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S-AWCの三菱! シンメトリカルAWDのスバル! WRCで鍛えられた最強4WDをもつ2社のメカを解説

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S-AWCの三菱! シンメトリカルAWDのスバル! WRCで鍛えられた最強4WDをもつ2社のメカを解説

 この記事をまとめると

■降雪地では4WDの需要が高い

4WDスポーツ乗りは安全のためにも覚えておくべき! ランエボVが世界に広めたゼロカウンター走法とは

■日本では三菱とスバルが4WDに長けたブランドとして認知されている

■それぞれのメカニズムを考察すると4WD機能が優れていることがよくわかる

 日本を代表する4WDブランドの特徴

 そろそろ本格的なウインターシーズンが到来。雪の降らない地域では、季節に影響される車両選びはあまりないと思うが、積雪地帯、もっと言えば豪雪地帯ともなれば、ドライ舗装路と比べて極端に路面μが低くなる氷雪路走行が日常の運転環境となり、当然ながら走破力の高い四輪駆動車、すなわち4WDが選択肢の大きな候補となってくる。

 実際、寒冷地での売り上げは伸びているいるようだが、4WD車はいつごろ日本の自動車市場に登場し、浸透したのだろうか? その歴史を少し振り返ってみることにしたい。

 商品化という意味では、戦後のかなり早い時期に実現している。三菱がウイリス・オーバーランド・モータース社の「ジープ」を完全国産化したのは1956年(ノックダウン生産の開始は1953年)のことだった。当時、日本は朝鮮戦争で使用する米軍軽戦闘車両の供給最前線拠点と見なされ、ジープの生産権利をもっていたのが三菱だったことがその発端となっていた。ただ、ジープはそのスタイルから見てもわかるように、一般の自動車市場で受け入れられる乗用車ニーズにはほど遠く、4WDの高い走破力を必要とする業種やマニアといったごく少数の間での需要にとどまった。

 一方、通常の乗用車、日常ユースで利便性が高く違和感なく使える4WD車として初めて商品化されたモデルがスバル・レオーネ4WDバン(1972年)だった。以後、スバルは継続的に乗用4WDモデルを市場に投入し、独自の水平対向エンジンと4WDの駆動方式を自社の看板メカニズムとして掲げ、今日にいたる市場を築いてきた。

 いってみれば、三菱とスバルは4WDメーカーとして国内では老舗的な立場にあり、またそれを企業のアピールポイントとしても打ち出してきた。こうしたことを象徴するもっとも代表的な例が、1980年代後半から1990年代中盤まで採用されてきたグループA規定による世界ラリー選手権(WRC)への参戦だった。

 三菱は、WRCがグループA規定に移行した直後の1988年、ちょうどこの時期にモデルチェンジされた新型ギャランシリーズにターボエンジンとフルタイム4WDを組み合わせたVR-4で本格的に参戦。スバルは、在来モデルから一大変革を図った新車種レガシィを1989年に発売。やはり1990年からグループA規定下のWRCに参戦した。量産車の基本骨格やメカニズムをそのまま競技車両で使わなければならなかったグループA規定は、参戦するメーカーの立場からは、自社製品の優秀性をアピールする規定として最適と受け止めていた。

 その後両者は、それぞれギャランからランサー・エボリューション、レガシィからインプレッサに参戦モデルを切り替え、世界選手権タイトルを獲得してきたことは広く知られた歴史的快挙である。そして、WRC参戦を通して4WDテクノロジーを磨き、大きな進化を遂げてきた。この両者が、ほかのメーカーとは一段異なる存在として受け止められているのは、やはり当然の成り行きといえるものだろう。

 走破性を求めるならやっぱりこの2社

 さて、両者の現在だが、まず三菱は「S-AWC(Super All Wheel Control)」と名付けたシステムを展開している。ランサー・エボリューションで培ってきたAYC(Active Yaw Contorol=アクティブ・ヨー・コントロール)とACD(Active Center Differential=アクティブ・センター・ディファレンシャル)の駆動メカニズムに、車両挙動安定装置のASC(Active Stability Contorol=アクティブ・スタビリティ・コントロール、ABS機構も含まれる)を組み合わせ、走行安定性、旋回性能、走破性能の向上を図っているのが特徴だ。

 簡単にいえば、4WDのクセを抑え込み、乗りやすさと高い走破性能の両立を目指す考え方で、旋回性能に関係するヨーモーメントの制御を行うAYC、前後駆動力の締結/解放を行うACDの開発による高い駆動力と回頭性の自由度が大きなポイントとなっていた。これらの開発により、ハイパフォーマンス4WDに三菱あり、を強烈に意識付けた。

 一方、1979年代初頭に、山岳作業車として実用性と高い走破性に着目して開発されたレオーネバンに端を発するスバルの4WDシステムは、レガシィのリリース時にセンターデフを装備するフルタイム方式が標準方式として定着。

 現在はアクティブトルクスプリットAWD(ACT-4 Active Torque Sprit)方式、VTD-AWD方式(Variable Torque Distribution=バリアブル・トルク・ディストリビューション=可変トルク分配)方式、DCCD-AWD方式、(Driver’s Control Center Differential AWD=ドライバーズ・コントロール・センター・ティファレンシャル付きAWD)、ビスカスLSD付きセンターデフAWD方式の4種類にわけられている。

 用途、目的に応じた4WD(スバル式表記はAWD)方式を複数ラインアップするあたりは、さすがにフルライン4WDを謳うスバルらしい対応だ。トルク配分固定となるべべルギア式センターデフをもつビスカスLSDの4WD方式を基本に、インプットシャフトとアウトプットシャフトの間に湿式多板クラッチを使い前後トルク配分を行うアクティブトルクスプリット方式、プラネタリーギヤによる可変トルク配分のVTD方式、トルク感応型LSDと電子制御式LSDを組み合わせたプラネタリーギヤ方式のセンターデフをもつDCCS方式(6速MT)と、じつに豊富な品揃えとなっている。

 三菱とスバルの4WD方式は、それぞれ違う視点からアプローチを行っているが、多様な走行シーンを想定し、その際、もっとも効率的(コストパフォーマンスも含めて)な4WDシステムを提供できる体制を整えている。逆にいえば、必要最小限の4WD性能なら、VCU(最近は電子制御式がほとんど)方式による4WDで要求性能は満たせるが、さらに1歩進めた段階で、走破性能や走行特性を求めていくと、三菱やスバルのような方式が生まれることになる……と受け止めてよいのだろう。

文:WEB CARTOP 大内明彦
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