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やっぱりトヨタは、いろいろとスゴいです──新型C+pod&C+walk T試乗記

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やっぱりトヨタは、いろいろとスゴいです──新型C+pod&C+walk T試乗記

トヨタの“C+”シリーズに今尾直樹が試乗した。未来の移動を予感する新シリーズの持ち味とは?

徹底的なイージー・ドライブ

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2022年11月の第2週、神奈川県の横浜みなとみらいで、トヨタのオール・ラインナップ試乗会が開かれた。2021年12月に発売となった超小型EVの「C+pod(シーポッド)」、FCV(燃料電池自動車)の「ミライ」、7月発売の「アクア」、8月の「ランドクルーザー」、9月の「カローラ・クロス」、そして10月の「C+walk(シーウォーク)T」など、この1年で登場した新型車が試乗用に用意され、開発担当者と気軽に会話もできる貴重な機会である。2022年に発売する新型BEV(バッテリー電気自動車)、「bZ4X」のプロトタイプも展示してあった。

最初体験したのがシーウォークTという立ち乗りの電動3輪車だったけれど、後述するシーポッドも含め、これら“C+”の文字がつく小さなEV群は、モビリティ・カンパニーへのモデルチェンジを宣言したトヨタの具体的な商品の第1弾だと見なすこともできる。

まずは法人需要を狙って発売されたシーウォークTは、セグウェイ同様、法律上、一般公道を走ることはできない。

特徴は、重心移動でコントロールするセグウェイとは異なり、前1輪、後ろ2輪で安定していて、徹底的なイージー・ドライブ化が図られていることだ。トヨタは「ウィングレット」という、セグウェイにより近い立ち乗り電動2輪車で実証実験をしており、「ひとをつけて、30分間教育をして、ようやく使っていただけるような乗り物はふさわしくない」と、考えをあらためたと開発担当者は語る。

ウィングレットの反省から、サイズ感にもこだわっている。全長はひとの歩幅(700mm)、全幅は腰幅(450mm)、ステップはできるだけ低く、ということで最低地上高は150mmしかない。歩行者と並走していても、違和感、威圧感をできるだけ小さくするためで、たとえば、ショッピング・モールとか空港内とかで、この小さなモビリティの利用者と歩行者が一緒に移動を楽しめることを想定している。

最高速は10km/hだけれど、乗るひとのレベルに合わせて2~6km/hまで5段階に速度の設定を変えられる。今回の試乗は6km/hに制限されていた。アクセルのレバーを押すと動き、放すと回生ブレーキで停止する。緊急時のために自転車と同様のブレーキも付いている。

クリープはまったくしないので、アクセルのレバーを無用心に押すと、突然スッと動いて驚くけれど、1度経験すれば、すぐに慣れて操作できるようになる。駆動は前輪内のインホイール・モーターが担う。前輪駆動なので、安定性はよい。

1回の充電で15km走行可能で、リチウム・イオン電池は取り外しができる。コードレスの電気掃除機みたいに、電池を取り出して近くの100V電源とつなげばよいから簡単だ。満充電まで約2.5時間かかる。

価格は、障害物を検知すると減速する安全装備付きで、35万4200円。ちょっと高価なようにも思えるけれど、すでに警備会社から問い合わせがきているという。広い工場とかショッピング・モールとかの警備員さんは1日2~3万歩、ということは14~21kmも歩いている。高齢の方も多い。そういう方々の重労働を軽くして、より長く働けるようになれば、と開発担当者はおっしゃる。

でも、それだけ歩いているから健康が維持できているのかも……。

というのは筆者の屁理屈で、やっぱり移動の選択肢が広がれば、より多くのひとに活躍の場が広がるわけで、おそらくトヨタが富士山の裾野に建設中の未来都市「ウーブンシティ」には、シーウォーク専用レーンが歩道に設けられるにちがいない。

これでよいのである。

シーポッドは、“超小型モビリティ”という国土交通省が2013(平成25)年に創設した新しい軽自動車のカテゴリー用に開発されたマイクロEV(電気自動車)である。

3サイズは全長2490×全幅1290×全高1550mm、ホイールベースは1780mmしかない。全長と全高は初代スマート並みで、軽自動車より900mmほど短く、スマートや軽より180mmもナロー、というのが特徴だ。

筆者は実物を見るのも初めてなら、試乗するのも初めて。成り立ちや開発コンセプトもよくわかっておらず、21世紀にこんなプリミティブな乗り物が現れたことに驚いた。ドアはペナペナだし、室内はダイハツ・ミゼットを思わせるぐらいシンプル。サイド・ウィンドウの開閉なんて、まさにミゼット方式で、つまり手動で窓のフレーム上部の突起物に引っ掛けて止めるのである。なんだか懐かしい。

試乗会のベースとなったホテルの中庭の石畳を走るときのゴトゴトした乗り心地、一般道に出る段差を越えるときのガタピシ……まるでサスペンションがないみたいである。

一般道に出て加速すると、ヒイイイイイイインッという高周波音がずーっとしている。

「嵐の音みたいですね」

というのは助手席の辛酸なめ子さん(マンガ家・コラムニスト)の感想だ。暴風の音みたいでもあるし、筆者には救急車のサイレンのようにも聞こえ、交差点を曲がるときには周囲をキョロキョロしてしまった。幸い、救急車はいなかった。エアコンを入れると、どわんどわんどわん、というドラミングみたいな音がして、これまたびっくりした。

スタート・ダッシュはEVの特性上というべきか、いい意味でオドロキで、周囲のフツウのクルマに伍して加速する。最高速度は法規上、60km/hに制限されているため、すぐに頭打ちになるのは残念だけれど、みなとみない地区の信号の多い通りだと、走るシケインと化したりはしない。

下り坂だと60km/hを超えるのは愛嬌というべきで、モーターが停止しても物理の法則で走っちゃうのだ。ステアリングは荷重がかかっていないとブラブラで手応えがなく、スタビリティはまっすぐ走れないことないけれど、あまり高くはない。う~む。いくら超小型モビリティだとはいえ、こんなのでよいのか?

これでよいのである。

試乗後、開発担当の方に筆者の感想を率直にぶつけたところ、筆者はなんにもわかっていなかったことを自覚した。上と較べるからいけない。シーポッドは「軽とバイクの間ぐらいのところを狙って」開発しているというのだ。

ははぁ。バイクと較べたら雨風も防げるし、安全性も高いだろう。おとな2人がパラレルに乗車することもできる。バイクとか「セニアカー」と呼ばれる「ハンドル形電動車いす」にはできない芸当である。

開発の方によると、走り出してウルサイと感じたのは、電動車に義務付けられた歩行者に対する警告音ではないか、ということだった。ヒイイイイインという、嵐の音みたいな高周波音は、モーターを駆動するために直流の電流を交流に変えるインバーターのスイッチング・ノイズらしい。1秒間に何千回と直流から交流に変換しているのだという。

ステアリングがぶらぶらなのは、パワー・アシストのない「重ステ」のため、ステアリングのギア比を高めにしているからで、その分ステアリングを大きく切り込む必要がある、という説明を受けた。モーターをリアに搭載する後輪駆動だから、ということもある、と筆者は思ったけれど、口には出さなかった。

サスペンションはないのかと思ったら、フロントはマクファーソン・ストラット、リアはトーションビームという小型車の定番がちゃんと付いている。問題はコスト? と、訊ねたら、「コストもありますが、かなりショート・ホイールベースでトレッドも狭い。となると、すごくむずかしくなります。サスペンションを柔らかくしすぎるとロール剛性配分で、スピンしやすくなる。転倒は、バッテリーが床下の低いところにあって重心が低いので、かなりいいレベルにあります」という回答だった。

ちなみに、モーターは最高出力12.5psと最大トルク56Nmを発揮する。出力は控えめながら、トルクはたとえば、ホンダの660cc自然吸気で65Nmだから、車重700kg弱のシーポッドには十分だといえる。

超小型モビリティの型式指定制度には衝突試験も義務付けられており、前面、およびオフセット衝突は40km/h、後面と側面は普通のクルマはおなじレベルが課されているという。高速道路には乗れない。税金は今のところ軽と一緒だけれど、バッテリーEVなのでグリーン税制や減税の対象となっている。

個人向けのシーポッドは、地方はもちろん、都市部でも駐車場に制約のある方の需要を期待しているという。

法人向けとしては、活動エリアが決まっているような仕事、狭い住宅街での介護訪問など、庭先に駐車しても邪魔にならないサイズで、なおかつ環境にもやさしい、ひとり乗りで十分な営業車として使われることを想定している。

1充電の走行距離は150kmと、近所の買い物程度にしか使わないのであれば、1週間ぐらい持つかもしれない。充電は200Vで5時間、100Vで16時間かかる。価格は2タイプであって、上のグレードで171万6000円。CEV(クリーンエネルギー自動車)補助金が個人で22万円、東京都だと独自の補助金ももらえる。

将来を見越した“仕込み”

「安めの軽自動車と同じぐらいの価格でEVを提供できる。電気なので、ガソリンと比べるとランニング・コストは安い。トータルで、軽自動車に対してコスト競争力がある」と、担当者の方はおっしゃるのだった。

超小型モビリティの制度は、もともと高齢者の移動の自由を守るためだった。フツウの自動車とセニアカーのあいだはドンと空いている。シーポッド自体はセニアカーとは異なり、自動車免許が必要で、シーポッドの目的は免許返納までの時間を伸ばすことにある。

単眼カメラとミリ波レーダーによるプリクラッシュセーフティ機能や踏み間違い防止のブレーキも標準装備しており、これは自動車ではないと思えば、上出来といえるのではあるまいか。

「クルマとして見ていただくと、もっとこうしたいというのが出てくる」というのは開発担当者の正直な思いにちがいない。

「まだ、これから始まったばかり。軽より下のモビリティって、なにが欠けていて、どういうものが必要とされているのか。そのピースの第1弾だと思っています。これ(シーポッド)をより充実していくかたちで、移動の自由を提供していきたい」

なお、エアコンを入れると響いてきたドラミングみたいな音は、電動コンプレッサーの音だそうである。エアコンがあると思えば、ないに比べたら100倍ありがたい。

あの騒音のことを考えると、むかし、試乗したベスパの、より正確にはピアッジオ・アペという50ccの小さな3輪のトラックバンを思い出した。なので、シーポッドのトラック・バージョンがあるといいですね、と申し上げた。すると、「そのお声はすでにいただいております。ご高齢の方って軽トラを日常の足に使っておられて、これでもっとラフに荷物を載せられるバージョンがあったら、とってもうれしいという声をいただいています」と返された。

とはいえ、シーポッドの全長と全幅は規格ギリギリだから、これでトラックを仕立てるのはむずかしそうだ。

「助手席をなくせば、そこにL字型のけっこう広い空間ができる。そこにたとえば、草刈機みたいなものも載るんですよ。そういったことも考えていかないといけないかなと」

シーポッドのボディは全面、樹脂でできている。骨格のアンダー部分で衝突性能を出し、アッパー部分はパイプで組んである。これは将来、上物だけ違うバリエーションをつくりやすいように仕込んでいるのだそうだ。

地味だけれど、こうした努力、というのか、将来を見越した“仕込み”も、トヨタの現場力の一例ということになるのだろう。やっぱりトヨタは、いろいろとスゴいです。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.)

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