待望のモデルに試乗することができた。プジョーリフターである。このモデルの魅力はたくさんあるが、なかでもさまざまな場所に用意された多彩な収納は気持ちを高揚させてくれる。ここに何を入れようか、悩むのもまた楽しいのだ。(Motor Magazine 2020年7月号より)
アイデア満載の多彩な収納スペースを用意
この2年間、プジョージャポンのコールセンターにかかってきた、商品に関する問い合わせで一番多かったのは「リフターの日本への導入はいつですか」だったそうだ。ひと言で表すと、ワゴンとミニバンとSUVという、日本で人気のカテゴリーを掛け合わせたようなクルマであるからして、気になる人が多いのも頷ける。
【くるま問答】最近のクルマにテンパータイヤはない。パンク修理キットをどう使う? 最高速は?
デザイン的な特徴は全高1890mmと、背が高いこと。そしてこの高さを、機能を持つデザインとして生かしてくるのが、さすがフランス車であり、今回そこは使い勝手に割り振られている。
その筆頭株が、度肝を抜かれる場所に設けられた、フロントルーフトレイだ。ガラスルーフの真ん中に設えられた、半スケルトン状のセルロイド風の物入れは、感覚的には電車の網棚的な感じとでも言えばいいだろうか。すぐ手に取りたい荷物が、シートを占有することなく置いておける。
さらに、フロントサンバイザーの上にも、ラゲッジスペースの上にも収納がある。両者に共通しているのは、荷物の置き忘れに対する工夫がされているということだ。サンバイザーを下げれば穴が、ラゲッジスペースの上は室内側からだと引き違い戸になっているが、後方からはガバッと戸棚ごと下げて確認できる。こういう単純機能をオシャレに感じさせられるところが、なかなか真似できないフランス的なセンスだと思う。
また、背が高いということは、テールゲートの面積も広くなる。そこで設けられたのが、ガラスハッチだけ開く機構。その高さからでも物に手が届くように、ラゲッジ床は2段式になっている。ちなみにラゲッジルームは、最大にすると、プジョー車の中でこれまで一番大きかった5008の容量を上回る、圧倒的な広さを持つという実力派でもあるのだ。
ディーゼルエンジンとの相性もよく元気に走る
それとは反対に、コンパクトにまとまっているのが、iコクピットが採用された運転席まわりである。小径ハンドルを用いた、最近のプジョーに共通するデザインだが、シフトレバーも平たいダイヤル型の省スペースタイプ。これがとっても運転しやすいのだ。女性は間違いなくしっくりくると思う。すべての操作がしやすいポジションが取れて、メーターもバッチリ見える、これほどスタイルが決まる運転席もなかなかないと思う。
ただ少々気になるのが、外観デザインによってサイドウインドウの端に黒い影が入ることだ。しかし、そのうち気にならなくなったのは、それが視界の邪魔にはならないことと、予想以上に走り味がよかったからだろう。
元来、荷物も人も多く積みたくなるこの手のクルマと、ディーゼルエンジンの相性はいいとされているが、とくにこのパワートレーンは、低速トルクをかなりしっかり出してくれるタイプ。しかも、たとえばコーナー後半の立ち上がりから、ジワーッとアクセルペダルを開ける手前、ただペダルに足を置いているくらいの感覚のところから、グググッと力がみなぎってきて、しっかり伸び感が感じられるのだ。
エンジンの搭載位置が低いこともあり、背が高いわりにはフラフラ感も抑えられていて、パドルシフトを駆使して元気よく、なんていう走り方をしても、意外なほど楽しい。
また乗り心地の中でも、とくにデコボコ路、荒れたところ、砂利道のいなしが上手いから、いわゆる荷物車っぽいガタゴト感がない。乗れば乗るほどいいクルマ、道具としてガンガン使えて味が出てくるスルメカーなのである。
オマケに、アドバンスドグリップコントロールと呼ばれる、路面状況に合わせて5つのモードから選択できるドライビングモードと、ヒルディセントコントロールも装備されているので、アクティブに走り回れること請け合いだろう。今後はきっと「試乗したいんですけど」という問い合わせが、かなり増えるに違いない。(文:竹岡 圭)
■プジョー リフター デビュー エディション主要諸元
●全長×全幅×全高=4405×1850×1890mm
●ホイールベース=2785mm
●車両重量=1620kg
●エンジン= 直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量=1498cc
●最高出力=130ps/3750rpm
●最大トルク=300Nm/1750rpm
●駆動方式=FF
●トランスミッション=8速AT
●車両価格(税込)=336万円
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