2022年9月。スーパーフォーミュラ・ライツのタイトルを逃した太田格之進は、岡山国際サーキットで泣き崩れた。わずか6ポイント、小高一斗に届かなかった。
しかしその挫折から3カ月後、スーパーフォーミュラのルーキーテストでチャンスをつかんで2023年のフル参戦が決まると、にわかに風向きが変わる。スーパーGTでもGT500クラスへとステップアップを決めた太田は、スーパーフォーミュラ1年目のシーズン後半には、早くも安定して上位へ進出。そして最終戦鈴鹿では、初優勝を手にするまで上り詰めた。
怪我からの復帰戦で見事3位表彰台の山本尚貴。「まだやれる」レース後に見せた涙と覚悟のアクセルオン
『いま、もっとも勢いに乗る若手』。そんな表現がしっくりくる京都府出身・24歳の太田は、本心を包み隠さずあっけらかんと話すそのキャラクターでも、周囲の心をつかむ。第1戦予選後の記者会見では、「そのまんまやな。もうちょっと猫かぶった方がええんちゃう?」と阪口晴南(VERTEX PARTNERS CERUMO・INGING)からツッコまれるほど、普段の会話とオフィシャルな発言の間に境目がないのだ。
昨年最終戦で勝利した太田は、オフをいい気分で過ごすことができたようで、「ちょっと羽を伸ばしすぎたかな」と笑う。
「このシーズンオフを手放したくないというか、『まだまだレース始まらなくていいよ』くらいの感じなんですけど」
そう開幕前のテストで語った太田だが、もちろん戦う準備ができていないという意味ではない。2024年も引き続きDOCOMO TEAM DANDELION RACINGからスーパーフォーミュラに参戦する太田は、開幕2週間前の公式合同テストを総合7番手と、好位置で終えていた。
■「勝ちを狙えるレース」でスタート失敗
迎えた鈴鹿での開幕戦も、予選日から好調。Q2では「2回のテストとフリー走行含め、一番いいラップを刻めた」と、阪口の隣に並ぶ2番手を獲得した。
だが、予選日の練習までは好調だったスタートで失速、1周目を終えて7番手に後退するという、不本意な決勝オープニングラップを味わうことになる。
「クラッチのバイト(ポイント)が、全然安定しないという問題を抱えていました」とレース後に太田は明かした。
「昨日の(FP1終わりのストレート上での)スタート練習が良すぎたのですが、今日は気温も低いし、そこまで温めきれないから、そんなにバイトさせちゃダメだろう、という意見もあって。バイトポイントについては、スタート直前まですごく悩んでいました」
結局、スタートではタイヤがホイールスピンしすぎてしまい、出遅れることに。「あれでも(クラッチの)つながる量は少なくしたんです。それでもつながりすぎてしまって……ホイールスピンが多すぎて、お話にならなかったですね。イン側のグリッドはきつかったとも思うんですけど、(真後ろの佐藤)蓮はめちゃくちゃスタートが良かったので、バイトポイントが悪かったとしか言いようがない」と太田。
その後のペースは良く、11周目にタイヤ交換義務を済ませると、アウトラップでも同時ピットだった福住仁嶺(Kids com Team KCMG)をパス。さらに、1周前にピットインしていたチームメイトの牧野任祐に迫られるが、ギリギリのところでこれを封じ込めた。
「ピットのタイミングで2台を抜いて、その後もステイアウト組を2台抜いて、最後の方もペース的には一番速いくらいだったと思いますし、『タラ・レバ』はありませんが、先頭でスタートできていたら、正直、勝ちを狙えるレースだったと思います。展開は悪かったですが、内容としてはいいレースだったかなと思います」
太田も言うように、終盤は前を走る3番手の山本尚貴(PONOS NAKAJIMA RACING)を射程に捉えるところを走行した。
「残り15周くらいのタイミングで『これはいけるな』と思い、無線でも『尚貴さんに照準を絞ろうと思う』と言いました。そのときは3号車(山下健太/KONDO RACING。実質の2番手を走行)がまだ遠かったので、『尚貴さんだけなら、たぶん抜けるだろう』と思っていたのですが、意外と3号車が近づいてきて、尚貴さんがストレート上でトウを使える状態になってしまって……。あと、ちょっと風が強くて、(前車から)1秒以内に入るとすごく走りにくかったですね」
太田は結局、山本の背後の4位でチェッカーを受けた。
「ペースとしては全然速かったし、チャンスはあるかなと思っていたのですが、マシン的に『東コース(前半)で稼いで西(後半)で失う』みたいなセットアップになっている傾向があったので、西で抜き切るのは難しかったな、という印象ですね」
■シケインで接触回避「あの判断はすごく良かった」
太田はこのレースで2回、チームメイトの牧野と接近戦を演じている。1度目は序盤のセーフティカー明けの6周目から7周目、日立Astemoシケインで前をゆく牧野に仕掛けたシーン。このときは一度は太田が前に出るが、ホームストレートでサイド・バイ・サイドとなった後、1コーナーで牧野に抜き返されている。
2度目は、ピットで逆転した後のアウトラップのシケイン進入。インに飛び込んできた牧野の5号車が縁石上で跳ねてアウト側へ。これを太田はコース外へと避ける形でかわし、ポジションを守った(牧野には6号車に対するドライビングマナー、太田には走路復帰方法に関して、それぞれ黒白旗が提示)。
「周りの人は見ていて面白いんだろうな、と思いながら走っていましたけど(苦笑)」と太田はチームメイトとのバトルを振り返った。
「1回目のやつは結構ストレートも(間隔が)ギリギリだったし、外から見たら“ヒヤヒヤもん”だったと思うんですけど、楽しかったですね。お互いを信用しているからこそ、できるバトルなので。チームメイトだからということで特別意識することはないですが、負けたくない相手ではあるので、そこはある程度自分のバトルでの強さを見せていかなくてはいけません」と太田はきっぱりと語る。
「2回目のシケインのやつは、僕がアウトラップだったので、来るだろうと思っていました。(牧野が)止まりきれない感じだったので、それなら『逃げよう』と。あの判断はすごく良かったと思います。あそこで抜かれていたら、尚貴さんに近づく展開にはできなかったでしょうから」
予選2番手からふたつポジションを下げて終わった開幕戦だが、太田の表情はオフのテストで見せた輝きを失っていない。
「大事なのは、『今年はチャンピオン争いをする』と言ってきたなかで、開幕戦の予選で2ポイントを獲り、決勝でもあれだけバトルしながらも当たらずに4位でゴールした、ということです。それをしっかりやったということが、またひとつ自分の自信にもなりますし、百戦錬磨のチームメイトとあれだけやりあうという部分でもすごく楽しいレースになったし、アウトラップで仁嶺も抜けたし……。悔しいですけど、すごく満足しています」
明朗快活なキャラでいて、立命館大学法学部出身という聡明さも併せ持つ太田。2024シーズン、さらなる“大化け”に期待がかかるひとりと言っていいだろう。
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