F1のセーフティカーに「ヴァンテージ」、メディカルカーに「DBX」が採用。3月28日決勝のバーレーンGPから実戦デビュー
3月8日、2021シーズンよりFIA F1世界選手権の舞台に復帰するアストンマーティンは、オフィシャルカーとして「ヴァンテージ」がセーフティカーに、「DBX」がメディカルカーに選定されたことを発表した。
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今シーズンの開幕戦であるバーレーンGP(3月28日決勝)のスターティンググリッドに並ぶアストンマーティンは、アストンマーティン・レーシンググリーンにペイントされた2台のレースカーだけでない。F1世界選手権の歴史において、初めてアストンマーティンのオフィシャル・セーフティカーおよびメディカルカーがコースに姿を表す。
セーフティカーは、世界最速のレーシングカーが走るF1GPにおいて必要に応じて介入し、ペースをコントロールするというきわめて重要な役割を担う。そのため、モデルラインアップの中で最もパワフルな「ヴァンテージ」をベースに特別仕様車が開発された。
F1レースカーは、悪天候や事故発生時にセーフティカーが介入すると、理想的とは言えない低速走行を余儀なくされる。これが続くとタイヤの温度が低下してしまうため、先導するセーフティカーもできるだけ速い速度で走行する必要がある。この要件を満たすべく、同社のトビアス・ムアースCEOはエンジニアリングチームに指示し、ヴァンテージのサーキットパフォーマンス向上とラップタイム短縮に取り組んだ。
この結果、ヴァンテージのセーフティカーに搭載される4L V型8気筒ツインターボエンジンは、市販型より25ps向上した535psを発揮。685Nmの最大トルクに変更はないものの発生域は広がり、8速ATの改良によってシフトアップ/ダウン時の両方でダイレクト感や精度、そしてコントロール性が高められた。0-60マイル(約97km/h)加速は、ルーフのLEDライトバーをはじめとする専用装備を付加していながら市販型と同じ3.5秒をマークする。
エクステリアでは、ベーングリルと新しいフロントスプリッターを組み合わせることで、車速200km/h走行時に155.6kgのダウンフォースを発生するエアロダイナミクス性能が与えられた。ちなみにこのダウンフォース量は、市販モデルが同じ速度で発生する値を60kg以上も上回るものだ。
カラーリングは、今シーズンから実戦投入されるアストンマーティン・コグニザントF1チームのマシンからヒントを得たもの。フロントスプリッターなどには「ライムエッセンス」のピンストライプがあしらわれた。そしてF1セーフティカーならではの装備として、ボディには専用のグラフィックや無線アンテナ、LEDリヤプレート、ルーフマウント式のLEDライトバーが装着される。
ルーフのLEDライトバーは同社が開発したもので、ルーフラインより高い位置にあるカーボンファイバー製の台座に据えられている。このデザインはエアロダイナミクス性能に配慮されており、空気抵抗を最小限に抑え、ボディ上部のエアフローを整えて大型リヤウイングへと導くよう設計されている。
ステアリングやサスペンション、ダンパーなどにも改良が施されたほか、アンダーボディにまで手が入り、構造剛性も高められている。ボディの周囲にはエアロキットが装着され、ロープロファイルタイヤやカーボンセラミックブレークを採用することで、F1セーフティカーとしての資格を完璧に備えるに至った。フロントグリルには外からは見えない位置にダクトが追加され、ブレーキの冷却性能も高められている。
写真は公開されていないが、インテリアではFIA認証のレーシングシートのほか、F1マシンと同じ6点式ハーネスを装備。インパネにはふたつのディスプレイが取り付けられており、ドライバーとコ・ドライバーに対してのテレビ映像に加えて、最新のラップタイムや走行するレースカーの位置など、カスタマイズ可能な情報が表示される。センターコンソールの仕立ても市販モデルとは大きく異なり、サイレンの起動やLEDライトバーの点灯/消灯といった操作を制御するスイッチ・コントロール・システムが設置されている。
このヴァンテージ・セーフティカーをドライブするのは、F1セーフティカーのドライブを担当して20年以上の経験を持つFIA指定ドライバーのベルント・マイレンダー(ドイツ)。今回の発表を受けて、彼は次のようにコメントしている。
「世界中のF1ファンは私と同様に、アストンマーティンが(F1の)サーキットに戻ってくることを喜んでいます。このオフィシャル・セーフティカーは美しく、高いパフォーマンスを備えたクルマであり、アストンマーティンのエキサイティングな新時代を示すものです」
一方、メディカルカーに選出されたのは南アフリカ出身のアラン・ヴァン・デル・メルヴェがステリアングを握る「DBX」だ。メディカルカーもセーフティカーと同様のカラーリングが施され、ルーフレールに装着したLEDライトバーやLEDリヤプレート、メディカルカーを示すグラフィックが施される。
エンジンは「DB11」やヴァンテージにも搭載されている4L V型8気筒ツインターボで、550ps/700Nmを引き出すことにより、4.5秒の0-100km/h加速と291km/hの最高速をマークする。
車内には大型の医療バッグやAED(自動体外式除細動器)、2台の消化器、火傷応急キットなど、大量の装備を搭載しなければならないが、623Lのラゲッジルームを持つDBXは、ゆとりを持って積み込める。
インテリアの仕立ては市販型から大きく変更されていないが、シートは2-2レイアウトの4人掛け仕様になり、それぞれのシートは6点式ハーネスを組み合わせたスポイーツバケットタイプとなっている。パッセンジャーシートにはFIAフォーミュラ1メディカル・レスポンス・コーディネーターのDr.イアン・ロバーツと開催地の地元の医師が乗り込む。
インパネには、セーフティカーと同様にふたつのディスプレイが設置。ひとつはレースのライブ映像が、そしてもうひとつには最先端テクノロジーを駆使したレーシング・グローブが計測するレーシングドライバーの生理学的データがリアルタイムで表示され、事故発生時にはドライバーの状態について重要な情報が入手できる。
アストンマーティン本社のエンジニアリングチームによって開発されたこのセーフティカーとメディカルカーは、英国シルバーストーン・サーキットにおいて、高速耐久テストやアグレッシブなサーキット走行をはじめとする各種テストを重ね、合計走行距離は1万5000kmにおよんだ。
同社のトビアス・ムアースCEOは次のように述べている。
「全従業員と同様に、私も60年の時を経て、アストンマーティンがモータースポーツの頂点であるフォーミュラ1に復帰したことを誇りに思っています。これはアストンマーティンの重要な新時代のスタートです。私たちが製造するもっともダイナミックなスポーツカーであり、高い評価を受けているヴァンテージがフォーミュラ1オフィシャル・セーフティカーに、アストンマーティン初のSUVであるDBXがフォーミュラ1オフィシャル・メディカルカーに選定されました。世界中のサーキットで、これらの車両がその役割を果たすのを目にする体験は、私たちにとって誇り高い瞬間となるでしょう」
なお、これまでオフィシャルカーを務めてきたメルセデスAMGも引き続きその任にあたり、セーフティカーは「メルセデスAMG GT R」が、メディカルカーは「メルセデスAMG C63 Sステーションワゴン」が担当。ボディカラーはこれまでのシルバーからレッドに変更され、アストンマーティンのオフィシャルカーとともにF1GPの安全を守る。
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