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8000回転オーバーまでギンギンに回るVTEC! カミソリのように鋭かった歴代「シビックタイプR」伝説

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8000回転オーバーまでギンギンに回るVTEC! カミソリのように鋭かった歴代「シビックタイプR」伝説

歴代シビックタイプRのNAエンジン搭載モデルを振り返る

 ホンダの歴史に燦然と輝く「タイプR」は、初代NSXで登場して以来インテグラやシビックにも設定され、多くのファンから注目を集める存在となった。

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 タイプR以外にも、市街地での快適な走りをカバーした「タイプS」や「ユーロR」もあるが、ホンダのスポーツモデルの筆頭はやはり「タイプR」である。なかでもホンダの基幹車種であるシビックに設定されたタイプRの歴史は長く、すでに北米で開発中の新型シビックタイプRに、カモフラージュを施した車両が披露されるなど、日本でも販売されるであろう新型に大いに期待が膨らむ。 とはいえ ホンダ党のオジサンたちにとってのシビックタイプRといえば、EK9から始まる自然吸気モデルの数々。8000rpmまでギンギンに回る歴代シビックタイプR、しかもNAモデルの歴史を振り返る。

切れ味鋭い初代シビックタイプR【EK9型】

 1997年8月に登場した6代目シビック(EK型)をベースに、同モデルとしては初となるタイプRが登場した。古くからワンメイクレースなどで活躍してきたシビックだが、その期待はホンダファンに限らず当時のクルマ好きの間で話題となった。 注目は1Lあたり116psを実現した、B16B型直4DOHC VTECエンジンの搭載。1Lあたり106psを発揮する、当時のトップグレードSiRに搭載されたエンジンをベースに、吸排気系や圧縮比をアップ。レッドゾーンを8200rpmから8400rpmまで高めたほか、高回転域のトルクも増強され、そのスペックは185ps/8200rpm、18.3kg-m/7500rpmと、1.6L NAエンジンとは思えない高出力と高回転域の高トルクを発揮した。 車両自体も防音材やリヤワイパーの廃止などで大幅な軽量化が図られ、ボディ剛性強化やブレーキ容量のアップ、専用エアロの装着で重量増となる要素を抱えながらも、SiRIIとの比較では30kgの軽量化に成功。車両重量は1050kg(編集部注:装備内容により異なる)としていた。じつはレカロ製シートやMOMO製ステアリング(エアバッグレス仕様はマイナス10kg)の装着により重量増に繋がるのだが、そこは外すことはできないアイテムとして、シビックタイプRのアイコンとなっている。 世界基準となったボディの剛性感は非常に高く、ジキルとハイドと称された低回転域と高回転域でエンジンのフィールが変わる、B16B型は素晴らしく官能的であった。2速や3速でアクセルを全開にし、カムが高回転側に切り替わったときの市販車とは思えない恐ろしくも軽やかなレスポンスは、これが俗にいう「カムに乗る」ということなのか? と多くのドライバーを感嘆させたに違いない。 それでいて最大トルク発生回転数がこれほど高いモデルは珍しく、ドライバーの腕さえあれば、2クラス上のマシンを追い回せる性能を誇った。ほかのターボ4WDのようなド派手なエアロパーツがないことから「山椒は小粒でもぴりりと辛い」、高出力で軽量化について徹底的に考え抜かれ誕生した。

■EK9シビックタイプR 主要諸元

○全長×全幅×全高:4180mm×1695mm×1360mm

○ホイールベース:2620mm

○トレッド 前/後:1480mm/1480mm

○車両重量:1040~1090kg(※パワステやエアコン、ABS、SRSエアバッグの装着装備により異なる)

○乗車定員:4名

○最小回転半径:5.4m

○室内長×室内幅×室内高:1705mm×1390mm×1115mm

○エンジン: B16B 直列4気筒DOHC

○総排気量:1595cc

○最高出力:185ps/8200rpm

○最大トルク:16.3kg-m/7500rpm

○タイヤサイズ:前/後 195/55R15 (前後とも)

○ブレーキ:前/後 ベンチレーテッド・ディスク/ディスク

○サスペンション:前/後 ダブルウィッシュボーン式

○当時車両本体価格:199万8000円(税込)※東京地区販売価格

トールスタイルが不人気だった2代目【EP3型】

 2001年10月には2代目(EP3型)が登場した。ベースとなる7代目は「スマート・シビック」と呼ばれ、3ドアも5ドアもワンモーションフォルムのような、居住空間を意識した現在でいうトールボーイ的コンセプトに変わっていった。しかしタイプRの進化は止まらず、製造は多くの販売台数が見込める英国製造だったものの、数カ月前に発売された最後のインテグラタイプR(DC5型)同様に尖がった仕様だった。 エンジンは排気量がアップされ、2L DOHC i-VTECエンジン(K20A型、215ps/20.6kg-m)+6速MTを搭載。もちろんレカロ製のバケットシートやMOMO製シフトノブも備わり、高性能モデルの基本を押さえた構成となっていた。特徴はインパネ配置のシフトノブで、これはベースのシビックが現在でいうミニバン的なスタイリングに変わったから仕方がないのだが、従来よりも着座位置が高いこともあって、あまり評判は良くなかった。 だが、エンジン性能を最大限駆使できるように考慮された6速MTは、1速、2速はトリプルコーン、3速~6速までダブルコーン・シンクロが備わるクロスレシオで、ショートシフト化によって小気味良い操作感覚を実現。超軽量鍛造クロムモリブデン鋼フライホイールの採用もあって、エンジンのキレ味鋭いフィーリングを発揮した。 ボディは高張力鋼板の多用もあって、先代に対して静剛性で曲げが20%、捻りが80%向上させ、前後のストラットタワーバーやパフォーマンスロッドの追加もあって軽量化&高剛性のボディを両立。

 ステアリングもVGR(可変ギヤレシオ)+EPS(電動パワーステアリング)を採用し、フロントストラット、リヤダブルウィッシュボーンのサスペンションも熟成が図られている。コーナーリングでのリヤのロールセンター高の変化を減少させて、つねに前下がりのロール姿勢を保つセッティングとしていた。

 これによってクルマの挙動がつかみやすく、ヘリカルLSDや205/45R17の大径タイヤの採用と相まって走る楽しさを追求。あまりスポーツ性を感じさせないスタイリングだが、走らせるとやはりタイプRだった。 ちなみにエンジン性能を大幅に高めながらも、排気量アップによって官能性はスポイルされた印象。アクセル全開でのアドレナリン分泌量は少ないかもしれないが、B16B型のような鋭利さこそないものの総合力では確実に戦闘力が高められていた。 それでいて居住空間はシビックだから、使い勝手が悪いわけがない。後席も荷室も十分な空間が残されており、ファミリーカーとしての能力も十分。今日は家族が外出中だから「走りを楽しもう!」といったシチュエーションにもピッタリだった。 2004年にはマイナーチェンジが行われ、新しいエアロパーツやプロジェクター6灯式ヘッドライトに改良、イモビライザーも標準装備となった。こうして進化を続けたタイプRは、シビックという車名から独立したと言ってもいい、ひとつのクルマとして世間から認知される存在となった。

■EP3型シビックタイプR 主要諸元

○全長×全幅×全高:4135×1695×1430mm

○ホイールベース:2570mm

○トレッド:前/後 1470mm/1470mm

○車両重量:1190kg(※エアコン装着車1210kg)

○乗車定員:4名

○最小回転半径:5.7m

○室内長×室内幅×室内高:1805mm×1455mm×1175mm

○エンジン: K20A型直列4気筒DOHC

○総排気量:1998cc

○最高出力:215ps/8000rpm

○最大トルク:20.6kg-m/7000rpm

○タイヤサイズ 前後:205/45R17

○ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク

○サスペンション 前/後:マクファーソンストラット/ダブルウィッシュボーン

○当時車両本体価格:220万円(税込)

インテグラの後継でもある尖った4ドアセダンの3代目【FD2型】

 2007年には初代(EK9型)から数えて3代目モデルとなる、FD2型がデビューした。シビックタイプRとしては初の4ドアセダンとなり、これまでのモデル以上に一段と硬派なモデルであった。実用性のあるボディスタイルながら、とにかく硬くて鋭くて本気。サーキットを本拠地とする開発がなされており、一般道の気持ちよさよりも運動性能を徹底的に突き詰めたモデルであった。 外観は4ドアセダンながら、空力を追求している。専用エアロパーツは街に溶け込むことはせずに空力性能に特化。大型のリヤスポイラーやディフューザーなど、機能を強化して先代モデル(EP3型)の凡庸なスタイリングとは一線を画すスポーティさを備えていた。

 ボディはDC5型インテグラタイプR比で50%の剛性アップを実現。リヤに専用ダブルウィッシュボーンサスペンションやヘリカルLSD、ブレンボ製のアルミ合金製4ポッドブレーキキャリパー、軽量ホイールと組み合わされる225/40R18のBS製ポテンザRE070が奢られ、とてもスパルタンな仕上がりとなっていた。 エンジンはK20A型DOHC i-VTECを搭載し、225ps/8000rpm、21.9kg-m/6100rpmのスペックを誇りながら、クロスレシオの6速MTはトランスミッションケースにアルミ合金製を採用。2L自然吸気の上限とまで言える驚異の性能を発揮させていた。 ホンダはタイプR発売の以前から高性能DOHCエンジンのモデルを「Si」、それを上まわるモデルを「SiR」、さらに走りに特化したモデルを「タイプR」とし差別化。タイプRクラスだが一般道での乗り心地を犠牲にしないモデルを「タイプS」や「ユーロR」としてきたが、このFD2型は歴代シビックタイプRのなかでも、紛れもないスパルタンな「タイプR」だったと言える。 それこそ箱根の峠道ではめちゃくちゃ気持ち良く、素晴らしく楽しい。ところが都内に帰ってくると「これはきつい……」「後席には乗りたくない……」などの声も。4ドアセダンだが普段はファミリーカーとして使え、たまにひとりで走りたいときは痛快な相棒になります、という二兎追ったマシンではなく、あくまでもサーキット専用車のイメージに近い仕上がりだった。 それゆえにモデューロから専用ダンパーが設定されており、純正ダンパーから交換することでしなやかでファミリーカーとしても使える快適性を確保。普段のファミリーカーユースから「たまには本気で走りたい!」というお父さんの相反するニーズを両立させてくれた。 個人的なエピソードだが、当時、懇意にしていたホンダのセールス氏から「自動車雑誌がモデューロの足が良いって書いてあるから、みんなオプションパーツを買ってくれるんです」と言ってもらえたことを思い出す。つまり、FD2を購入したオーナーの多くが、足の硬さが気になるほどスパルタンであったという訳だ。

■FD2型シビックタイプR 主要諸元

○全長×全幅×全高:4540mm×1770mm×1430mm

○ホイールベース:2700mm

○トレッド:前/後 1505mm/1515mm

○車両重量:1270kg(※エアコン非装着車は1250kg)

○乗車定員:4名

○最小回転半径:5.9m

○室内長×室内幅×室内高:1900mm×1470mm×1170mm

○エンジン: K20A型直列4気筒DOHC

○総排気量:1998cc

○最高出力:225ps/8000rpm

○最大トルク:21.9kg-m/6100rpm

○タイヤサイズ:前/後 225/40R18 (前後とも)

○ブレーキ:前/後 ベンチレーテッド・ディスク/ディスク

○サスペンション:前/後 ストラット式/ダブルウィッシュボーン式

○車両本体価格:283万5000円(税込)

プレミアム性も兼ね備えた英国生産の異色「R」【FN2型】

 2009年に異色のタイプRが発売された。それは英国で生産された現地仕様のシビックで「欧州ばかりずるいぞ!」というユーザーの声が届いたのか、2010台限定で「シビックタイプRユーロ」の名で日本国内でも販売された。 外観はホンダがアスリートボディと称する、塊感のある力強くもスタイリッシュな造形。EK9の後継モデルと言われても信じてしまいそうな、美しいハッチバックフォルムが採用された。そこへ専用エアロパーツやボディ下面をカバーで覆うことで空力性を向上。欧州仕様の高い剛性ボディや、フィット同様のセンタータンクレイアウトによる室内の広さと低重心を両立させた。 エンジンはスペックこそ先代モデル(EP3型)に劣るものの、K20A型2L直4DOHCは201ps/7800rpm、19.7kg-m/5600rpmの実力を持ち、ドライブバイワイヤのセッティングと2次バランサーによって洗練された回転フィールを獲得。一段と進化したVSA(ABS+TCS+横滑り防止制御)と、225/40R18を履きこなすボディ&サスペンションもあり、プレミアムスポーツに仕立てられていた。 走らせるとまず感じるのがボディの素晴らしさ。プレミアム感たっぷりのボディの強さとしなりを感じることができ、走り出してすぐに上質であるとわかるほどであった。そして高精度で操舵の気持ち良さに加え、6速MTを駆使して全域でトルクフルなエンジンを操れば、近所へのお買い物でもファン・トゥ・ドライブが楽しむことができた。 また、専用のホンダRスペックシートはホールド性と長時間の快適性を両立している。さらに専用メーターパネル(自発光/レッド照明/REVインジケーター)は視線移動が少ない仕立てで、ロングドライブの疲労を軽減。市街地でも高速道路移動でも快適で、スポーツドライブも楽しいプレミアムスポーツとなっていた。 それだけに手に入らなかったファンは納得いかなかっただろう。最初の2010台は即完売でホンダの社員でも買えない人が続出。2010年には車体色を変えて1500台を追加したのだが、こちらも完売となった。

■FN2型シビックタイプR 主要諸元

○全長×全幅×全高:4270mm×1785mm×1445mm

○ホイールベース:2635mm

○トレッド 前/後:1505mm/1530mm

○車両重量:1320kg

○乗車定員:4名

○最小回転半径:5.6m

○室内長×室内幅×室内高:2230mm×1445mm×1195mm

○エンジン: K20A型直列4気筒DOHC

○総排気量:1998cc

○最高出力:201ps/7800rpm

○最大トルク:19.7kg-m/5600rpm

○タイヤサイズ 前後:225/40R18 

○ブレーキ 前/後:ベンチレーテッドディスク/ディスク

○サスペンション 前/後:ストラット式/車軸式

○当時車両本体価格:300万円(税込)

高性能NAエンジンを味わい尽くすにはいまがラストチャンス!?

 現在のシビックタイプRはターボエンジンを搭載するが、ホンダ同様に高回転NAエンジンで一世を風靡したBMWのMモデルも昨今はターボ化されている。多くの人がNAのあのころはよかったなぁ、などと思っている方も少なくはないに違いないはずで、筆者もそのひとりだ。 しかし、年々、厳しい環境性能が求められるようになり、高性能NAエンジンでは排ガスの基準値をクリアするのは難しく、同時にMT車自体も激減している。昨今のターボ化されたスポーツモデルも、数年後にはあのころはよかったなぁなんて懐かしんでいても、不思議ではない。 そう考えると、シビックタイプRに限らず気になる車種がある方は今すぐに試乗して、購入できるのであれば買うべきだ。ターボだろうがNAだろうが、内燃機関のMT車に残されている時間はあまりないのかもしれない。

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みんなのコメント

43件
  • こんな事を書くと古い人間だと言われかねないが、排気量を上げたりターボ化して速くするのは簡単。テンロクで格上の車にも負けないクルマに魅力を感じます。EK9はそんなクルマでした。
  • レッドゾーン超えても吹けて
    9000回転でレブリミッターに当たるという高回転指向っぷりよ
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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