この記事をまとめると
■いまからちょうど50年前となる1972年がクルマにとってどんな年だったかを振り返る
280馬力までいかに到達したか? 昭和の国産車パワー競争の歴史と名車11台
■ホンダの代名詞であるシビックの初代モデルがデビューした
■発売される新車のほとんどが排ガス規制により出力を落としていた
先行きが見えない真っ暗なクルマの未来
ホンダ・シビックが誕生した1972年は、1970年に米国で起きた排出ガス規制への対応の真っ只中のことであり、自動車産業にとっては暗い時代だった。当時、高校から大学へという年代であった私は、もうクルマの未来はないのではないかと絶望感を覚えるほど、出てくる新車は排出ガス対応に苦悩する姿を見せつけたのである。
初代シビックも、1973年にはCVCCを実用化し、世界初の排出ガス対策車として世の中を驚かせた。まだキャブレターを使った時代の燃焼制御はかなり難しかったはずで、アクセル操作に対する応答に時間差を覚える運転感覚であった。変速しようとアクセルペダルを戻しても、すぐに回転が下がってくれないような様子があった。
マツダは、ロータリーエンジンの特徴を活かし、サーマルリアクター(熱反応器)と呼ぶ後処理装置を取り付け、ロータリークーペでまず発売した。ロータリーエンジンは、レシプロエンジン(ピストンが上下する一般的なエンジン)に比べて燃焼温度が低いため、窒素酸化物(NOx)の排出量が少ない特徴があった。このため、逆に燃え残りとなる炭化水素(HC)を含んだ排出ガスを後処理で燃焼し、浄化しようとしたのがサーマルリアクターだ。ロータリーエンジンならではの滑らかな回転は保たれたが、アクセルを戻した際にバックファイヤーのような違和感を残した。
全体的には、排出ガス量を抑えるため出力は抑えられ、胸のすくような加速を体感できない車種が多かったと記憶する。そうしたことが、クルマの未来を暗く思わせたのだ。
しかしその後、三元触媒といって、排出ガス浄化を求められる、一酸化炭素(CO)、HC、NOxを、ひとつの触媒で処理できる後処理装置が実用化され、クルマは排出ガスの規定を達成したことで、再び出力を取り戻していくのである。
日本は、そうした排出ガス浄化の取り組みで世界の先端を行っており、1978年に昭和3年度規制を実現すると、1980年代へ向けパワー競争に入っていく。
ターボエンジン車や、DOHCエンジン車が新たに次々と開発され、加速の爽快さや、運転する喜びを取り戻していく。そして1990年のバブル経済へ向け、高性能、高級化の一途を辿り、たとえば、スカイラインGT-Rの復活が叶うのである。
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みんなのコメント
しかし今から思えば、マツダがロータリーのまま規制をクリアしたって凄い。
その努力があったから、日本車初のルマン総合優勝ができたんだろうな