執着しすぎて志を失ってしまうという意味である。

今回、箱根という走りの聖地で3台の武闘派SUVをドライブしているうちに、玩物喪志という言葉が頭に浮かび離れなかった。もはや、SUVという本分を忘れ、とんでもない世界に突き進んでしまってやしないかと心配になったのである。

SUVは本来的には「スペース・ユーティリティ・ヴィークル」の略だったが、この3台はもはやあらぬ世界に足を踏み込み、もう引き戻すことのできないクルマということができる。空間的な有益性など意に返さず、ひたすらドライビングプレジャーを追求しているからだ。

しかし昨今は、SUVが「スポーツ・ユーティリティ・ヴィークル」の略だとされるが、それならばまだ救いはある。たしかに備わっているスポーツ性能は、鍛え抜かれたプロアスリートのように筋骨隆々だ。それをもってスポーツだとするのならば、今はまだ、SUVのカテゴリーに組み入れても許されるだろう。だが、それとてもう限界に達しているように思う。心地よい汗を流して爽快感を得るようなレベルにはない。丁寧に砥がれた鋭利な刃物のように殺気すら漂うのである。

ジャガーの刺客FペイスSVRは、武闘派部隊であるSVO(スペシャル・ヴィークル・オペレーション)が鍛え上げた狂犬である。搭載するV型8気筒ユニットは、スーパーチャージャーを武器に550psの最大出力を誇る。一寸のレスポンス遅れも許さないという非情なスーパーチャージャーは、極低回転域からすでに戦闘態勢にあることを語る。アイドリング+αのアクセルから怒涛の加速力を見舞う。

クルマに乗り込み、ゆるゆるとワインディングに向かう道すがらは、比較的平穏な空気を漂わせていた。ZF製の8速ATは、デュアル・クラッチ・トランスミッションほどのキリキリとしたレスポンスではなく、乗用車としてちょうどいい塩梅の不感帯があったし、電子制御アクティブサスペンションは、路面の凹凸を優しくいなしていた。標準車と比較して、フロントのバネ剛性は30%、リアは10%高められているので安心感を持てる。リアのスタビリティ確保には気を配られたセッティングが想像できたからだ。しかし、それが油断を誘った。エンジンに鞭を入れた瞬間に豹変したのだ。エキゾーストはバリンバリンと空気を粉々に引き裂くようなサウンドを響かせ、どこまでも遠慮なく加速したのである。ジャガーは本分を見失っていると確信した。ジャガーという紳士的なブランド色に気を許し、握手をしようと右手を差し出したらいきなり鉄拳を見舞われた気分である。

「これはこれで楽しい」と理屈でなく官能に訴える

アルファロメオ・ステルヴィオも同様に、何か血迷っている。Q4ゆえのオンデマンド方式のクワトロシステムは、基本をFRとしているというから開いた口が塞がらない。前後駆動配分はリア100%伝達が平時だというのだ。スタビリティが必要ならば最大50:50までトルク配分するというものの、スリリングなフットワークを見舞うことは明らかだ。

何にもまして、ステアリングギア比が12.1だという。切れ味自慢のスポーツカー並みの数値である。その必要がどこにあるのか、「?」マークを頭に浮かべたままのドライビングは、終始その剃刀のような切れ味にビクビクと怯え続けたのである。

そもそも車名は、「悪魔の梯子段」との異名を持つステルヴィオ峠に由来する。その名は当代随一のスーパースポーツカーにのみ与えられるべきネーミングではないのか?

その点ではややホッとできたのがX4Mである。直列6気筒3Lツインターボは、510psと数値的には強力だが、全域にフラットなトルクが散りばめられており破綻がない。サウンドも進軍ラッパのようには響かない。シルキー6ならではの粒の揃った爆発を感じさせる。剛性感たっぷりのハンドリングは頼もしく、それでいてスタビリティが整っている。アクティブMディファレンシャルは、切れ味と安定感をバランスさせてくれていた。高性能キャラクターは、想像の範疇だった。乗り心地は相当に硬派である。主砲に詰めた爆弾を撃ち込むような破壊力があるのに、どこか理詰めの安心感に気が安らいだ。

と感じたことを自覚して汗が流れた。そもそも今回集めたSUVは、やや本分を踏み外した異端である。SUVの「S」がスペースではなくスポーツだとしても、ユーティリティを犠牲にしてまで踏み込む意義が曖昧ではある。その過激な世界観は、地を這うように重心の低いスポーツカーに任せておけばいい。だというのに、X4Mがそうであるようにルーフをスラントさせ、後席の乗員に多少の不便を強いてもそのスタイルにこだわった【玩物喪志】に違いない。だがそれが、これはこれで楽しい……と感じさせてしまうから恐ろしい。むしろ、Fペイスやステルヴィオのような刺激が中毒になっている自分に気がついて汗が流れるのだ。

世の中にこんな狂気があってもいいよねって思わせてしまうこの3台はやはりどこか狂っている。

【Specification】ALFA ROMEO STELVIO 2.9 V6 BI-TURBO QUADRIFOGLIO
■全長×全幅×全高=4700×1955×1680mm
■ホイールベース=2820mm
■車両重量=1910kg
■エンジン種類/排気量=V6DOHC24V+ツインターボ/2891cc
■最高出力=510ps(375kW)/ 6500rpm
■最大トルク=600Nm(61.2 kg-m)/2500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=255/45R20:285/40R20
■車両本体価格(税込)=11,890,000円

お問い合わせ
FCAジャパン 0120-779-159

【Specification】JAGUAR F-PACE SVR
■全長×全幅×全高=4740×1960×1670mm
■ホイールベース=2875mm
■車両重量=2070kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+スーパーチャージャー/4999cc
■最高出力=550ps(405kW)/6000-6500rpm
■最大トルク=680Nm(69.3kg-m)/3500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=Wウイッシュボーン:インテグラルリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=265/40R22:295/35R22
■車両本体価格(税込)=13,060,000円
お問い合わせ
ジャガー・ランドローバー・ジャパン 0120-050-689

【Specification】BMW X4M COMPETITION
■全長×全幅×全高=4760×1925×1620mm
■ホイールベース=2865mm
■車両重量=2030kg
■エンジン種類/排気量=直6DOHC24V+ツインターボ/2992cc
■最高出力=510ps(375kW)/6250rpm
■最大トルク=600Nm(61.2kg-m)/2600-5950rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション(F:R)=ストラット:5リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=255/40ZR21:265/40ZR21
■車両本体価格(税込)=14,330,000円

BMW X4M COMPETITION/アクティブMディファレンシャル、Mモデル専用にチューンされたサスペンションなどが、SUVにして最大限のパフォーマンスを発揮。インスツルメントパネル、ドア、センターコンソールにはカーボンやアルミ素材を採用。


お問い合わせ
BMWジャパン 0120-269-437

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みんなのコメント

4件
  • 久しぶりに呼んでて楽しい車の記事でした。
    なかなかセンスがある文体ですね。
  • ぶっちゃけ、この三択どのモデルもセンス残念レベル
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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