助手席の前でバコーンと開くグローブボックス。多くの人が車検証置き場として使ってきたこの空間が、なんか最近狭くなってきたように思う。どんな理由で狭くなったのか。そこには現代のクルマらしい理由が隠されていた!
文/ベストカーWeb編集部、写真/ベストカーWeb編集部、AdobeStock(トップ画像=xiaosan@AdobeStock)
グローブどころか車検証も入らないじゃん!! 最近のクルマのグローブボックス狭すぎないか?
■ソフトウェアの進化でダッシュボード裏が満杯になってきた!
三菱 eKクロススペース下段のグローブボックス。車検証を入れるとなにも入らない
助手席前の収納として便利なグローブボックス。どんなクルマにも当たり前のように装着されてきた装備だが、こいつに異変が起きている。じわじわと容量が小さくなり、ティッシュケースや車検証が入らなくなっているのだ(クルマの取扱説明書がブ厚いという説もある)。
たとえばベストカーの社用車として活躍している三菱 eKクロス スペース。2段式のグローブボックス収納を備えるものの、下段に車検証を入れるとギチギチで何も入らない。
かわりに助手席シート下の小物入れが2段底になっていて、そこが車検証スペースになっている。兄弟車の三菱 クロス/日産 デイズでは、なんと助手席のドアトリム下部に車検証を格納する仕組みだ。
昨年デビューしたBEVのトヨタ bZ4X/スバル ソルテラに至ってはグローブボックスそのものがなく、助手席下には膝を温める輻射ヒーターが備わっている!(もちろん運転席側にも)
グローブボックスとは、もともとはその名の通り「手袋(=グローブ)」を入れておく場所だった。昔の運転にはドライビンググローブが必須だったし、まさかの際には修理用手袋も必要だったためだ。
そんな本来の目的からすればグローブボックスは小さくてもいいのだが、各社が収納力を競う過程で大容量化が進み、「ティッシュケース+車検証くらいは入って当たり前」という時代が長く続いてきた。なんでそれがサイズダウンし始めているのか。
■EVの普及は収納スペースの進化も!?
トヨタ bZ4Xのダッシュボードにはグローブボックスがないかわりに、大容量のセンターコンソールを備えている
そこには自動車の進化が関係している。グローブグローブボックスが収まるダッシュボード裏は、昔から「自動車装備の一等地」といわれるほど重要な場所で、エアコンや電装品、オーディオ機器、それらを繋ぐハーネス類といったさまざまな部品が場所の取り合いを演じてきた。
グローブボックス裏にはたいていエアコンユニットやヒューズボックスが隠れていることが多いのだが、近年自動車のソフトウェア化が進んだことでそのための機器が急速に増え、グローブボックスのスペースを侵食し始めたというわけだ。
たとえばスバルWRXのDCCD(ドライバーズ・コントロール・センターデフ)は制御ユニットがグローブボックス裏にある。それほど特殊な装備でなくても、ETCのユニットやDVDプレーヤーがグローブボックス内にあり、スペースをとっているというクルマは少なくないだろう。
今後自動運転や通信機能の高度化が進めば、この傾向はもっと強まるに違いない。
ただし誤解してほしくないのは、グローブボックスが狭くなるからといって、クルマの収納場所がなくなるわけではないということ。各社は様々な工夫を凝らし、グローブボックスに代わる収納スペースを確保しているのだ。
たとえば先に述べたbZ4X/ソルテラはフラットな床面を活かして、大容量のセンターコンソールを実現している。電気自動車はパワーユニットが柔軟に設計できるから、今後はその恩恵も受けられるだろう。
いろんな場所にクルマの収納は作れる。未来の自動車は、今とはまるで違う使い勝手になるのかもしれない。
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